◎地域便り


富士ヶ嶺酪農を支える若者たち

山梨県/倉島 脩二


 上九一色村富士ヶ嶺は、山梨県の南東部、富士山の西麓に位置し標高1000〜12
00m、平均気温9.5℃の高冷地である。年間降水量は2500mmと非常に多い。

 このような自然環境から草地を利用した酪農と肉用牛経営が盛んである。現在、
酪農家戸数は48戸で約3,000頭の乳牛が飼養されており、本県最大の酪農団地であ
る。

 地区内には、20〜30歳代を中心とした若手酪農家で組織されているYDC(山梨デ
ーリークラブ・青柳克己会長)がある。このクラブは、酪農家15人、これに地元
の富士豊茂農協の人工授精師や酪農ヘルパーの技術職員 3 名( 1 名は女性)が
加わり18人で構成されている。主な事業活動としては、毎月2回開かれている定
例会議では、乳牛の改良、飼料の生産と給与設計、衛生対策と疾病予防、ふん尿
処理と環境保全及びパソコン研修等が行われている。

 特に、農閑期には会員がそろって個々の会員の生産現場を巡回( 1 日 3 戸の
割合)し、その日の夜、意見交換会を開くことにしている。日中直接見聞し、実
感したことがテーマになるため、その内容は中味が濃く切磋琢磨する上でたいへ
ん有意義な会合になっている。

 また、恒例になっている富士ヶ嶺地区の乳牛共進会は、この若手酪農家が中心
となって、手塩にかけた牛を出品し改良意欲の高揚を図っている。地区レベルの
共進会としては、出品牛の頭数が多く、体型・資質に優れた力強い牛がそろって
いるとの高い評価を得ている。

 このほか、このクラブの会員の受精卵移植の実施率は80%、牛群検定事業では
87%と、日常的な生産性向上への努力にも怠りがない。

 世間を騒がせたオウムの村も、拠点施設は完全撤去され再び平和なむらによみ
がえっている。

 社会経済情勢が混迷している中、富士ヶ嶺の若手酪農家は、先人から受け継い
だ開拓魂と自ら培った先進的生産経営技術によって酪農の理想郷づくりに挑戦し
ている昨今である。

【若手酪農家が盛り上げる富士ヶ嶺地区共進会】

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