◎調査・報告


生乳の需給調整対策について

社団法人 中央酪農会議




生産者の需給調整を重視する新たな酪農・乳業対策

 国は、食料・農業・農村基本問題調査会の答申を受けて農政改革大綱と農政改
革プログラムを設定し、新しい食料・農業・農村を国会に提出し審議に入った。

 農政改革大綱を受けて、作物別には牛乳・乳製品がトップバッターとして、本
年3月末「新たな酪農・乳業対策大綱」が制定された。今後の酪農・乳業対策は、
この大綱の示す方向に沿って変革を迎えようとしている。

 大綱には多くの重要な事項が記述されているが、その中心をなすのが、加工原
料乳の不足払い法(加工原料乳生産者補給金等暫定措置法)の見直しである。不
足払い法の見直しに当たっての最大のポイントは、加工原料乳や乳製品に市場原
理の導入を図る、より市場実勢を反映した自由な取引にゆだねるというものであ
る。乳製品に関しては、安定指標価格を廃止し、価格が大幅に下がった場合の農
畜産業振興事業団買入制度を廃止する。また、加工原料乳としてメーカーが買い
入れる基準取引価格を廃止し、自由な取引に移行することとなる。すなわち価格
支持制度の廃止である。ちなみに当措置によって乳製品・加工原料乳にかかるA
MS(国内助成)の削減は1,100億円程度と言われている。

 それでは、これまで保護と財政に守られた牛乳・乳製品業界が完全な自由競争
に移行することとなるのだろうか。答えは否である。

 わが国の酪農・乳業は完全な自由経済に移行するにはあまりにも土地条件等の
格差が大きすぎる。また生乳は、搾乳後、速やかに処理しないと腐敗してしまう
という商品特性を有し、世界各国ともに完全な自由取引制度を採用している国は
ない。

 このため、「新たな酪農・乳業対策大綱」に示された加工原料乳の自由な取引
への移行に際しても次のような条件が付けられている。

@外国産乳製品については、引き続き、所要の国境措置(高い関税相当量)を講
 じる。(ただし、乳製品が不足する場合は農畜産業振興事業団が輸入する)

A自由な取引に移行した場合の加工原料乳価格は、加工原料乳地帯の再生産を確
 保できる水準にはならないとみられることから、国は経営安定措置として、加
 工原料乳に対して必要な金額を、メーカー取引価格に上乗せして支払う。

B現行の指定団体制度の持つ一元集荷多元販売機能の維持、並びにこれを強化す
 るための指定団体の広域化の推進を図る。

C価格が短期かつ大幅に低下した場合には、調整保管の実施に助成する。

 等といった措置に加えて特に強調されているのは、生乳の需給や価格が乱高下
しないための生産者団体による計画生産等による需給調整である。

 大綱には次のように記述されている。
(2)酪農経営の安定の確保

@計画生産等による需給調整

 生乳の需給及び価格の安定を図るため、生産者団体の自主的な取組みにより、
需要に見合った生産を確保し、用途別の供給を適切に実施するための計画生産を
一層効果的に実施するとともに、指定生乳生産者団体の広域化を踏まえ、その需
給調整機能を強化する観点から、全国レベルでの需給調整システムの確立や各ブ
ロック内での需給調整体制の整備等を推進する。
 今後、生乳や乳製品の需給調整は、国や農畜産業振興事業団による直接関与方
式から制度的にも生産者団体の自主的対応にゆだねられる部分が増大する。生産
者団体の自己責任がますます増大することとなる。仮に万一、大綱に記述された
計画生産等の需給調整に失敗するとなれば、酪農界のみならず乳業界も大きな混
乱に巻き込まれかねない。

 確かにこの2年間の計画生産は目標に対していずれも未達であった。もはや、
計画生産というタガをはずして自由に生産した方がいいのではないかと言った意
見がないわけではない。

