◎地域便り


バター作りから乳の科学と文化を学ぶ   

岩手県/川田 啓介


 岩手県前沢町にある牛の博物館では、文部省の平成11年度親しむ博物館づくり
事業により「体験展示・牛乳からバターを作ろう」の開発に取り組んでいる。普
段何気なく口にしているバターがどのように作られているのか、その仕組みを楽
しく学んでもらうもので、その一環として、平成11年10月23日(土)に「バター
づくりに挑戦!」と題したイベントを開催した。当日は、気持ち良い秋晴れの下、
博物館の芝生広場に、町内をはじめ近隣市町村から親子など52名が集まった。ま
た、事業の運営に当たっては、牛の博物館ボランティア(キャトルサンク)の協
力を得た。

 まず、牛に親しみをもたせるために牛が登場する絵本を読み、次いで水沢農業
高校の協力により、牛の乳搾り体験を行った。最初はおっかなびっくりだった子
供たちも、牛の乳房に触れると、一様にその温かさに驚き「牛乳が温かいとは思
わなかった」など親子で盛んに話し合っていた。もう一度やりたいと列に並び直
す子供もいた。そして、市販のホモゲナイズされた牛乳と搾りたての牛乳の乳脂
肪を顕微鏡で覗き比べ、その違いを確認した後、博物館に収蔵されている海外の
伝統的なチャーン(バターづくりの道具)などを用いてバターのできる仕組みの
説明を受けた。バターが乳脂肪を固めた食品であることは、ほとんどの人が知っ
ていたが、乳脂肪を実際に見たことはなく、その美しさに感動したようだった。
持参したペットボトルに牛乳を注いでもらい、激しく揺すってバターづくりに挑
戦すると、子供たちは「疲れた」「もうだめ」などと言いながらも片時も手を休
めることなく振り続け、早い子では10分ほどでバターと脱脂乳に分離させること
に成功した。一番早くできた子は「学校で自慢できる」と満面の笑顔であった。
残った脱脂乳からは、カッテージチーズを作り、牛乳からは無駄なくさまざまな
乳製品が作られることを学んだ。できたバターとカッテージチーズは、パンやク
ラッカーにつけて早速試食。「おいしい」と歓声があがっていた。

 学校が週休2日制になり、子供が地域で過ごす時間が増えるにつれ、博物館な
ど生涯学習施設は、ますます重要な役割を担うようになると思われる。本事業は、
博物館が畜産教育にどのように関われるかの挑戦でもあった。畜産をはじめ、農
業は人々が暮らしのなかで築いてきた大切な文化である。今後とも、モノと体験
を融合させた楽しい事業を企画していきたい。
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【バターは乳脂肪を固めた食品です。】

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【キープ・オン・チャーニング!】

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