◎地域便り


牧場に吹く風の中で畜産の将来を考える

岡山県/企画情報部


 「では牧場に行きますか…」といった黒藪光廣さん(60歳)はさりげなく黒革
のカウボーイ・ハットをかぶった。板に付いたその姿は有限会社協和養豚の代表
取締役というよりも、西部開拓時代のフロンティア・リーダーという雰囲気。特
段気取っている訳ではなく、そうしたいでたちで豚舎に行くには理由がある。

 協和養豚の飼育場のうち、1カ所は「風の村牧場」と名付けられ、周辺住民、
特に幼い子供たちには、豚、馬、ポニー、ダチョウ、鶏等の動物とふれあうこと
ができる貴重な場所となっているのだ。

 そこへ作業着に長靴というスタイルで現れたのでは子供たちもがっかりする。

 「やあ、こんにちは」と声をかける黒藪さんがカウボーイ姿ならば夢が膨らん
でも不思議ではない。

 勝田郡奈義町は津山市の東、鳥取県と境を接する中国山地の中に位置している。
戦後、国営開拓農地に入植した父から受け継いだ時の経営は母豚10頭の規模。大
阪でのサラリーマン生活を切り上げ、黒藪さんはUターンした。

 現在は母豚220頭をようし、そのうちの70頭がバークシャー種。3,200頭を肥育
生産しており、近辺の養豚家から預託された300頭も飼育している。平成12年度
の売上げは3億2,000万円で、役員3名、従業員6名が総勢。なお、経営の法人
化は昭和54年に行われている。

 病気のない、健康な豚をつくるためにプラスとなれば何でもやるのが黒藪さん
の哲学である。肉質や増体よりも衛生が第一ということだ。

 出荷時の体重は枝肉ベースで平均75キログラムを目標に調整されており、一般
の豚は大阪、姫路市場に向けられる。しかし『作州黒豚』のブランド名のバーク
シャー豚は100%が相対取り引きされていることからも、品質の高さが理解でき
るだろう。

 ところで、黒藪さんにとって気掛かりなのは養豚農家の減少傾向である。ひと
昔前までは県下78市町村のどこにいっても最低1戸は養豚農家があったが、ゼロ
という市町村も出てきている。「環境対策への設備投資額がかさめば経営が圧迫
され、こうした傾向に拍車がかかるだろう」。

 協和養豚でも、ふんについては既に発酵たい肥舎を設けるなど対応設備を整え
ているが、尿処理の浄化槽等はこれから新たに設置しなければならない。

 このように環境対策コストは畜産経営の継続、それ自体を大きくゆるがしかね
ないのである。そんな時代に「自分だけが儲かればよいとの感覚で、地域から遊
離しているようでは、経営の継続は望むべくもない」。

 それ故に「風の村牧場」は協和養豚にとっても貴重な存在なのであり、そこで
の地元住民とのふれあいを通じて、黒藪さんは新しい風を感じ取ろうとしている。
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【豚舎の中で】

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【観光牧場の全景、手前が乗馬場】

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