◎地域便り


元酪農家グループが黒毛和牛生産へ

埼玉県/片桐 紀生
 埼玉県深谷市内の元酪農家で作っている畜産農家グループ (代表 沢野秀夫会
長) が肥育した黒毛和牛を、 新銘柄の 「深谷牛」 として地元の市民に味わっても
らいたいと試食会を開催した。 11月15日の深谷市産業祭では、 用意した牛肉
120kg、 約1,200人分が2時間で参加した人たちの胃袋に納まり大好評を
得た。 試食した市民は、  「深谷牛とは、 初めて聞いた名前だが、 地元にこんなに
美味しい牛肉があったの」  「これは有名牛肉に負けないくらいおいしい」 という
味の素晴らしさに感嘆の声が聞かれた。 また、  「地元で肥育しているのなら地元
で販売して欲しい」 、  「もっと積極的に新名産品としてPRしたら」 との指摘もあ
った。 

 もともと、 平成4年に市内の肥育業者と開いた勉強会で講師から 「今後は増加
する安価な輸入牛肉に対抗できるのは高級牛肉しかない」 との話に興味を持った
事が契機であった。 興味を持った元酪農家など5名が 「黒毛和牛振興協議会」 を
結成した。 当初は200頭で始まった肥育頭数は現在では700頭まで拡大して
いる。 肥育素牛は東北や中国地方から優秀な血統の素牛を協議会で共同購入して
いる。 肥育した牛は大宮市場に共同で出荷し、 肉質等級も4等級以上が63.1
%を占めている。 また協議会では定期的に会合を開き、 肥育技術や肉質、 肥育効
率の良い飼料を研究し、 その内容を協議会統一の自家配合飼料として給与中。 さ
らに先進地の肉牛農家への技術視察や出荷した肉牛の肉質向上のための相互研修
も実施している。 

 現在は大宮市場のみで、  「深谷牛」 銘柄は流通しているが、 今後は全国ブラン
ド化のためさらに飼育頭数を増加するほか、 市場で銘柄化されても末端の消費者
に届くときには必ずしもその通りではないため、 特定の販売先を確保する、 良い
肉質の生産割合をもっと安定的に向上させるなどを目指している。 また、 将来は
子牛生産農家の高齢化で生産頭数の減少が予想されることから繁殖事業や生産さ
れたたい肥を利用して地域の特産品のネギ等の有機野菜の生産にも取り組みたい
と研究中である。 


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