 しかし、加工原料乳や乳製品がより自由な取引に移行するに際して、単に価格
の持つシグナル、価格が高くなれば増産、安くなれば減産という需給調整機能の
みにゆだね、これのみによって需給をコントロールするにはあまりにもコストが
かかりすぎる。もともと家畜、とりわけ牛は、生乳価格が高いからといってすぐ
さま増産できるものでもない。逆に多大な設備投資をしていながら大幅減産とい
うことにもなれば、高価な施設を遊休化させることにもなり、国民的損失も大き
い。

 平成13年度以降は、不足払い法制定以降、加工原料乳では経験したことのない
自由な取引へ移行することとなる。したがって、計画生産はもとより、用途別の
計画出荷、指定団体の広域化を踏まえたブロック内での需給調整体制の整備や全
国レベルでの需給調整システムの確立といった広範な需給調整対策がますます重
要になってくる。

 このような基本的考え方の下で、まだ完全というにはほど遠いが、計画生産、
用途別計画出荷、加えてとも補償等について見直すべきものを見直し、拡充強化
すべきものは強化する観点で生乳の需給調整対策を実施しているところである。


弾力的対応を実地してきた計画生産

 生乳の計画生産は昭和54年度から実施されている。生乳の需給調整は、加工原
料乳の不足払い法によって加工原料乳の再生産を維持する保証価格と、保証の対
象となる限度数量のいずれも適正な決定をベースに、国産乳製品が過剰になれば
農畜産業振興事業団による買い上げ等により市場から隔離し、不足の場合は指定
乳製品等の輸入、放出によって実施するのが基本である。

 しかし、50年代の前半、乳製品在庫がバター5.7ヵ月、脱粉9.7ヵ月になるなど、
既存制度の運用のみでは財政的にも政治的にも円滑な需給調整が困難となった。

 そこで、国の指導も受け、全国の生乳生産者の自主的な取り組みとして、生乳
の計画的な生産が開始された。

 生産者の自主的計画生産に移行した以降は以前に比べて乳製品の価格変動が少
なく、価格低落に際しての農畜産業振興事業団の直接介入は皆無となった。これ
が、今回の農畜産業振興事業団による国内乳製品の買入制度を廃止する大きな根
拠ともなっている。

 計画生産の基本は、生乳の過剰を避けつつ、国内で供給可能な生乳は極力生産
し、一方で、国の直接的な施策の対象外となっている飲用乳価の安定を図ること
にある。

 こうした観点から、その時々の需給に対応し、関係者が議論に議論を重ね、様
々な手法の導入、変更が弾力的に行われてきた。

 この20年間を振り返ると(図1参照)、単年度で見て需給が過剰になった年が
5回、不足が15回、総不足数量は166万トン(輸入を義務づけられたカレントア
クセス分を除く)で、この間の全生乳需要量の1.1%である。おおむね需要に見
合った計画生産を実施してきたと言える。

◇図1:牛乳・乳製品の需給の推移(生乳換算)◇

 この間、かなり強い生産調整を実施したのは、昭和54年度、61年度、平成5年
度で、7年ごとに調整を余儀なくされてきた。

 この間の特徴を考えると、第1に需要が伸び、生産も20年間に208万トン(32%)
増えて10年度は、855万トンとなった。

 第2の特徴は、需要拡大のために生産者は弾力的な対応を実施したことである。
54年度から始まった計画生産を第1期、61年度からを第2期、平成5年度からを第
3期とすると、第1期は、生産の伸びを抑え気味に調整している中で、需要が追
いつき、追い越し、過剰が解消された。第2、第3期は、新たな国内需要を喚起す
ることによって過剰が解消された。第2期はチーズ向け生乳取引の開始と生乳の
乳脂肪分の取引基準を3.5%に引き上げたこと、第3期は生クリーム等向け生乳取
引を開始したことによって、いずれも生乳需要は飛躍的に伸びた。これらの新た
な需要喚起策は、生産者、メーカー、国が一体となって取り組んだ柔軟な対応に
より初めて可能となった。しかし、生産者にとっては、乳製品向け生乳取引の拡
大は、手取り乳代の低下につながり、結果として、供給にブレーキをかける要因
ともなった。

