千葉県/鶴岡 則夫
千葉県関宿町は、県の北西端、利根川と江戸川にはさまれた場所に位置する。 終戦後、内閣総理大臣として終戦処理に当たった鈴木貫太郎が、晩年、生まれ故 郷の関宿町に帰り、青年たちに酪農を推奨したことから酪農が盛んとなった。都 市化の進んだ現在でも30戸の専業酪農家(平均飼養頭数50頭、町内酪農家の約80 %)が、河川敷を利用した粗飼料生産を共同で行い、高い生産性を発揮している。 構成員の年代は30代から60代で半数以上が40代であり、共同の営農機械は、トラ クター12台をはじめアタッチメント等45台を有している。 関宿町草地利用組合連合会は、それまで独自の活動を行っていた二川草地利用 組合(20名)、谷中草地利用組合(21名)、野草地利用グループ(11名)の参加 により昭和52年に発足した。その背景には昭和50年から53年にかけて行われた利 根川と江戸川の河川敷約100haの草地造成があった。草地造成事業を発端に、酪農 家同士の連携の強化、粗飼料生産の省力化、低コスト化のために共同による機械 化一貫体系を目的に町内の酪農家が一体となった。 草種は一貫してイタリアンライグラス中心であるが、連合会発足当初は、ヘイ ベーラ中心の乾草作りに取り組み、昭和55年には補助事業でフォーレージハーベ スターとタワーサイロ等を導入し、牧草のサイレージ化を行ってきた。 さらに、平成4年からは県内でもいち早くロールベールラップサイレージ体系 を導入し、粗飼料生産の低コスト化、省力化を実現している。 ちなみに、ヘイベーラ主体の 1 ha当たり牧草生産時間は3.2時間であったが、 ロールベール方式では1.4時間となり、1.8時間の省力化がなされている。また、 生産費は、乾物1kg当たり約23.3円であり、購入粗飼料55円〜78円に比べ低コス ト化が図られている。 このことにより、参加酪農家は個々の経営における牛の個体管理に目が行き届 き、乳質改善や経営改善に役立っている。(なお、組合内では積極的に草の品種、 施肥、刈取適期等を検討したり、共同作業を行うため、後継者も育ってきており、 地域の連携が強まっている。) 連合会長の鳩貝道夫氏(60)は「河川敷草地は気象条件により生産量や品質に 大きな影響を受けるが、参加酪農家全員の努力で20年以上続けてきた。今後も皆 で連携をもって、省力化、低コスト化をさらに目指し、利根川・江戸川の環境美 化や景観にも配慮し、環境に優しいゆとりのある酪農経営をやっていきたい」と 話してくれた。