◎専門調査レポート


大胆で細心な経営 −肉牛、そして酪農へ−

日本大学商学部 教授 梅沢 昌太郎




多様な事業

 JET(Japan Ebetu Tochigi…ジェイ・イー・ティ)ファームは、北海道江別市に
本社を置く農業生産法人有限会社である。昭和54年8月に有限会社江別肉牛ファ
ームとして設立され、乳用種去勢牛300頭の飼育を開始し、さらに、62年には栃
木牧場を開設し、乳用種去勢牛2,000頭の肥育を開始し、また北海道の別海町に
中標津育成センターを開設している。

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 そして、63年に江別牧場で搾乳牛200頭による酪農事業を開始した。肉牛肥育
から酪農への事業参入を行ったことになる。平成2年7月に江別肉牛ファームを
(有)JETファームと社名変更した。

 その後、規模拡大を続け、JETファームは全体で乳牛1,351頭、肉牛4,141頭(11
年7月末)の、日本最大の酪農・肉牛事業者となっている。

 この企業は酪農と肉牛肥育を事業としているが、実態は多様な事業グループの
なかに位置づけられている。JETファーム単独での考察では、この事業組織を理
解できない。企業集団全体を見渡す必要がある。

 JETファームは、丸〆(まるしめ)グループの中核なのである。事業経営は丸
〆グループとして統括されている。経営上のデータは、丸〆グループとして把握
されている。JETファーム社長は篠田修紀氏である。同時に、篠田氏は有限会社
栃木ファームを除く、グループ各社の社長でもある。

 マネジメントの核は株式会社丸〆と丸〆篠田畜肉株式会社である。このグルー
プの原点は(株)丸〆にあるといえよう。現社長篠田修紀氏の先代にあたる父親
は役所を退職後、肉牛肥育業を営んでいたが、小売業に転進した。その後農協の
役員なども勤め、江別市への貢献は大なるものがあるという。しかし、この企業
グループをここまで大きく成長させたのは、現社長の篠田氏であり、事実上の
(グループ)創業者と言ってよいであろう。

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サービス事業の役割

 丸〆篠田畜肉は食肉の卸売業、小売業などの事業経営をしている。グループの
原点を継承していることになる。丸〆は仕出し弁当の製造販売、レストランなど
を経営している。グループのフード・サービス部門ということになる。

 さらに、有限会社一番町ハーティショップという名称で、江別市の本社横にC
VSを経営している。また、社屋の一部を塾に賃貸していて、CVSの収入と塾の家
賃収入が丸〆グループの収益に貢献している。

 なお、江別市の本社の人員は、企業グループ全体で社長を含め社員27名、パー
ト社員31名、合計58名である。

 このように多様な事業経営ではあるが、この企業集団の中核は酪農・肉牛事業
にあり、この経営状況がグループ全体の死命を制することは間違いない。

表1 JETグループ(丸〆グループ)の経営状況(平成10年度)
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 ※各社決算報告書による

 酪農・肉牛事業は、JETファームと栃木ファームの2つの企業(有限会社)で行
われている。栃木ファームは、JETファーム栃木牧場の一部を別会社としたもの
で、子息である教雄氏が社長として事業を担当している。主として生産面での統
括が主であり、経営の管理はJETファーム本社が掌握している。

 栃木ファームは事業のリスク分散という側面もある。また、子息の経営者とし
ての修行の場として、修紀氏が考えているとも言えよう。

 教雄氏はJETファームの専務も兼ねていて、栃木牧場の生産面の全面的責任者
となっている。栃木駐在の最高責任者ということになる。

 グループ全体の売上高は約29億円であり、経常利益は約1億9,000万円である。
その経常収益の86%を、JETファームが上げている。栃木ファームの分を入れる
と97%になる。酪農・肉牛事業が丸〆グループのすべてであると言うことができ
る。

 このことは、他の事業部門が無くなっても良いことを意味しない。その他の事
業が小売とフード・サービスであることに注目する必要がある。これらの事業か
らは、すべて売り上げが現金で得られるのである。卸売と仕出しなどの業務用需

