◎地域便り


「初乳バンク」 スタート

岡山県/鼻岡 保博
 岡山県阿哲郡神郷町畜産振興会 (事務局:町産業課内) は、 岡山県阿新農業改
良普及センターの指導のもとに、 平成9年2月から、 町内の酪農家1戸と和牛飼
育農家55戸 (成牛142頭) を会員として、 和牛農家に、 乳牛から搾った初乳
を供給する 「初乳バンク」 のシステムを開始した。 

 これは、 子牛の発育と関係の深い初乳を一定量確実に与えることで、 発育の良
い和牛を作ろうとすることが狙いである。 

 初乳バンクをはじめた背景としては、 町内の和牛飼育農家の中に初乳が少なか
ったり、 初乳が出にくい母牛がいるため、 酪農家から初乳を譲り受けて、 子牛を
育成していた農家がいたことや、 酪農家でも余った初乳の効率的な利用を考えて
いたこと等が動機となっている。 

 一般に、 和牛の初乳は乳牛に比べ極端に量が少ない。 生まれてすぐの子牛に1
時間以内に初乳を充分与えると胎便の排泄が早い、 さらに栄養価が高いので成長
が早い等のメリットがある。 

 この初乳バンクでは、 酪農家が、 分娩後2日以内の初乳を容量500ミリリッ
トルと1リットルのフリーザーパックにつめて冷凍保存し、 JA阿新神郷支所にあ
る専用冷凍庫にストックしている。 分娩の近い和牛農家は、 神郷支所から500
ミリリットルを100円、 1リットルを200円で購入し、 解凍した初乳を産ま
れた子牛全頭に一回、 0. 5〜1. 0リットル与える。 代金は、 一部初乳バン
クの運営費にあてられるが、 大部分は酪農家に還元されている。 

 神郷町をふくむ阿新地域は県内でも和牛の主産地として知られており、  「初乳
バンク」 の利用は好調で、 新見市、 哲多町等近隣の和牛農家からも申し込みがき
ている。 現在までに、 町内の和牛農家の半分に相当する60頭が65リットルを
利用しているが、 初乳バンクを利用した農家では、 初乳を確実に与えたことも分
かるし、 ほ乳瓶で初乳を与えるため、 子牛がなつきやすくなり、 今までに、 下痢
の発生はないといっている。 今後は、 子牛の発育調査等を行い、 初乳バンクの利
用成果を調査することにしている。 初乳バンクの利用により、 発育の良い子牛が
育てば農家の所得向上も図れるため、 初乳バンクの普及は畜産関係者からも、 和
牛飼育の活性化につながると期待されている。 


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