◎地域便り


耕作放棄地を活用した肉用牛繁殖経営

岐阜県/加藤 誠二


 岐阜県益田郡馬瀬村は岐阜県の北部地域にある村で、周囲は1,000メートル級
の山に囲まれ、総面積の95%が森林で占められる典型的な山村である。産業とし
ては農業、林業があり、近年では清流馬瀬川を訪れる釣り人と温泉により観光産
業も増えつつある。

 本村で肉用牛(繁殖)を飼養する赤梅さん(60)は、本人がサラリーマンをす
る傍ら家族の協力を得て経営を成り立たせてきた。父親から引き継いで平成元年
から始めた肉用牛繁殖経営は、飼養規模3〜4頭で推移してきており、それを可能
にしているのは自宅近くに放牧地を持っていたおかげである。

 昭和50年頃から耕作放棄地等を借り受け、現在1.88ヘクタールを放牧地として
活用している。放牧実施の了解を得た上で借地していること、自宅周辺にはほか
に民家が1戸のみであることから、放牧を実施することに対する問題は発生して
いない。また、近くに川があるが、放牧頭数を制限しているため、水質汚濁等の
問題は発生していない。現在は自給飼料の生産は行っておらず、自家産の稲ワラ
の収集のみを行っている。というのも、この周辺では、イノシシ、サルの被害が
ひどく、飼料作物生産が困難なためである。結果として、自給飼料生産に要する
労力はほとんどいらない状況にある。

 このように、成功することができたのは、放牧地での放牧頭数を適正に維持す
ることにより、草生産と放牧利用のバランスがうまくとれていたことによると考
えられる。また、家畜を放牧させることにより農地を環境的にもきれいに管理し
てきたことも理解を得られた一因であると考えられる。

 今後は、赤梅さん本人の定年が近いこともあり、本格的に帰農し、高冷地そ菜
を取り入れた複合経営を目指す。放牧地の規模は場所的にこれ以上拡大はできな
いことから、村内の公共牧場を利用しながら、村の環境を考えた放牧を実施し、
飼養頭数を6頭程度まで増頭する予定である。
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【放牧地(野草地)で休息中の牛】

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