 約11億円、つまり3分の1以上の売上が、キャッシュで入ってくる。このことの
資金繰りへの影響は非常に大きい。肉牛では生産開始から27〜28ヵ月しなければ、
売り上げは得られないのである。また、酪農も搾乳が始まるまでの飼養期間中は、
資金が寝る。その資金繰りのハンディを、小売とフードサービス事業が埋めてい
る。

 JETファームの事業を理解するには、この資金回転の効率に注目する必要がある。
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【筆者と篠田社長(右)
 (丸〆篠田畜肉の小売店舗)】


北海道から栃木へ

 JETファームの事業は、北海道と栃木県で展開されている。

 栃木牧場は、昭和62年まで経営していた日商岩井と日本製粉との合弁によるニ
ップン・ファームが事業撤退により、篠田氏個人が買い取ったものである。

 北海道江別市にある江別牧場では肉牛の肥育を行っている。肥育牛舎5棟に300
頭が肥育されている。また、中標津育成センターでは、4棟の牛舎に育成牛が350
頭飼育されている。

 JETファームの中核となる栃木牧場では、搾乳牛1,043頭、乾乳牛308頭、肥育牛
2,000頭が飼育されている。牧場の面積は約10haであり、従業員は38名である。
従業員のうち正社員は23名、パート社員15名となっている。パートは女性であり、
主としてパーラーでの搾乳作業に従事している。

 栃木牧場での生乳の生産実績は、平成10年で約8,500トンであった。11年の計画
では1万トンを目標にしている。1頭当たりの乳量は8,200から8,300キログラムで
ある。

 3年には江別市における搾乳事業を止めて、栃木牧場に酪農事業を統合してい
る。江別牧場は肉牛肥育専業となったわけである。

 その理由は、乳価の差にあると篠田社長は言う。つまり、指定団体への販売価
格が北海道では約75円になるが栃木では約90円になることが、栃木集中の理由な
のである。これだけの価格差があると、1万トンの搾乳を目標にしているJETファ
ームにとって、1億5千万円の売価の差となってくる。

 大規模化して総合的にコストダウンをすれば、十分に経営が成り立ち、「乳価
が3円や4円程度下がっても、事業経営は成り立つ。10円下がるあたりが損益分岐
点」と篠田社長は言う。

 事実、損益計算書を見ると、生乳の売上高(8,500トン)から、売価を計算する
と1キログラム90円であり、製造原価は67円となる。北海道の乳価(75円)、つ
まり現在より15円下がっても、採算点ぎりぎりの苦しい経営になるが、それが成
り立つ事業経営となっている。

  しかし、この企業の戦略が乳価の差だけの着目にあると考えるのは、間違いで
ある。

 先に述べた多様な事業展開は、その一端である。酪農・肉牛事業でも、多面的
なマネジメントが展開されている。

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【川森技術管理部長(左)、筆者(中央)、
  子息の篠田専務(右)(栃木牧場)】


重要なたい肥事業の位置づけ

 栃木に拠点を置く最大の理由は、生乳の販売価格にある。しかし、それだけで
ない意外なメリットがある。それはたい肥の販売にとって、栃木の方が圧倒的に
有利な条件が存在するということである。

 たい肥はこの企業の重要な利益商材である。顧客の数は多く、用途も多様であ
る。

 たい肥を事業として考える場合は価格に比較して、重量があるので、物流コス
トの占めるウェイトが非常に高い。北海道からでは、このコスト負担が致命的に
なることは明白である。また、北海道に留まっていたら、現在の生産規模に見合
うたい肥の需要は期待できない。ふん尿処理の点で、大規模化は不可能であった。

 栃木牧場の前所有者のニップン・ファームが「スロード」というブランドでた
い肥を販売しており、現在もそのブランドでの販売は行われているが、JETファ
ーム独自のブランドとして「みどりの大地」という銘柄でも出荷している。

