◎専門調査レポート


70年の歴史と伝統 大和肉鶏の復活

京都産業大学 経営学部 教授  駒井 亨

 

 




はじめに

 第2次大戦の始まる前まで奈良県は、愛知県、徳島県と並んで日本の肉用鶏の
3大産地の1つであった。その当時の奈良県の肉用鶏は、奈良県で改良された大
型の名古屋コーチンの若鶏で、その肉質が優れていたため、京都や大阪で「やま
とかしわ」として名声を博していた。

 戦後はブロイラーの生産が急増して鶏肉の消費は大きく伸長したが、往時の
「かしわ」の味を懐かしむ声も強く、奈良県では畜産試験場を中心に高品質地鶏
の開発試験研究が昭和49年から始まり、54年には新しい「やまとかしわ」用の鶏
種(3元交雑種)が確定し、数年間の実地飼育試験を経た後、57年からこの新し
い鶏種による大和肉鶏の生産が本格化した。さらに、平成4年には大和肉鶏農業
協同組合が発足し、この組合を中心として、大和肉鶏の生産、処理・加工、流通
・販売が強力に推進されている。

 大和肉鶏は10年、奈良県内産の畜産物としては初めて、奈良特産品振興協会の
奈良特産品ブランドの認定を受けている。
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【大和肉鶏の雄(右)と雌(左)】
大和肉鶏の主要関連施設所在地マップ
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大和肉鶏の歴史と伝統

 奈良県農林部畜産課の資料(大和の畜産今昔)によると、大和肉鶏の飼育は、
大正の末期から昭和の初期にかけての農村恐慌対策の一環として、鶏の飼育が奨
励されたことによって興隆したものであるという。

 当時の日本の農業は深刻な状況で、従来の主穀偏重の農業対策が強く反省され、
政府は昭和6年に「有畜農業奨励規則」を公布して、畜産の発達による農業経営
の改善を図った。

 この規則によって政府は各県に有畜農業奨励に関する専門技術員を設置すると
ともに、有畜農業の普及事業、模範施設の設置、有畜農業に関する団体の共同施
設等について補助金を交付した。

 このような施策によって奈良県では大和肉鶏の飼育が興隆し、10年代には、鶏
飼育農家数3万8,000戸(全農家戸数の60%)、採卵鶏飼育羽数26万4,000羽、肉
用鶏年間出荷羽数は169万羽に達し、奈良県の農業産出額のうち、肉用鶏は、米、
繭、麦に次いで第4位を占め、作付面積1,300ヘクタールの大和スイカを上回った。

 第2次大戦直前の奈良県の肉用鶏生産は、愛知県、徳島県と共に日本の3大肉用
鶏生産地で、その生産数量は養鶏王国愛知県をさえ凌駕するほどであった。

 奈良県内では、京都、大阪に近い旧平和村(現在の大和郡山市)が肉鶏生産の
中心地で、奈良県産業組合連合会(以下「奈良県連」という。)は郡山ふ化場を
設置して大和肉鶏の素びなの供給を図り、また京都、大阪に直販所を設けて、大
和肉鶏の出荷、販売を推進した。

 当時、大和肉鶏の生産に使用された鶏種は、名古屋コーチンにアメリカ原産の
大型兼用種ロードアイランドレッドを交配して、合成作出した大型の名古屋種で、
奈良県連の大型名古屋種として名声を博した。

 大和肉鶏はこの大型名古屋種の雄・雌を無鑑別で飼育するもので、飼育方法は、
農家の納屋(倉庫)を利用し稲わらを敷いた平面飼育で、1坪(3.3平方メートル)
当たり30羽を収容した。納屋は昼間でも薄暗いので、鶏のつつき合い(カンニバ
リズム)が発生せず、また冬暖かく夏涼しい構造のため、良質の肉鶏を出荷する
ことができた。

 出荷後の敷わら(鶏ふん)は、大和郡山特産のイチジクの肥料として大いに役
立ったという。

 大和肉鶏の飼育規模は1農家当たり1,000羽前後で、これを120日齢飼育で、年
2回出荷していた。

 出荷は、当時肉鶏の出荷を生業としていた産地仲買人(トリヤまたは棒手振り
と呼ばれていた)が農家を回って集荷し、国鉄(現JR)関西線の大和小泉駅から
生体のまま竹カゴにつめて京阪神へ出荷した。

 大阪の食鳥問屋(たとえば鳥芳)は、三輪トラック4台を所有して、直接大和
郡山の産地に出向いて肉鶏を集荷した。

 大和肉鶏の飼料は、トウモロコシと当時豊富であった胴ニシン(乾燥ニシン)
を主とする高たんぱく高カロリー飼料であった。

 このように、昭和初期(第2次大戦前)の奈良県の肉鶏(やまとかしわ)は、
その生産規模、使用鶏種、飼育方法、飼料、出荷、販売など当時としては極めて
合理的で充実した一大産業であったことが分かる。

 大阪、京都という二大消費地に隣接した奈良県北、中部の食料(農畜産物)生
産・供給地としての優位は今も昔と変わりはなく、往時の大和肉鶏の復活を期待
するのは当然のことではないだろうか。


