◎地域便り


ログハウス牛舎でコブシの花見     

山口県/清水 誠


 「春になったら、ファックスしますからね。」と顔を合わせるたびに誘ってく
れるのは、山口県防府市の山本さん(50)。現在黒毛和種の繁殖用雌牛約15頭を
飼育している肉用牛農家であると紹介したいところだが、「私は林業家です。」
と本人が名乗るように、山本さんは約10haの山林に植林を行っている県内でもト
ップクラスの林業家である。若い頃は公務員という堅い職についており、サラリ
ーマンとして生活していた時期もあったが、先祖が残してくれた山と110aの水田
を捨てきれず、米と林業の道を選んだということである。

 林業で最も大変な作業の一つが、夏の下草刈りだが、この作業を何とか省力化
出来ないものかと思考錯誤した結果が、牛の林間放牧であった。また、山本さん
は、牛たちの休息場所として、ログハウス牛舎を建設した。山本さんが牛舎を建
てたのはこれで 3 棟目で、2つ目までは自宅の近くに建設している。林業で山に
道を作ったり、木を運搬する関係で、パワーシャベルの扱いにも慣れているため、
牛舎敷地の造成、間伐材の運搬まで、全て一人で作業したとのことである。

 写真のログハウス牛舎は自宅からかなり離れた、山の中腹にある。よくこんな
傾斜地にと思うところに、うまく造成し牛舎を建てている。「ここの造成から石
組み、建築まで私一人で行いました。ごらんのように、屋根があり、飼槽がある
だけです。私はここを牛たちの点呼の場所と考えています。山仕事の休息場所で
もあります。春、コブシの花が咲く頃には知人がたくさん集まり、ここで宴会を
するのが毎年の恒例行事となってきました。」とのことである。

 林業の立場で、植林地に牛を放牧したり、コブシなど花の咲く木を残すのは邪
道とされているとのことだが、山本さんはあえて、好きな木を残し、一番眺めの
よい場所にログハウス牛舎を建てた。繁殖成績の落ちてきた牛も、この植林地で
自由に生活すると、再び好成績を出すこともあるという。「繁殖牛は山を生き返
らせてくれる良き仲間です。牛たちと築き上げてきた美しい山を多くの人に見て
もらいたいですね。将来、道の駅ならぬ山の駅と呼ばれる施設にするのが私の夢
です。」と熱っぽく語ってくれた。

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【すべて手作りのログハウス牛舎】

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【牛舎内。シンプルで丈夫な作り】

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