山梨県/倉島 脩二
近年、本県においても畜産の生産構造は、戸数の減少と規模拡大が進行してい る。 このような情勢の中にあっても、幾多の困難を克服して先進的、中核的な優良 経営を実現している事例も少なくない。 山梨県畜産会では、中央畜産会の指導の下に、12年2月「畜産友の会」を組織 化し、優良な経営者の仲間づくりに取り組んでいるところである。 加入対象農家の選定に当たっては、エリート農家であることはもちろんのこと、 地域や畜種、それに会議等に出席しやすい家庭環境等を考慮した。畜産農家は、 一部地域を除いては孤立分散している。このため畜種を越えた仲間との共通課題 の話し合いや情報交換が渇望されており、それだけに「畜産友の会」への期待は 大きい。 これらの加入者の経営上の特徴等を要約すると次のとおりである。 酪農経営(5戸) ・積極的な借地の利用による自給飼料生産の外延的拡大への努力 ・粗飼料の生産、調製の「結」による作業効率の向上および機械等の部分的共 用による投資の抑制 肉用牛経営(4戸) ・コスト低減と消費者ニーズを両立させた甲州ワインビーフ(F1)の銘柄化推 進 ・自ら焼肉店や食肉販売店を経営し、これに必要な自家農場産の牛肉を供給 養豚経営(3戸) ・放牧による省力技術の確立および自家配合飼料による低コスト化の両立 ・環境に配慮した近代的養豚経営 ・豚肉の加工による高付加価値化とこの全量直販による有利販売の実現 養鶏経営(3戸) ・厳選した飼料原料による配合設計と給与 ・鶏卵の持つ商品特性(加工不要)を生かした直販体制の定着 ・平飼い鶏卵の生産による高付加価値化と経営補完 このように、堅実経営を維持発展していくため、酪農においては、自給飼料の 生産拡大による土地利用型志向が極めて強い。一方、肉畜、鶏卵部門では、従来 の生産者という立場に加えて、高付加価値化、流通・販売へとシフトしているこ とが目立っている。 畜産友の会の組織を通じて、これらのエリート畜産農家の経営実態を常に把握 し、そして、これを核に輪を広げていくことが重要である。関係機関との連携、 協調のもとに、さまざまな情報提供と支援をしていきたい。