◎地域便り


中山間地域で頑張る畜産農家の提言

和歌山県/西本 尚武


 和歌山県の50市町村のうち、 中山間地域として位置づけられている市町村は
33を数える。 これらの市町村では人口の減少と共に高齢化が進み、 水田さえも
耕作放棄地として荒れるに任せ、 極端な例ではひとつの集落そのものが消えよう
としている所もある。 

 しかし、 これらは近畿圏に残された数少ない自然環境に恵まれた地域の一つで
あり、 食糧を供給するという基本的な役割に加え、 多くの歴史・文化遺産や温泉
など地域資源を活用すると共に、 自然とのふれあいの中で生産の喜びを感じられ
る農林業の実現が地域社会の維持発展に寄与するものと期待されている。 

 このような状況下、 関係18市町村が熱い志を持って、 昨年、 中山間地域活性
化畜産振興協議会を設立した。 地域の活性化と21世紀の食糧問題を視野に入れ、 
地域の実情を語り、 問題を掘り起こし、 畜産の新たな事業展開へと発展すべき検
討の場である。 

 活動の第一歩として、 田舎での生活は厳しい反面、 自己の努力により素晴らし
いものに変えていくことが出来るという実証例 (9例) を取り上げ、 畜産農家の
提言として中山間地域で畜産に取り組んでいる方々を紹介する 「わくわく畜産、 
夢のカントリーライフ」 を発刊した。 

 同誌が「Iターン酪農家の先駆者」として紹介している日置川町の二株正さん(4
8歳) は、 玉川大学農学部畜産学科卒業後、 畜産の勉強のためドイツに留学。 帰
国後、 実習と準備を兼ね3年間大阪の養豚場に勤務のあと、 昭和51年28歳で
単身、 現在地に離農跡地を購入し経営を開始した。 

 経営開始直後の生産調整による種々の困難を乗り越え、 現在は搾乳牛43頭、 
育成牛11頭を飼養し、 飼料畑1.4haを栽培している。 また、 平成7年から生
乳のアイスクリーム製造を手がけ、 町内の物産販売所、 宅配などで地域の特産品
として (商品名 エラデーリア) 販売している。 

 今後は、 フリーストール、 パーラーなどを導入、 省力化を図ると共に加工施設
を拡充し、 息子たちへの継続とともに地元の人たちも参加してもらえる体験施設
なども取り入れた事業展開を考えている。 

 二株さんが自分自身の経験から 「新しく入植して畜産をやっていくにはいかに
地域にとけ込むかが一番のポイントです」 と語っているように、 地元区長、 学校
のPTA会長等の役職も兼ねるなど信望も厚く、 中山間地域の発展に活躍している。 

 同誌が、 都会からの U・I・Jターン希望の若年層を含めた新規就農を希望する
方々の参考となれば、 幸いである。 

 問い合わせや配布希望される方は下記にご連絡下さい。 
〒640 和歌山市小松原1丁目
和歌山県農林水産部畜産課 振興班
TEL 0734−32−2924

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