農業ジャーナリスト
山田 優
インターネットが普及するにつれて、当初の物珍しさが薄れ、どのようにして 実際のビジネスや生活に活用するのかという視点が、求められるようになってき た。欲しい情報を手軽にしかも効率的に引き寄せる「技」、それがインターネッ ト検索だ。この検索のこつさえつかめば、情報の大海の中から目的とする魚を釣 り上げることができる 今、家庭用のパソコンを買えば、ほとんどの機種がインターネット対応をうた い、必要なソフトやモデム(電話回線を通じて接続する機械)が付いてくる。手 軽に色とりどりのホームページを眺めたり、電子メールのやりとりを楽しむこと ができるようになった。全世界のインターネット利用人口は1億人を超え、現在 でも急成長中。テレビや新聞、雑誌、電話などと並ぶ、身近な情報伝達の手段と して定着するようになってきた。 しかし、あまりに多くの情報がインターネット上で蓄積されているため、本当 に欲しい情報にたどり着くために費やさなくてはならないエネルギーが、非常に 大きくなってきたことも確かだ。
試しに日本国内のホームページの中から「ダイオキシン」という言葉を含んだ ものを選び出してみよう。「goo(グー)」と呼ばれる検索専門のホームページ (www.goo.ne.jp)で、検索キーワードに「ダイオキシン」と入力し、検索ボタン を押すと、「18,534件ある」(8月29日現在=以下同じ)と表示された。グーは、 日本国内だけで1,700万以上ものホームページをデータベース化しているという。 自分で片っ端からホームページをのぞいて、「ダイオキシン」という言葉を拾い 出すことを考えれば、わずか数秒の待ち時間で2万弱まで絞り込んでくれる検索 ホームページのありがたさは理解できるだろう。だが、2万弱というのも端から 見ていくものとしては多すぎる。ここで威力を発揮するのが「AND検索」だ。
AというキーワードとBというキーワードを、2つとも含むホームページを「A B」と入力することによって探し出すというのがAND検索。これが自分の欲しい 情報を探し出す際のいちばんの基本になる。 たとえば、「ベルギーでダイオキシン騒動があって、たしか鶏肉が汚染された はずだが、日本ではどうなっているのだろうか」とあなたが考えたとする。自分 の問題意識からキーワードを取り出してみよう。「ベルギー」、「ダイオキシン」、 「鶏肉」、「日本」となる。これらの文字をグーのキーワードを書き込む場所に 並べて入れる。その際に一つひとつのキーワードの間に1文字分の空白を入れる のを忘れてはいけない。そうでないと、あなたが「鶏肉」と「日本」を検索しよ うとしても、グーは「鶏肉日本」という文字を含むホームページを探し出そうと してしまうからだ。 「ダイオキシン」と「ベルギー」をAND検索すると、359件を拾い出してきた。 「ダイオキシン」だけの時に比べて2割弱まで絞り込むことができた。1度に4つ のキーワードを書き込んだAND検索の場合、83件となった。この中には、厚生 省が6月17日に記者発表した「ベルギー産鶏肉等のダイオキシン汚染について」 のほか、日本缶詰協会の理事会のホームページや、個人でダイオキシン汚染に関 心を持っている人のホームページなどが含まれていた。
グーに限らず、ライコス(www.lycos.co.jp)インフォシーク(japan.infoseek. com)、エキサイト(jp.excite.com)など、さまざまな検索専門ホームページが あり、使いやすさと検索能力を競い合う。AND検索の原理は同じだが、何回か使 っているうちに、それぞれの検索ホームページの特徴が見えてくる。単純なAND 検索ではなく、「絶対に含まなくてはならないキーワード」のほか、「できれば 含まれるキーワード」などを指定するファジー検索を売り物にしているものもあ る。一見すると複雑に聞こえるが、画面にしたがってキーワードを入力すれば済 むから試してみてほしい。 今年5月の連休に、「補助金とカントリーエレベーター」、「米国産トマトと 輸入」など農業関係のキーワードをいくつかあてはめて、こうした検索ホームペ ージの優劣を調べてみた。この結果は時事通信社の「農林経済」(11年6月3日付 け)で紹介したが、グーがバランス良く情報を引っ張ってきたほか、ライコスと エキサイトもかなり健闘した印象だ。逆に老舗ながらインフォシークは農業分野 ではあまりぱっとしないという結論になった。 先に紹介したグーやインフォシークなどの検索専門ホームページだけではなく、 農林水産省や農畜産業振興事業団などが運営するホームページにも、検索コーナ ーがあり、団体が抱える情報を効率的に引き出すことが可能だ。 インターネット情報の検索で大切なのは、まず、自分の欲しい情報のキーワー ドを整理すること。次に、どのような検索ホームページを利用して情報を絞り込 むかだ。慣れてくると、こうしたプロセスは、大きな網を抱えて太平洋に漁にこ ぎ出すような気分になってくるから不思議だ。検索に楽しみを感じることができ るようになれば、あなたも検索の鉄人の領域に足を踏み入れたことになる。
やまだ まさる 昭和52年名古屋大学卒業。同年日本農業新聞(全国新聞情報農協連合会)へ入 会、編集局へ配属。食品流通、農政、経済、九州支所、技術、校閲などを担当。 平成10年から広告部。平成5、6年、米国フロリダ大学、テキサス農工大学客員研 究員。