◎地域便り


酪農家に定着したパソコンによる経営管理

鳥取県/井崎 敏彦


 畜産農家の経営管理は、経営規模の拡大とともにますます必要性が高まってき
ている。しかし、複式簿記は難しい、記帳する時間がない、パソコンは難しい等
の理由により、普及していないのが現状である。

 その中にあって、東伯農業改良普及センターでは、平成6年から東伯町の酪農
家を対象に、パソコンによる複式簿記記帳に取り組んできた。その結果町内の酪
農家62戸のうち23戸がパソコン簿記に取り組んでいる。また、その中には認定農
業者16名も含まれている。

 東伯町は、酪農家戸数が鳥取県内で最も多い市町村である。また、乳牛の改良
も積極的に行われ、10年度の経産牛1頭当たりの年間泌乳量は8,300kgを超え、非
常に優秀である。

 普及のきっかけは、6年の6月に帳簿式で複式簿記に取り組んできた5人の婦
人グループから、「是非パソコン簿記に取り組みたい。」との要望が普及センタ
ーに寄せられたことである。

 このため、鳥取県の普及員が開発した農業簿記ソフト(ABOT)によりパソコ
ン簿記に取り組むことになった。
7年にはパソコン簿記記帳者は18名となり、現在では23名が取り組んでいる。

 ABOTの特徴は操作が比較的簡単で、手書き式の複式簿記と課目が一緒であり、
パソコン初心者にもなじみやすいことである。

 始めは慣れないパソコンのキーの操作に戸惑う農家も多かったものの、回を重
ねるに従って操作にも慣れ、スムーズに入力ができるようになった。また、パソ
コンの購入も進み、現在では簿記記帳者全員がパソコンを所有している。

 記帳が終われば、簿記記帳データを元に、普及センターが中心となって、各農
家別生乳1kg当たりの生産費等を算出することで酪農の経営分析、改善を行って
いる。

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