 たい肥は袋詰めでの販売が年間2,500m3、バラでの販売が3,500m3となっている。
袋詰めは5キロ、10キロ、15キロの種類があるが、10キロ詰めが主体である。袋
詰めはホームセンターや園芸店に卸売り販売されている。バラはダンプカーで運
ばれ、山梨のぶどうと桃の生産者や肥料業者に販売されている。

 ふん尿とおがくずが半々の熟成された良いたい肥であるという。また、「もど
したい肥」として自社の牧場で牛舎の敷料としても使用しており、たい肥は不足

 たい肥の売り上げは、栃木ファームが約4,100万円、製造原価は約1,700万円で
ある。

 JETファームも、約1,200万円のたい肥売上を記録している。

 製造は栃木ファームが行っていると考えられるので、全体におけるたい肥の売
上利益率は67.8%となる。

 たい肥事業の占める重要度は非常に高い。

 たい肥の製造工程は、非常にシステム化されている。切り返しの装置も24時間
稼働の大型装置を4機備え、コストダウンを図っている。たい肥は環境問題と有
機農産物への関心の高まりによって、今後も需要は増えるであろう。ふん尿とい
う酪農・畜産事業での最大のトラブルを利益製品にしたのである。そのことは、
栃木で大規模酪農を行うという、事業戦略の目に見えないけれども、大変大きな
メリットと言えるであろう。


肉牛事業

 肉牛事業では、JETファームと栃木ファームの合計で7億9千万円の売り上げが
計上されている。

 以前は乳雄を一貫生産していたが、価格が低落してF1に切り替えた。飼料管理
が乳雄とF1では異なるが、配合のウエイトを変えることによって、その問題を解
決している。

 F1牛生産では、良い肉牛の出る雄牛から精子を採取した、(社)家畜改良事業
団及び(株)ジャパン・ホルスタイン・ブリーデング・サービスの精液を使って
いるという。良い肉牛の生産は、半分は血統であり、後の半分は飼い方である。

 その飼い方は飼料のマネジメントだけでなく、ビタミンAの与え方を徹底的に
追及したところにある。このことについては後に触れる。

 現在、ETによる和牛も飼育されている。受胎率は経産牛で30%、未経産牛で60
%である。凍結卵ではなく、新鮮卵を使っている。

 将来は全頭をETにより、和牛を生産したいという、教雄氏の思いである。もっ
とも、和牛は管理が難しい点があるそうで、現在とは違ったチャレンジが必要と
なるだろう。その時に、JETファームが教雄氏の世紀として、発展するであろう。

 F1牛の格付けの実績は、4・5等級が20%、3等級が55%であり、2等級は25%と
なっている。篠田社長は3等級以上が75%となることで、技術的に良い方向にあ
ると評価する。

 肥育牛は経済連を通して出荷している。東京芝浦市場が主となるが、出荷する
市場は経済連と協議して決めている。

 江別牧場での牛肉は、(株)丸〆の経営するレストランでステーキとしても提
供されている。評判が良いという。ただし、直営の小売店での販売は、無理なよ
うに見えた。高級過ぎて、需要が少ないと思われる。

 なお、肉牛の肥育に関しては、福島県に3ヵ所、茨城県に1ヵ所の農家に牛を預
託している。預託する農家はほとんどが、経営に行き詰まり、離農を決意した農
家であるが「牛飼いに意欲のある40歳代とまだ若い農家」を選定している。  

 乳肉複合・一貫経営は、生乳と食肉の事業のバランスがとれて、順調に行われ
ている。


スケールメリットの追求と積極的なイノベーション

 増頭を積極的に進めている。昨年の搾乳牛は900頭から950頭であったが、今年
は7月末で1,043頭になっている。今年中に、1,100頭規模にまで拡大する予定であ
る。

