◎地域便り


豪雪の町で特産品となったフランスガモ

秋田県/企画情報部


 人口5,200余、戸数1,300戸の由利郡東由利町には黒毛和牛の繁殖農家が190戸。
平成12年度の素牛の出荷数は町全体で600頭に達し、本荘市場において平均40万
円で落札された。

 しかし農業の中心は稲作であり、畜産は複合経営化における、プラスされる側
のアイテムとして根付いてきた。

 同町一帯は国の特別豪雪地帯に指定されており、1.5メートルを超す年も珍し
くない。このため農家は冬場の所得確保に苦労してきたが、それを解決するのが
黒毛和牛の繁殖経営だった。

 金子拓雄さん(49歳)は水田12.6ヘクタールの規模で、あきたこまち、ひとめ
ぼれ等を生産している。もちろん複合化を図ったうちの一人ではあるが、金子さ
んの場合、和牛ではなくフランスガモを選んだ。

 時代が平成に入って間もない頃、「これまで秋田県内になかったもので、町の
特産物にもなる」と200羽導入した。
 投資額は1,100万円。「高級車でも買ったつもりで決断した」が幸いだったの
がグルメ・ブームの到来。現在でこそ年間3,000羽に落ち着いているが、最高時
には5,000羽相当も出荷した。

 フランスガモは鶏肉と異なり、煮上げてしまったのでは固くなる。「レアの感
覚」が調理の秘けつだが、煮て良し焼いて良し。薫製やハム、ソーセージ等にも
加工する。金子さんは現在、東由利町フランス鴨生産組合の専務。米作りの仕事
が一段落する毎年11月に種鳥を仕入れる。ふ化から成鳥となるまでには100〜120
日を要し、肉が黒ずむのを防ぐためにトウモロコシ主体の特別配合飼料を使う。
こうして3月末までフランスガモにかかり切りとなり、その後はまた稲作に戻る。

 「直接消費者へ…」が生産組合の基本方針だ。ブームを当て込んで大量生産し、
販売を流通に任せっぱなしにしたため、経営が成り立たなくなったケースを他に
数多く見てきただけに、これだけは変えられない。

 郵便局とタイアップした宅配の「薫製セット」が、薫製200グラムとソーセー
ジ1本で3,200円(消費税・郵送料込み)。「チルド・スライス」はチルド肉300
グラム入り2パックと濃縮スープ4つが入って3,500円(同)である。

 県内はもとより首都圏、さらには北海道から沖縄まで、全国各地の美食家がそ
の評判を聞いて注文を寄せる。残念だったのはカナダからのもの。原産国フラン
スの鼻を明かす絶好のチャンスだったが、検疫をクリアできそうになく、断った。

 「需要をにらみながら徐々に生産を拡大し、無理な売り込みも図らない」とす
る金子さんだが、消費者へのアプローチだけは怠らない。その1つがフランスガ
モ・ワインパーティーの開催。町の体育館には毎回200人の来場者を数える。

 町を貫く国道107号線沿いの道の駅「東由利−黄桜の里」での一番のお勧めは、
いま特産のフランスガモ料理だ。
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【ハウス内でフランスガモとともに】

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