◎地域便り


低利用材を畜産敷料に

鹿児島県/西中間 公文


 鹿児島県薩摩郡入来町の農業粗生産額のうち畜産部門が占める割合は、7割を
超え、肉用牛の粗生産額は約4.5億円となっている。

 現在146戸の農家で、2,556頭の肉用牛が飼養されており、なかでも和牛の繁殖
経営は、138戸で約950頭となっている。規模別では20頭以上の農家が6戸で、年
々規模拡大が進み、今後もさらに規模拡大が進むものと思われる。その増頭が進
んでいる背景には、町の畜産担当である下薗郁男営農指導係長を中心とした各種
補助事業への積極的な取り組みと、町畜産振興会をはじめ、各集団での話し合い
活動による情報の提供がある。会合に出席するたびに、町内の畜産農家からは
「入来の畜産農家が、一番やる気があっど」など活気にあふれた声が聞かれる。

 そのような中で、平成11年度には、環境保全型畜産確立対策事業で有機質資源
の循環利用を目的として、入来町畜産敷料生産組合を発足した。組合の構成員は
林業家の今藤民夫氏を組合長に、和牛繁殖農家で45頭の繁殖雌牛を飼う平悦雄氏、
同じく61頭を飼う下馬場敏秀氏である。組合では、家畜の敷料としておがくずを
安価で、安定的に生産できる機械の整備に取り組んだ。畜産農家が規模拡大する
なかで、おがくずの需要は高まっている。しかし、供給量はそれに追いつかず、
容易に手に入らなくなっている。それは、おがくず製造に利用される間伐材等が
少ないこと、またおがくずを製造するには原木1トン当たり4,500円以下でないと
赤字になるなどの問題があるためである(実際には原木1トン当たり10,000円の
コストがかかる)。

 そこで、入来町畜産敷料生産組合への木材の供給は、組合長でもある今藤氏の
(有)今藤林業に依頼し、間伐材、支障木、端材の有効利用をすることとした。
これにより、原木1トン当たり3,000円程度となり、採算ラインをクリアすること
ができた。

 製造されたおがくずは、1立方メートル当たり2,300円で畜産農家に供給される。
さらに、炭焼きがまを建設し、出来た炭を敷料に混ぜることで、糞尿の脱臭等の
効果を期待している。

 今後もたい肥舎の整備、たい肥の成分分析を実施し、さらに耕種農家との組織
づくりに力を入れて、有機質資源の循環を図っていく。

 今、周辺の環境に配慮した、環境保全型畜産の確立に入来町は全力で取り組ん
でいる。

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