 第3の特徴は、4年度を境に生産が停滞傾向が出てきたことである。8年度こ
そ史上最高の生乳生産となったが、9年度は前年度対比0.3%減、10年度は0.9%
減の生産で計画生産目標を2%(19万トン)下回るなど、構造的とも言える生産
停滞が懸念される。

 第4の特徴は、最近の計画生産は、天候や景気の動向といった外的要因に翻弄
されているということである。5年度は未曽有の冷夏、翌年は一転した猛暑、8
年度は一転した円安により輸入調製品等に流れていた需要の一部が国産品に戻り、
9年度以降は景気の大幅悪化に伴う需要の停滞、とりわけ、10年度はバターの1
割近い需要減等、1期、2期に見られた比較的単純な右肩上がりの伸びとは異なる
動きを示している。それだけ、先行き不透明な中で、計画生産の困難性が増大し
ている。

 第5の特徴は、計画生産、需給調整が、単なる総量調整から、次第に用途別計
画出荷やとも補償を取り入れるなど複雑化し、これが一部に分かりづらい計画生
産という印象を強めていることである。


計画未達に終わった10年度の計画生産

増産型の目標を設定

 10年度の計画生産は、学識経験者等で構成する生乳需給委員会(委員長、川野
重任東京大学名誉教授)から答申を頂いた需要予測量844万9千トンを基本に、9
年度に実施された乳製品の追加輸入を避けることを目標に、9年度の実績対比で
1.7%増(チーズ向けを除き、カレントアクセス数量を差し引き、これに指定団体
に参加しているインサイダー率を乗じた数量で795万1千トン)という、9年度に
引き続く増産型の目標を設定した。

 10年度は、9年度の計画生産が未達となったことを踏まえて、極力地域の潜在生
産力を揺り起こすことを目的に、一率的な配分(全国では9年度の最終的な基礎目
標数量789万3千トン)に加えてできるだけ生産可能な地域の希望に応じて以下の
通り追加配分を実施した。

@用途を乳製品に限り、申請により無償で配分するもの(5万8千トン)。

A新規就農枠として無償で配分するもの(1万トン、1戸当たり300トンを限度)。

B9年度末の県別の計画生産が未達となって中央酪農会議に回収された数量6万
 8千トンを有償(飲用向けを含むもの10円/kg・乳製品向けのもの50銭/kg)
 で配分するもの。

C個人別枠の流動化により県間を越えて売買が成立した量はそれぞれの県ごとに
 増減。

 なお、前年度に計画生産量にまでとどかなかった県は、1%を超える数量を生
乳生産枠から差し引いているので、10年度の県別の計画生産数量は前年度の目標
に対して、5%程度の減少から、3%程度の増加までに分散した。


生産量は0.9%の減少

 こうした弾力的な対応を実施したものの、10年度の生産は、9年度の0.3%減に
引き続き、0.9%の減少となった。ちなみに北海道は1.6%増加し、都府県は2.7%
減と減少幅を拡大した。

 8年度をピークに生産が低迷している要因は、以下の通りである。

@乳用牛飼養戸数が5.3%減少し3万5千400戸(11年2月)と減少傾向が続いている
 こと。

A飼養頭数が2.4%減少していること(11年2月)。なお、今後搾乳牛となる未経
 産牛は3.8%減と引き続き減少している。これは、和牛とホルスタインとのF1生
 産の増大も大きな要因となっている。また、従来、飼養戸数の減少を飼養規模
 の拡大で概ね補ってきたが、中央酪農会議の調査によると、大規模層はむしろ
 規模を縮小する傾向にあるなど、規模拡大にも限界が出始めている。

B1頭当たり乳量の伸びが鈍化していること。8年度までは頭数の減少を1頭当た
 り乳量の増加で補ってきたが、これが次第に限界にきている。10年度の1頭当
 たり乳量の伸びを全国の経産牛頭数から推定すると9年度並みの0.5%増程度に
 とどまったとみられる。

