熊本県/中村 秀朗
当県の畜産は、農業粗生産額では野菜に続き2番目であり、804億円、22%を占 めており、重要な基幹作目となっている。 しかしながら、当県においても、農業生産性の向上を追求する中で、化学肥料 や農薬への依存による地力の低下、畜産の規模拡大による野積み、素堀りの発生 など問題が顕在化しており、一部地域では地下水汚染の一因としても推定されて いる。 このような状況を踏まえて、平成2年度から「土づくり・減農薬運動」を推進 してきており、8年度には、農薬、化学肥料の使用総量が当初の目標である3割 削減を達成した。 また、家畜排せつ物の有機物として有効利用するため、8年6月には、県、農業 団体、試験研究機関が構成員となり、「熊本県堆肥生産利用促進協議会」を発足 させた。現在、協議会では、良質たい肥の生産を目的とした共励会、耕種地帯と の「堆きゅう肥需給協定」の締結、たい肥化技術の確立、など自然循環型農業を 確立するため、たい肥製造から流通販売までの対策を関係団体が一丸となって推 進しているところである。 特に、たい肥共励会は、9年度から実施しており、参加団体の品質は年々向上 しており、熊本県たいきゅう肥マニュアルによる判定による完熟たい肥の割合が、 初年度12%、2年目20%、3年目28%と上がっており、品質の向上とともに、耕種 地帯との堆きゅう肥需給協定の締結数も増加し、10年度実績で8,800トンの広域 流通が図られた。 また、県経済連の中に「熊本県堆肥情報管理センター」を設置しており、畜産 地帯と耕種地帯のパイプ役となり、タイムリーなたい肥情報を提供している。 今後も、21世紀に向けた本県の新しい農業の方向として、環境に優しい自然循 環型の農業を推進することとしており、農家の方々にその重要性を認識いただく とともに、家畜排せつ物の資源としての有効利用を図るためのたい肥化とその利 用のための流通体制の整備を加速的に推進していくこととしてる。