 「増頭してもコストは増えない。増えるのはえさ代ぐらい」と篠田社長は、こ
ともなげに言う。その言葉は効率的な事業の体制を確立したという、自信に裏付
けられている。

 それは、搾乳を1日3回行っていることに、その典型例を見ることができる。朝
5時から11時、昼2時から6時、夕方6時から夜11時までの搾乳のスケジュールが組
まれている。搾乳は1時間に200頭が標準である。25頭が2列に並ぶパーラーにパ
ートの女性が、かなりのスピードで作業をしている。習熟度にもよるが、1回に
3から4人の女性が作業についている。

 また、飼料は江別牧場では手やりであるが、栃木牧場ではショベルローダーで
いろいろな種類の飼料が集められ、給餌車に詰め込まれ配合される。5トンは入
れられる大型の給餌車が、かなりの速度で作業をする。注目されるのは、えさの
配合をきちんと数字で把握していることである。給餌車に付いている表示器を見
ながら、えさの量を調整しているのである。その給餌車が牛舎に直接入り、えさ
を与えている。ふん尿の処理も、全てショベルローダーによって行われている。
その作業スピードも、非常に速い。

 飼料の調達も非常に合理的に行われている。飼料は100%購入となっている。 

 粗飼料は輸入によっている。その場合、産地だけでなく畑までを指定している。
できるだけ寒いところが産地として適しているので、アメリカ西海岸の北の産地
を探した。

 オレゴン州の現地資本と提携している日本の中堅商社をとおして、日本向けの
粗飼料を作ってもらっている。年間3,800トンから4,000トンの粗飼料が必要とな
る。それはオレゴンの農業者にとっても、魅力的な量となる。為替のリスクはこ
ちら持ちの、CIF価格での長期契約をしている。

 飼料の調達は、できるだけ国内で行いたいが、チモシーを生産する場合10a当
たり1トンとして、400haの草地が必要になる。この条件を満たせるのは北海道し
かないと言う。粗飼料の生産基地としての北海道の役割が評価されるのかもしれ
ない。

 しかし、為替のレートが120円程度なら、輸入した方が有利であるという。品
質と経営の安定性のために国内産に魅力を感じながらも、輸入の粗飼料に頼って
いる、ジレンマが感じられた。

 機械と装置は大規模化され、極力人手に頼る部分を少なくしている。牧場では
ほとんど人影を見ることがない。人員の確保に努めながらも、人件費を極力合理
化する努力がなされている。

 このようなスケールメリットの追求・コストダウンの努力によって、乳肉複合
・一貫経営を「儲かる」事業にしているのである。

 この企業の乳肉複合・一貫経営は、イノベーション(技術革新、あるいは、新
しいことへの挑戦)によっても支えられている。

 良い肉牛を得るための半分の条件は血統であり、良い精液を得るためには多額
の投資もいとわないという。

 また、肥育部門では飼料管理が厳しくなされている。飼料設計は月1回の割合
で行われていて、ビタミンAの投与が徹底的に管理されている。8、14、20ヵ月
齢ごとに、採血して血液検査をしている。コンピューターによって、予測値と実
績とのチェックが行われているのである。

 検査機械にもかなりの投資をしている。

 酪農部門においても、約1億4千万円かけて最新式のコンピューター管理のミル
キングパーラーを設置している。

 厳しいコストダウン経営の反面、このようなイノベーションへの投資が行われ
ている。このことは、言うは易しいが、実行には困難がつきまとう。それが個人
レベルの事業経営で行われている。そのベンチャー精神は、大変に貴重である。
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【50頭を同じに搾乳できるコンピューター
管理のミルキングパーラー】


細心の計数管理

 篠田社長は「20億円以上の投資をしている。それらは自分たちの金である。損
は許されない」と繰り返す。また、「いざ解散という時には、牛を売って牧場の
施設が残る経営をしている」とも言う。自分一人しか頼れるものが無いという、
事業家の孤独感を強く感じた。

