福井県/藤井 振
平成 6 年から若狭牛(福井県の銘柄黒毛和牛)の受精卵移植に取り組み、「今 は笑いが止まらない」と話すのは、福井市の錠詰謙三さん(56)である。乳牛50 頭を飼養し、水田1.5haと飼料畑5.5haを栽培する複合経営である。現在、受精卵 移植による子牛は16頭いる。 福井県の受精卵移植事業は、県営嶺南牧場で採卵した黒毛和種の受精卵を、家 畜保健衛生所が無料で酪農家の乳用牛に移植している。 3年度から本格的に実施しており、その成績は下表のとおりである。 8年度には受胎率が低下し、錠詰さんも受精卵移植はしたくないと弱気になっ たが、家畜保健衛生所の担当者と話し合い、飼料給与や受卵牛の観察を基本から 見直し、計画的に取り組むことにした。具体的な改善点としては、農家の飼養管 理については、濃厚飼料の自家配合を市販飼料一本と単純にして、サイレージや ロール乾草等の粗飼料給与に手をかけるように改めた。また、受卵牛の観察に超 音波測定装置を用いて、農家と家畜保健衛生所の担当者が、一緒にモニターの映 像をを見て、納得した上で移植を行うようにした。さらに移植日の時間はお互い に絶対守ることなどを取り決め、実施した。 その結果 9 年度は、20頭に移植し、14頭が受胎した。錠詰さんは昔から子牛を 育てるのが上手で生まれた子牛は 1 頭も事故がないことで有名である。 10年度も順調受胎している。この影には奥さんの絶大な協力と家族の理解があ ることは言うまでもない。 表 受精卵の移植成績 注:県内の酪農家約20戸が参加しており、そのうち経営の一部に取り入れて頑 張っている農家は 5 戸である。