Cこれらの要因に加えて、畜産環境問題の顕在化、後継者不足、乳価の低迷等か
 ら増産意欲に陰りがみられる。

 これらのことから、10年度の計画生産数量は、目標を19万トン下回る776万ト
ンにとどまった。


生乳の需要量は1.4%の減少

 需要量を見ると、乳価が比較的高く、優先的に配乳される飲用牛乳等向け処理
量(=需要量)は、年度計で1.9%減の502万トンと引き続き前年度水準を下回っ
た。この要因としては、長引く景気低迷に伴う消費の冷え込み、東日本を中心と
した夏期の長雨等の天候不順、500mlペットボトル飲料やニアウォーターに代表

される飲料の多様化、人口の少子高齢化、牛乳消費の成熟化等が挙げられる。
 飲用牛乳等向け処理量の内訳を見ると、その8割を占める牛乳(生乳を100%使
用しているもの)の落ち込みが依然続いている(2.7%減)。9年度に大きく伸び
た乳飲料(脱脂粉乳等の乳製品を主原料としたもの)も伸びが鈍化した(2.0%
増)。

 この結果、生乳生産量から飲用牛乳等向けと、自家消費向けを差し引いた乳製
品向けに供給された生乳は0.7%増の342万トンとなった。

 乳製品の需要量を見ると、生乳の生クリーム等仕向けは大きく伸びたものの、
チーズ向けは概ね前年度並みとなった。加工乳の消費は減少し、製菓、製パン等
向けへの乳製品は景気低迷等により減退、とりわけバター消費量が7.6%減と大
きく減退した。以上のことから生乳換算では357万トンと9年度を0.6%下回った
とみられる。

 この結果、カレントアクセス分に追加した輸入は行われなかった。主要な乳製
品の10年度末の在庫は、脱脂粉乳は期首に比べて0.3ヵ月減の2.5ヵ月となったが、
バターは0.8ヵ月増の4.3ヵ月とかなりの積み増しとなった。

 以上の通り10年度の生乳の需給は、需要が減少し(1.4%減)、とりわけバター
在庫の急増が懸念材料となってはいるが、生産も減少(0.9%減)したため、9年
度に続き、縮小均衡型で終了したと言える。


とも補償制度の継続

 マクロの生乳需給はおおむね均衡しつつも用途別には飲用等向け生乳需要が減
少し、他方で乳製品向けは比較的堅調に推移しており、飲用乳価の安定を図りつ
つ、需要に見合った乳製品の生産を円滑に実施するための何らかのシステムが必
要となってきた。

 そこでまず平成9年度から、飲用向け生乳の流通の正常化を主眼としたとも補
償制度を開始した。これはさまざまな事情で販売できなくなった生乳について、
全ての生産者が1kg当たり20銭(飲用向けに限定)を拠出し、この拠出金によって
一定価格(10年度はおおむね保証価格)までを補償する仕組みである。この制度
の実施に当たっては、農畜産業振興事業団から一定の助成を受けているところで
ある。

 10年度にとも補償の対象となった生乳は約2万8千トンで、補償総額は4億4千万
円程度にとどまった。


県別の用途別計画生産の実施

 10年度から、需要の減少の見込まれる飲用向け生乳価格の安定と、需要の増加
の見込まれる乳製品生産を円滑に実施することを目的に、新たに県別の用途別計

画生産(出荷)を開始した。
 具体的には県ごとに飲用枠と乳製品枠をそれぞれ設定し、飲用枠を1%以上上
回って飲用向けに出荷した県は、その数量に10円/kgを乗じて得た金額を調整金
として拠出し、飲用向け目標に到達できなかった県に調整金をとも補償的性格の
金額として配分しようとするものである。