 篠田社長の「すごさ」は、現実にその言葉に合う経営を行っていることである。

 バランス・シートを見ると、そのことがよく分かる。

 JETファームの現金・預金は7,600万円、有価証券170万円、合計現金相当資産は
7,800万円である。それらを除いた流動資産は約10億円であり、そこから肉牛資産
(7億円)を除くと3億円となる。流動負債は2億1千万円であり、「いざという時」
には、流動資産(額面よりダウンして流動負債に見合うぐらいの額になろう)と、
流動負債は帳消しになる。

 固定資産が11億円あり、それは固定負債とほぼ見合う額となっている。そして
「いざという時には」現金相当の資産と肉牛を処分すると、7億8千万円となる。
固定負債を返済するには3億7千万円ほど不足する。しかし、それで凌げれば、酪
農事業だけは残る。

 もし、それも不可能になった場合には、乳牛(3億3千万円)を売却すれば、問
題は9割方解決するのである。さらに、キャッシュ・フロー経営の原点である、
サービス事業は傷つかずに残る。捲土重来、新しい機会は、容易に来るであろう。

 そのような「いざという」時は、来ないであろう。しかし、バブル期に踊り狂
った事業家を見ると、「万が一」へのシミュレーションをしておくことは、非常
に重要である。

表2 「万が一」の時の資金の対応状況
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 現実には、栃木牧場の近くに8haほどの土地を購入している。栃木ファームの
約2億5千万円の長期借入金がそれに当てられている。

 それには篠田社長個人が1億円、JETファームが残りを貸している。まだ、具体
的な事業計画は無いということであるが、焼物で有名な益子町や、国際レーシン
グコース 、「ツインリンク・もてぎ」の近くであること、また鉄道の駅にも隣
接しているという立地条件からみて、観光牧場やショッピング・センターなどの
建設も面白いだろう。いずれかのデベロッパーとの提携での事業展開があるかも
しれない。

 細心の資金管理と同時に、このような先行投資を大胆に行っているのである。

 バランス・シートを見ると、事業家としての篠田社長の「すごさ」が見えてく
る。

 細心の計数管理のセンスに裏付けられた積極的戦略の実行、これがJETファー
ム・グループの特性であろう。

 酪農・肉牛経営におけるベンチャー企業として、JETファームを見る必要があ
るだろう。


何を学ぶか

 JETファームは酪農の世界では、稀有な存在である。1,000頭規模の酪農事業者
は日本ではこの企業しか存在しないのである。

 そのために、規模が違いすぎて、参考にならないという声も多いと聞く。現実
に、筆者も小規模でユニークな酪農事業者を、過去2回にわたって、レポートし
てきた。サービス事業への発展は、日本の酪農・畜産経営の進むべきひとつの方
向である。しかしJETファームは、あまりにも規模が大きすぎて、自社での牛乳
製品(自社ブランドの牛乳、アイスクリームなど)の販売に、現状では進出する
ことは難しい。そのような発展は、小・中規模の酪農家の進出領域であるかもし
れない。しかし、今回の調査によって、日本の酪農事業にも、多面的な経営の方
向があるのだと、認識を新たにしている。

 事業のあり方として見ると、この企業グループは示唆に富む。規模が違いすぎ
るからといって他の酪農・畜産経営者が目を向けないのは、間違いであろう。こ
の程度の規模の酪農・畜産経営は、アメリカには多くある。日本の酪農経営は、
このアメリカの経営者を挑戦者として迎えなければならない。日本にある身近な
ケースを、真剣に学ぶべきであろう。

 多角的な経営展開の哲学、資金繰り重視の計数管理、コストダウンとイノベー
ションの両立、そして大胆さと細心さ。

 この乳肉複合・一貫経営は、現行の制度・状況下での1つの成功例と言えよう。

 不安点がないわけではない。それは、JETファームは飼料をすべて輸入してい
ることから、世界の穀物相場、為替の影響を直接に受けること。また、自給飼料
の増産といった今後の政策の方向とも必ずしも一致していないことである。

 事業家としての篠田氏個人を含め、この企業集団が有する魅力は、非常に大き
い。必ずや、臨機応変に対処していくことであろう。

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