茨城県/平塚 保裕
「できることはすべてやる」と経営向上のために意欲的に取り組むのは加藤洋 明さん(55)である。加藤さんはテレビの衛星中継用の大きなパラボラアンテナ で知られる茨城県の十王町で、580頭の黒毛和種肥育経営を行っている。加藤さん の牛舎を訪ねると最初に感じることはきれいなことである。牛舎の周辺にはカラ フルな草花が咲き乱れ、そして臭いがない、またハエがいない、牛が落ち着いて いて、牛舎内が静かであるのには驚く。
【「できることはすべてやる」と意欲的な経営者 加藤洋明さん(55)】 |
加藤さんは、昭和46年から肉牛を飼い始め、乳用種肥育→乳用種哺育から肥育 →交雑種哺育から肥育→黒毛和種肥育と、 途中、 2 度のオイルショックを体験 しながら、飼養品種を変え、規模を拡大し、資本蓄積を図ってきた。 経営の特徴はまず第1に、経営者本人がすばらしいところにある。肉牛経営を 進めていく上で解決しなければならない問題や課題は数多くある。それらの一つ 一つをクリアすることが経営であり、経営者の任務である。その取り組み状況に ついての概略を紹介する。 @コスト低減対策:牛舎施設は学校や工場の廃材等を利用、コスト低減を図る。 また自給飼料としてトウモロコシ、ソルゴーのサイレージ(延べ8ha)を生産し、 育成牛に給与、A飼養管理の省力化:飼料給与は自動給餌装置による、B経営管 理:パソコンを活用して導入から出荷までの個体管理及び費用等の簿記記帳を綿 密に行っている、C衛生対策:素牛導入後の各種予防注射の実施及び3日に1度 の牛舎消毒、D販売成績: 9 年の販売牛は291頭、A 4 、A 5 率86%、枝肉単 価 2,067円、Eふん尿処理対策:処理施設整備による良質たい肥の生産と袋詰め 販売(年間4万袋)、発酵乾燥たい肥を敷料としてリサイクル利用している、F 牛舎環境の美化対策:牛舎周辺に花壇を設け「やすらぎ」のもてる環境作りに努 めている、G後継者対策:長男が大学で畜産を学び、4年前から就農している、 H農家の嫁対策:長男は既に結婚して、妻も経営に参加している、I後継者の育 成:現在 3 名の研修生を受け入れ、後継者育成に貢献、J組織活動:090人の同 志による海外畜産事情視察や定期的研究会、勉強会の実施。 家族のみんなが牛好きである。その全員の熱心な取り組みが、現在の経営を築 き上げてきたともいえる。それはまた経営者の能力、センスなのかもしれない。 加藤さんにあえて、今後やることを尋ねると、「肉の直売か、牧場を持って繁殖 部門を取り入れることかな?」と今後の夢、目標をにこやかに語ってくれた。 「後継者は経営者の背中を見て育つ。」次代の経営者も今、着々と力をつけてい る。次代もまた、頼もしく感じる。
【廃材利用の牛舎と草花を飾ってきれいな通路】 |
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【自動給餌装置の導入で省力化を進める】 |