 10年度の飲用向けの全国の生乳販売量は当初見込みよりかなり下回ったことか
ら、飲用枠を1%以上超えた県は8県にとどまり、1%以上下回った県は29県となっ
た。調整金の総額は2億5千万円で、これを未達となった各県にその程度に応じて
配分することとなる。なお、調整金を支払った県はその1/2の数量を翌年度の飲
用枠に繰り入れ、反対に調整金を受け取った県はその1/2の数量を飲用枠から差
し引くこととしている。

 この措置は、10年度から実施された加工処理の平準化(不足払い法の政令が改
正され、同一メーカーの工場が同一ブロック内に2以上ある場合に特定乳製品に
回った割合(加工率)は、工場ごとでなく、メーカーの平均とするよう改正され
た)によって加工率がかなり大きく変動したが(したがって手取り乳代も変動し
た)これに対する激変緩和的機能を有する。

 また、この措置を通じて、例えば、加工コストの高い所(飲用地帯)は、安い
所(加工地帯)に調整金を支払い、加工の増加を依頼することになり、加工コス
トの安い所は調整金を加えると事実上保証価格よりも高い加工原料乳価を得るこ
とができる。逆に、加工コストの高い所で2〜3倍のコストをかけて加工処理をす
ることもなく(コストのみならず当地域の乳製品は一般に流通しているものより
かなり安価でないと取引が成立しない)飲用に重点を置いた販売ができる。当初
想定していた経済的調整ルールへと一歩踏み出すことができたと言えよう。

 以上の需給調整対策もあって、これまで毎年度低下していた農家手取り乳価
(農村物価賃金調査)もわずかに9年度を上回ることができた。

 なお、新規就農枠として配分したのは4県23戸、6千400トンであった。


引き続き増産型の11年度の計画生産

酪農家が意欲のもてる計画生産

 11年度の計画生産は、13年度からの不足払い法の見直しにより今後ますます生
産者団体の自主的な需給調整対策が重要になることを念頭に置いて実施する必要
がある。一方で、10年度の計画生産が19万トンもの未達となり、生産能力の地域
別格差が広がるなかで抑制的な計画生産を行えば、生産が減退している地域はも
とより、生産が増加している地域でも酪農家の生産意欲を失いかねない。このた
め、全体の需給に悪影響を及ぼさないよう配慮しつつ、酪農家が意欲を持てる計
画生産を実施することを基本とした。また、加工とも補償、用途別計画生産等の
需給調整対策については、平成9年度、10年度に新設または大幅見直しを実施し
たが、本年度はこれら制度の定着を期するために若干の見直し、拡充にとどめた。


10年度実績対比で0.6%増の計画生産

 11年度の計画生産の実施に当たっては、まず従来と同様に生乳需要量の予測を
需給委員会にお願いした。当委員会の需要予測は、飲用牛乳等向け需要は、11年
度も牛乳消費の減少が続くとみられること、乳製品向け需要は、脱脂粉乳はほぼ
10年並み、バターは10年のような急減はないものの弱含み、生クリーム等向けは
安定的な伸びが見込まれ、乳製品向け全体としてはわずかに増加するというもの
である。生乳需要量合計(計画生産の外枠であるチーズ向けを除く)は0.2%程度
10年度水準を下回ると見込まれた(表1)。

 これに対して、11年度の計画生産目標は、バター在庫の急増という懸念材料は
あるものの脱脂粉乳の追加輸入を避けることを考慮し、需要予測量からミニマム
アクセス輸入数量を差し引き、更にインサイダー率を乗じて計算すると、10年度
の最終目標数量795万4千トンに対して14万5千トン少ない780万9千トンとなった。
しかし、当目標数値は前述のとおり、平成10年度が大幅な計画未達となっている
ことから平成10年度の実績対比では0.6%増のやや増産型の計画生産となるもので
ある。

表 1  生乳の需要予測数量
cho-t01.gif (5020 バイト)
 注:表中の数値はカレントアクセス分を含む。
   11年度は閏年による補正分を含む。


