山梨県/牛山 市左門
上九一色村富士ケ嶺は、山梨県の南部に位置し、標高985〜1,254m。霊峰富士 を仰ぐこの1,600haの高原で、51戸の酪農家が2,192頭の乳牛を飼養する(平成9年) 県内随一の酪農畜産団地である。戦後、開拓され入植が行われたため、個人所有 の土地面積が広いのが特徴となっており、雄大な自然を生かした近代的な経営が 行われている。 山口宗正さん(51)も、戦後、食料増産の目的で入植した開拓団員の後継者で、 現在25haの広大な牧草地を活用し、169頭の乳用牛を飼育している。県内では最 大規模を誇るトップクラスの酪農家である。 昭和42年の学校卒業と同時に家業の酪農(乳牛10頭)と蔬菜業(大根10ha)に 従事したが、その後大根の連作障害から蔬菜を止め、酪農一本にしぼって、乳牛 の増頭を図ってきた。その間、常に先進的な酪農技術の習得に積極的に取り組ん できている。 52年には、パイプラインミルカーを備えた牛舎とサイロやふん尿スラリータン クを設置し、平成元年には県内で初めて100頭規模のフリーストール牛舎を建設 するなど、近代的な飼養管理システムを導入し、省力化を図った。 環境整備の観点からは、52年には既に、家畜ふん尿処理にも十分に考慮し、施 設内で、完熟堆肥を「マウント」銘柄で販売し始めた。 飼料基盤については、58年に富士西麓地域畜産基地建設事業により基盤整備を して強化を図り、62年には、粗飼料はサイレージによる通年給与とコンプリート フィードによる給与方法を取り入れ、適正給与と飼料費の節減を図っている。 改良面でも、57年に始まった乳牛の検定事業に当初から参加し、そのデータを 基に選抜淘汰を徹底して高能力牛の飼育に努めている。 このように、山口さんは、常に先進的な酪農技術の吸収に取り組み、コスト意 識を念頭に置いた収益性の高い経営に取り組んでいる。また、酪農家として地域 や県内に貢献した功績も大きく、研究グループのリーダーとして数多くの褒賞を 受けている。今後も、地域農業発展の先導者として、期待は大きい。
【富士を仰ぐ高原で何を思う。草をはむ】 |