◎地域便り


地域の雇用確保と農業発展を支えて−(農)南州農場− 

企画情報部


 パートも含めれば従業員は合計で250人。「この頃は南州農場に勤めていると
いうだけでお嫁さんが来てくれるようになりまして」と顔をほころばせるのは代
表理事の本田信一さん(56)である。もちろん従業員の皆さんに問題があったは
ずもなく、要するに、大隅半島一帯ではそれほどに農事組合法人南州農場への信
頼感、親しみが高まっているということなのだ。

 一度都会に出ると、Uターンするといっても故郷で仕事を見つけるのは容易で
はない。それならば「うちで働かないか」と受け入れてきたケースが数多く、そ
れらを含めると地元出身者の比率は既に90%を超えている。

 したがって、本人だけでなく、その親御さんからも感謝されるこの上もなく頼
もしい存在となっているのが現在の南州農場だ。

 平成8年度の肥育豚の出荷頭数は6万5千頭でこのうちの10%は黒豚である。肥
育牛も350頭に達する。豚の15%、牛の全量はJA鹿児島経済連に出荷され、豚の
85%については社内で食肉処理されている。ハム・ソーセージ加工、焼豚、トン
カツなどの惣菜製造等、これらにふん尿のたい肥化を加えると、全体の事業規模
は50億円を超えている。

 豚、牛の飼養は佐多町伊座敷を本拠地に、根占町、田代町でも行われており、
高山町にはカット処理のミートセンター、さらに鹿屋市にはハム・ソーセージの
加工場があり、東京営業所を開設してから8年が経過しようとしている。

 ここまで来るにはおよそ四半世紀を要した。本田さんは富山県入善町の出身で、
実家は採卵養鶏を営んでいた。外国航路の一等航海士を長く勤めたが、脚の負傷
を機に陸に上がることを決意。「やるなら養豚」と妻子を伴って佐多町に転住し
てきた。

 昭和50年頃の同町は、過疎化が著しく進行しており、本田さん一家は温かく迎
えられた。地元の畜産農家4人の参画を得て、51年に(農)南州農場を設立。こ
の草創時に受けた地域からの理解と協力は忘れ難く、その後の事業展開でも「地
域への貢献」が常に大きなウエイトをおいてきた。

 根占町等での肉牛生産の開始も、その1つで、負債が長期固定化していた個別
経営を行政からの要望で引き受けたものだ。63年当時は牛肉の輸入自由化が決ま
り、肉牛の将来展望は明るくなかったが「豚で出した少しの余裕を回せば」と。

 地域からの信頼に応えられる、頼もしいばかりの強さである。

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【佐多町伊座敷の南州農場本場を背に】

【鹿児島特産の黒豚の畜舎で】

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