県別配分

 全国の目標数量を県別に一律配分と追加配分とに分けて、原則として、5月末
までに配分することにした。

 一律配分は平成10年度の最終的な基礎目標数量と同量を配分することとし、全
国の合計量は776万6千トン。

 追加配分は、生産可能な地域の希望に応じてできるだけ配分することを基本に、

@用途を乳製品に限り申請により配分するもの(3万3千トン程度)。ただし、翌
 年度の目標数量にはカウントしない。

A新規参入枠として無償で1万トン(1戸当たり300トンを限度、ただし本年度か
 ら法人は1千トンを限度)

B新たに、需要に見合った生乳供給を確保するため、生産振興調整枠数量として、
 用途を乳製品に限って4万トン。これは中央酪農会議が超過見込み指定団体に
 有償(50銭/kg)で年度当初に配分し、年度途中で未達見込み指定団体が出た
 場合は4万トンを限度に有償(同上)で買い上げる。

C個人別枠の流動化により県間を越えて売買が成立した量はそれぞれの県ごとに
 増減。
 以上の結果、11年度も県別にはかなりの傾斜配分となるとみられる。


用途別計画生産ととも補償の継続実施

 用途別計画生産は、基本的に継続実施するが、今年度は県別の飲用枠を超えて
調整金を支払う基準を0.5%から1%へと拡大した。また、飲用枠については生産
量の低下に伴って飲用向け生乳販売が減少している県については、必要な見直し
を実施した。また、飲用枠を超えた場合の例外として、需要期にブロックで生乳
不足が生じた場合に供給した生乳は飲用枠の外数とする等の規定を取り入れた。

 とも補償についても原則継続実施であるが、(社)中央酪農会議の独自事業と
して、販売不可能乳のとも補償の補てん水準を引き上げ(90%から95%)、乳業
者の廃業等による予期せぬ販売不可能乳に対する特別措置(従来の受取り乳代の
減少分の90%補てん、ただし、発生してから60日以内)を新たに実施することと
した。

 その他に、ブロック指定団体の設立を視野に入れ、ブロックを前提とした計画
生産を実施することが合意された場合は、ブロックごとの配分、超過、未達の管
理等をブロックにゆだねることとし、関東、九州ブロックはおおむねこの方向で
取り決めが進んでいる。


新しい需給調整システムを目指して

 わが国酪農は、「新たな酪農・乳業対策大綱」を受けて大きな変革期を迎えよ
うとしている。
 生産の合理化、効率化と合わせて、需給の安定、流通の効率化を図っていくこ
とが極めて重要となっている。このため、計画生産の円滑な実施はもとより、指
定団体の早急なブロック化と、これを踏まえてブロック内、ブロック間の効率的
な需給調整を実施できる体制づくりが急がれる。

 現在の自主的な計画生産なり、とも補償、用途別計画出荷等の調整ルールは、
緒についたばかりで理想とする姿にはほど遠いと言わざるを得ない。市場原理の
支配する社会の中で、生乳については他のいずれの酪農先進国も何らかの調整ル
ールを持っている。政府等が各種の業界調整から次第に手を引かざるを得ない状
況下で、生産者は短期的な利害に目を奪われることなく効率性を追求しながら、
何が持続的、安定的な酪農・乳業の発展にとって大切か、関係者の英知と理解を
集めて日本型の需給調整システムを構築していく必要があると考える。

 社団法人中央酪農会議(中酪)は、昭和37年8月、農林省事務次官通達に基づ
き酪農関係の全国機関によって設立され、その後、昭和41年の加工原料乳生産者
補給給付金等暫定措置法(不足払い法)の発足に伴い同法に基づき設立された各
都道府県の指定生乳生産者団体(指定団体)と酪農関係の全国機関(全中、全農、
全酪連、全開連、農林中金、全共連)とにより構成されている酪農指導団体(民
法第34条による公益法人)であり、定款はその目的を次の通り定めている。
「この法人は、生乳生産者の協同組織による生乳受託販売の推進並びに生乳の供
給の安定及び流通の合理化を図り、我が国酪農の健全な発展に寄与することを目
的とする。」

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