大分県/久保田 竹次
大分県では、「一村一品運動」の展開により地域産業の振興を図っており、中 でも豊後牛は県内58市町村の中で23の市町村が「一品」として掲げ、増頭に取り 組んでいる。 それぞれの市町村においては積極的な取り組みが行われており、阿蘇くじゅう 国立公園内に位置し、広大な草地の景観を持つ観光地としても有名な久住町では、 町、農協、生産者組織が一体となって畜産振興に取り組んだ結果、着実に増頭運 動が根づき、昨年この成果が全国的にも認められ、畜産大賞、朝日農業賞、全国 肉用牛経営者コンクールで最優秀賞をいただいたところである。 県としては、このような地域での優良な取り組みを、点から線、線から面に拡 大していきたいと考え、低コスト牛舎や家畜導入など各種施策を講じ増頭を推進 している。 しかしながら、こうした一部の地域では大きな成果を上げているものの、最近 の肉用牛の子牛価格や枝肉価格が、輸入の自由化や長引く景気停滞等を背景とし て低迷していることから、飼養農家の経営に対する先行き不安等もあり、平成11 年2月現在の本県の肉用牛飼養戸数はこの数年、年率6〜8%で減少するとともに、 飼養頭数については6万6千頭と4年連続で減少しており、肉用牛農家の経営は一 層厳しさを増しているものと思われる。 このような状況を踏まえ、大分県では「大分県肉用牛増頭戦略検討委員会」を 設置し、本県肉用牛振興の進むべき方向について、県の枠を越えて広く有識者に 意見を求めて検討を行い、今後の施策展開に向けた提言として取りまとめ、肉用 牛の振興を図ることにした。 第1回の検討委員会は、8月6日、東京都千代田区の「麹町会館」において開催 され、検討委員会に先立ち平松守彦大分県知事から5名の専門委員(学識経験者、 実践農家等)と3名の特別委員(県内生産者等)に委員委嘱状の交付が行われた。 検討委員会では、知事挨拶の後、菱沼毅委員(元九州農政局長、現家畜改良事 業団参与)を座長に選出し、県側から検討委員会設立の趣旨や今後の日程、肉用 牛をめぐる情勢等について、また、3名の特別委員からはそれぞれ繁殖や肥育の 経営状況等について説明があり、自由討議の後、次回の日程調整や現地調査先等 の希望聴取を行い閉会した。 なお、この検討委員会は、本年度中に4回、来年度中に2回の計6回の開催を計 画しており、検討内容としては、現地調査などを踏まえ、肉用牛を生産する農家 の現状を綿密に分析し、来年8月には、増頭を推進するための方策を知事に提言 することになっている。
【検討委員会の様子】 |