岩手県/川田 啓介
岩手県前沢町にある牛の博物館では、文部省の平成11年度親しむ博物館づくり 事業により「体験展示・牛乳からバターを作ろう」の開発に取り組んでいる。普 段何気なく口にしているバターがどのように作られているのか、その仕組みを楽 しく学んでもらうもので、その一環として、平成11年10月23日(土)に「バター づくりに挑戦!」と題したイベントを開催した。当日は、気持ち良い秋晴れの下、 博物館の芝生広場に、町内をはじめ近隣市町村から親子など52名が集まった。ま た、事業の運営に当たっては、牛の博物館ボランティア(キャトルサンク)の協 力を得た。 まず、牛に親しみをもたせるために牛が登場する絵本を読み、次いで水沢農業 高校の協力により、牛の乳搾り体験を行った。最初はおっかなびっくりだった子 供たちも、牛の乳房に触れると、一様にその温かさに驚き「牛乳が温かいとは思 わなかった」など親子で盛んに話し合っていた。もう一度やりたいと列に並び直 す子供もいた。そして、市販のホモゲナイズされた牛乳と搾りたての牛乳の乳脂 肪を顕微鏡で覗き比べ、その違いを確認した後、博物館に収蔵されている海外の 伝統的なチャーン(バターづくりの道具)などを用いてバターのできる仕組みの 説明を受けた。バターが乳脂肪を固めた食品であることは、ほとんどの人が知っ ていたが、乳脂肪を実際に見たことはなく、その美しさに感動したようだった。 持参したペットボトルに牛乳を注いでもらい、激しく揺すってバターづくりに挑 戦すると、子供たちは「疲れた」「もうだめ」などと言いながらも片時も手を休 めることなく振り続け、早い子では10分ほどでバターと脱脂乳に分離させること に成功した。一番早くできた子は「学校で自慢できる」と満面の笑顔であった。 残った脱脂乳からは、カッテージチーズを作り、牛乳からは無駄なくさまざまな 乳製品が作られることを学んだ。できたバターとカッテージチーズは、パンやク ラッカーにつけて早速試食。「おいしい」と歓声があがっていた。 学校が週休2日制になり、子供が地域で過ごす時間が増えるにつれ、博物館な ど生涯学習施設は、ますます重要な役割を担うようになると思われる。本事業は、 博物館が畜産教育にどのように関われるかの挑戦でもあった。畜産をはじめ、農 業は人々が暮らしのなかで築いてきた大切な文化である。今後とも、モノと体験 を融合させた楽しい事業を企画していきたい。
【バターは乳脂肪を固めた食品です。】 |
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【キープ・オン・チャーニング!】 |