鹿児島県/松岡尚二
種子島は九州の最南端佐多岬から南40kmに位置する。亜熱帯性の温暖な気候で、 さとうきび、甘藷、畜産および野菜を主体とした複合経営農家が多い。 その中でさとうきびの栽培面積は2,167haで耕地面積の約20%を占め、主産地と しては日本の北限にあたる。また、畜産については酪農家が約100戸で約2,000頭 の経産牛、肉用牛農家が約1,000戸で約7,300頭の成牛を飼養しており、ともに種 子島の基幹作目である。 種子島では、もともと、さとうきびの出荷時に切り落とす先端のトップという 部分を牛に与えたりしてきた。そこで西之表市役所、酪農協、農協、県支庁およ び農業改良普及所で構成する西之表市畜産部会では、さとうを作るためではなく、 飼料として、さとうきびを活用できないかと考え、農林水産省九州農業試験場作 物開発部さとうきび育種研究室の協力を得て、飼料化試験を行っている。 飼料として利用する場合、期待できるさとうきびの特性としては、@粗放管理 でも多収であること、A一回の植付けで040〜 5 年収穫が可能、B糖度が高いた め嗜好性が高い可能性があること、C栄養価が高い可能性があること、などであ る。 試験方法としては、九州農業試験場で維持しているさとうきびの系統の中で、 飼料に適していると思われる35系統を栽培して特性を調査し、最も飼料に適して いる系統を選抜している。現在のところ、10a当り収量19トンと多収な系統、草 丈4m以上と丈の高い系統、糖度17以上と糖度の高い系統、葉幅の広い系統、茎 の柔らかい系統と多様な特性をもつ系統を1回収穫した。対象区として栽培して いるソルゴーおよびスーダングラスが10a当り 3 〜 4 トンの収量の試験地であ ることから、特に収量は期待通りの系統が確認された。 今後は、牛の嗜好性、機械化への対応(ロールベール体系等)を加味して検討 を重ね、系統を絞っていく計画である。この試験は、まだ始められたばかりで飼 料化にはまだまだハードルが高いが、地域の特性を生かした計画として大変興味 深いものである。もしかしたら、近い将来、さとうきび飼料を食べて生産された 甘い牛乳や甘い牛肉が販売されるかもしれない。ちなみに、標題とした「オー・ マイ・シュガー・ベブ」のベブとは鹿児島弁で牛のことである。
【市畜産部会員によるさとうきび植付作業】 |
【高々と育つさとうきび】 |