北海道/田中 義春
北海道網走管内紋別市では、酪農家3戸が平成10年に放牧研究会を作り、11年 から本格的な取り組みが行われている。これは単に他の地域の真似ではなく、紋 別市の立地条件や気候条件に合った独自の放牧技術を追求しようとスタートした ものである。地理的に、根釧や天北の草地型酪農地帯でもなければ、十勝や網走 の中央部のとうもろこし地帯でもなく、その間に位置しているためである。 現状のシステムに問題もでてきていた。一日中繋ぎっぱなしで肢蹄などの疾病 が増えている、発情行動が見えず分娩間隔が伸びている、ふん尿処理の規制が厳 しくなり大変だ、粗飼料が十分生かされていないため乳量や所得へ結びつかない、 ・・・などである。 まず、事業を活用して牧柵や牧道を整備するとともに、追播用のシードマチッ ク(播種機械)をニュージーランドから輸入してハード面からの充実を図ってい った。また、農業改良普及センターが牧草の栄養価、収量、採食量、施肥量など のデータを定期的に調査した。 放牧を実施した酪農家からは、牛のストレスが解消された、肥料代が削減でき た、ふんを草地へ散布しなくて省力化につながったというメリットとともに、牧 場への出し入れが大変だ、発情牛を見つけてもつかまえるのが困難だ、という意 見も出された。ただ、北海道も今年は猛暑が続いたこともあって、思うように草 が伸びず、草量不足となったほ場もあり、牛が放牧地へ行かないなどの異常な行 動も見られた。 周辺の小学生も、牛が草を食む姿を見ることが珍しいこともあって、授業で写 生会が行われた。今後は、「もう一度放牧を見直してみませんか」という表題で、 研修会も予定されており、実践した酪農家だけでなく、他の仲間を増やす計画も 組まれている。 最近は各地で「新しい放牧」への取り組みが出てきており、酪農の多様化がさ らに進むと思われる。
【整備した牧柵、牧道】 |
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【写生会、写牛会】 |