◎地域便り


放牧でらくらく酪農

北海道/田中 義春
 北海道網走管内津別町の酪農家4戸が集まり、 NZ型を手本としながら新たに日
本型の放牧を目指し低コストとゆとりを求めた経営を展開している。 津別放牧酪
農研究グループと名付けて平成7年から活動を始めた。 

 最近の酪農は頭数を多くして、 フリーストールやミルキングパーラーを導入す
るなど規模拡大が行われている。 飼料の給与面においても濃厚飼料多給、 サイレ
ージ中心、TMRの普及など、 酪農のシステム自体が大きく変わってきている。 その
一方、 牛の疾病が増え、 淘汰頭数が多くなり回転率も早まり、 牛の平均産次が低
下するなど大きな問題も生じている。 

 その点、 放牧を取り入れた酪農家は、 牛を放してから牛のストレスが少なくな
り疾病が減少した、 生産面では乳量が予想したほど減少しなかった、 と話してい
る。 また、 経営の中に余裕ができたこともあって、 チーズづくりやホーストレッ
キングなどを楽しむ酪農家もでてきた。 

 平成9年にはNZから牧草の種まきをするシードマチックを北海道元気づくり事
業で導入して、 耕起作業を行わず追播だけですませている。 グループの一人は高
泌乳とTMRによる生産拡大に疲れて、この津別放牧酪農研究グループに参加したが、 
放牧を取り入れていることから従来に比べ時間的余裕が増え 「楽々の酪農」 に変
わったと喜んでいた。 

 ただ、 牛舎周辺に土地を集積すること、 頭数が増えてくると馴致が難しいこと、 
草の季節生産性に対して併給飼料を組み立てなければならないことなど放牧の理
想と現実のギャップが生じてくる。 そのギャップを埋めるため学習会を開催し、 
新しい放牧について真剣に学んでいるところである。 

 今後は農業者の自己責任において、 経営が多様化することが予想され、 放牧も
見直されつつある。  「風土に根ざした酪農」  「低コストとゆとりを満たす」 とし
て、 農業者だけでなく関係者からも注目されている。 


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