三重県/吉田 譲
平成10年 2月27日に三重県鈴鹿市で「堆肥生産利用促進シンポジウム」(三重 県主催)と「畜産新技術研修会(堆肥の成型技術の開発)」(三重県畜産会主催) が開催された。参加者は養豚、養鶏農家を中心に畜産農家33名、県、市町村、農 協関係者45名、その他 6名の計84名で、主催者は、農家の堆肥問題に対する関心 の深さを改めて認識した。 シンポジウムの題目は「畜産堆肥流通の今後の方向」で、東京農業大学松崎敏 英客員教授が堆肥を流通させる場合の問題点、その解決方法等について講演した。 その中で、堆肥を完全に発酵させることが重要でそうでない場合は製品としての 価値がないとされるため、最も大切なことは各種堆肥の腐熟度の判定であること を強調した。午後からは三重県農業技術センター生産環境部の原正之技師が「家 畜ふん堆肥の成型技術の開発について」を講演した。原技師は堆肥の広域流通に 関する諸条件を検討し、堆肥流通のポイントは堆肥品質の明確化、堆肥容積の減 少化、機械散布性の向上が必須であるとした。また、堆肥の成型技術の開発に着 目し、その実例を紹介した。 この後、堆肥成型技術実証試験を実施している鈴鹿市石薬師町の(有)クマザ ワタマゴ(代表熊沢毅氏)で新たに開発されたディスク型堆肥成型機械の運転状 況を現地見学した。このディスク型はローラリングダイ方式で、原技師の指導で 改良されたものである。直径数ミリの穴が多数あけられたディスクとローラーの 間に供給された堆肥がローラーの回転に伴ってディスクの穴に圧送され、成型さ れる構造となっている。ディスク型は目詰まりが起こりにくく、比較的低水分の 堆肥原料の成型に適しているものであり、摩耗部分の交換作業が容易である利点 を持っている。 畜産農家からは、経営の安定には環境対策は欠かせない条件であるため緊急に 堆肥の流通体制の整備を望む声が多かった。そのためには、研修会で発表のあっ たことについて、畜産農家、農協等、行政の3者がそれぞれしなければならないこ とを明確にして、一致して解決を図っていくことが認識された。元のページに戻る