◎地域便り


繁殖和牛に生きる元気なお母さん

鳥取県/山崎 和夫


 雄大な自然が広がる県境に立つ蒜山三山の麓、東伯郡関金町の一番奥に位置す
る笹ヶ平。標高670メートル、夏場も冷涼で、冬は牛舎がすっぽりと雪に埋まる。
この開拓地で、和牛の繁殖経営に励む元気なお母さん岡田よしみさんがいる。

 岡田さんの父は、昭和30年、香川県三豊郡の仲間13戸と入植。開拓団として営
農に精を出し、里芋、陸稲、しいたけ等を作り、火山灰土壌の改良のため、3、 
4 頭の和牛を飼養していた。

 しかし、耕地も少なく、不便な立地のため、徐々に離農が進み、今では岡田さ
ん一家だけとなった。

 岡田さんは町へ働きに出るご主人、中学生の息子さん、母の4人家族。娘さん
2人は町営住宅でOL暮らしだ。

 父の跡を継いだ岡田さんは、昭和60年頃から、4頭の繁殖牛飼育を規模拡大し
始めた。公社営畜産基地建設事業で牛舎 22 棟、堆肥舎1棟を建設、今では和牛
繁殖牛34頭、子牛25頭を飼育する、県下で十指に入る繁殖経営を行っている。

 住居に隣接する1haの放牧地では、牛が陽光をさんさんと浴び、のんびりと草
をはんでいる。

 岡田さんは、「良い子牛がたくさん生まれないともうけになりません。健康に
育てて分娩率の向上を図っています。飼料の給与には特に気を使っています」と
語る。 6 〜10月の間は、 6 haある採草地から毎日、軽トラック2台分の青草を
刈り取り、経産牛 1 日 1 頭当たり、青草15.0kg、乾草3.5kg、ふすま1.5kg、配
合飼料2.0kgの割合で給与している。また11月〜5月の間は、乾草3.0kg、稲わら
3.0kg、ふすま1.5〜2.0kg、配合飼料2.0kgの給与を行う。

 事故防止のため、除角を励行し、牛同士のけんかも防いでいる。

 和牛には適期の種付けが大切な作業になることから、平成 7 年 2 月には、県
畜産試験場で 1 ヵ月間の研修を終了し、人工授精師の免許を取得した。

 トラクター2台を所有し、マニアスプレッダー(たい肥を圃場に散布する機械)
をはじめ作業用機械も使いこなす頼もしい元気なお母さんだ。

 牛は自家産の保留を主体にし、年に1頭を目安に優良牛の導入を図っている。
岡田さんは日帰りの研修や視察にも欠かさず出席し、技術、情報は詳細に勉強し
ている。特に系統交配については高度の識見の持主である。販売する和子牛につ
いては、父に鳥取・気高系(高森)、島根・第7糸桜系(糸北鶴)、母の父に島
根・第7糸桜系(糸北鶴)や鳥取・気高系(気高富士)を用いており、増体を重
視している。販売価格はめす・おす平均で35〜36.3万円程度である。

 離農跡地を利用し、低コスト高品質生産に挑む牛飼いの女性に幸あれとエール
を送るものである。


元のページに戻る