大和肉鶏用鶏種の造成

 奈良県畜産試験場は、やまとかしわの復活と県内の肉用鶏生産農家の育成を目
的として、昭和49年に各種の鶏種の交配試験に着手した(大和肉鶏造成試験)。

 大和肉鶏用の交雑種として作出、試験されたのは次の6種類の交配から生まれ
た4元交雑種(@AB)と3元交雑種(CDE)であった。

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 よく知られているように、シャモは江戸時代にタイから日本に渡来し、闘争性
が強いことから、闘鶏用に全国で広く飼育された大型鶏であり、名古屋種は、愛
知県で、明治時代に、中国から渡来(江戸時代末)していたコーチンと地鶏との
交雑から作出され、大正時代に改良固定された卵肉兼用種で、成鶏の生体重は、
雄3キログラム、雌2.4キログラムである。

 ロードアイランドレッドは、アメリカ東海岸のロードアイランド州で古くから
農家の実用鶏として飼われていた在来鶏に褐色レグホーンなどを交雑して改良作
出した卵肉兼用種で、成鶏の生体重は、雄3.7キログラム、雌2.8キログラムであ
る。

 ニューハンプシャーは、ロードアイランドレッドから、羽色が淡色で、発育の
速い系統を分離して改良作出した新鶏種(1935年アメリカの家禽標準に登録)で、
その成鶏の生体重は、雄3.8キログラム、雌2.9キログラムで、ロードアイランド
レッドよりやや大型である(図1、図2参照)。
◇図1◇ ◇図2◇
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【昭和20年代から奈良県畜産試験場で純粋繁殖されているニューハンプシャー
の雄(図1)と雌(図2)。(大和肉鶏の母方の原種として使用されている)】

 奈良県畜産試験場では、上述の6種類の交雑種について、発育試験および肉味
の官能試験を重ねた結果、Cの組み合わせ、すなわち、

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が肉用鶏として最もすぐれているとして、これを大和肉鶏として実用化すること
とし、54年から奈良県内農家での飼育試験を開始し、3年間の実地試験を経た後、
57年に、生産者、ふ化業者、処理・販売業者および飼料業者を統合した「大和肉
鶏普及協会」が発足して、大和肉鶏の生産・販売が本格化することとなった。

 なお上記の交雑種(大和肉鶏)の作出に使用されるニューハンプシャーは、奈
良県畜産試験場で20年代から純粋繁殖されている閉鎖系統で、今日ではアメリカ
にも残存していないと思われる貴重な遺伝資源であり、また同じく大和肉鶏の作
出に使用される名古屋種は愛知県から導入した純粋種であり、大型シャモは奈良
県畜産試験場で育成された純粋種である(図3参照)。
◇図3◇
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【奈良県畜産試験場で育成されているシャモ
(大和肉鶏の父親として使用される)】
◇図4◇
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【奈良県畜産試験場玄関前。右から吉岡
豊中小家畜課長、鵜野保総括研究員、小
城俊雄場長、筆者、農畜産業振興事業団
小田垣諭司係長】

大和肉鶏の能力と肉質

 上述の経緯で作出された大和肉鶏は、ブロイラー専用鶏種の平均出荷生体重
(50〜55日齢で雄・雌平均2.7〜2.8キログラム)に達するのに2倍以上の日数を
要するが、その代わり、肉のキメが細かく、旨味成分も多いことが確認されてお
り、脂肪の蓄積が少なく、肉色が濃い(赤味を帯びている)のが特色である。

 表1は、大和肉鶏の発育と飼料要求率の試験成績であり、また表2は、大和肉鶏
とブロイラーの旨味成分を比較した結果である。

表1 大和肉鶏の発育と飼料要求率
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 資料:奈良県農林部畜産課

表2 大和肉鶏とブロイラーの旨味成分比較(と殺後15時間)
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 資料:奈良県農林部畜産課

 大和肉鶏は、販売に適したマーケット・サイズ(出荷重量)に育てるため、1
25〜140日齢まで長期飼育されており、この長期飼育によって適度の歯ごた
えと赤味のある肉色、往年のやまとかしわの味が得られるという。


大和肉鶏の生産者と生産経営

 奈良県農林部畜産課によると、平成11年3月31日現在、奈良県内の肉用鶏飼育
農家は23戸で、そのうち大和肉鶏飼育農家は12戸であった。10年の肉用鶏の生産
額は3億3,800万円で、そのうち1億1,300万円は大和肉鶏の生産額(出荷羽数8万
5,000羽)であった。

 大和肉鶏生産農家は4年、大和肉鶏農業協同組合を組織し(組合長出口清一氏)、
その本部を奈良市高畑町の農業振興会館内に置いている。

 大和肉鶏生産者は県北部と中部に分散しているが、県北部の京都府に近い奈良
市阪原町のモズメ養鶏場(物集女和夫氏)は、山の斜面高台に1棟で1,600 羽収
容の鶏舎(約60坪)6棟を建て(図4参照)、年間2回転で、約2万羽の大和肉鶏を
出荷している。
◇図5◇
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【奈良市阪原町の山中に建てられた大和
肉鶏飼育鶏舎(モズメ養鶏場、1棟60
坪で、1,600羽収容の鶏舎が6棟あり、
年間2万羽の大和肉鶏を生産している。)】
◇図6◇
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【モズメ養鶏場主物集女和夫氏(左から
2人目)大和肉鶏農業協同組合長出口清
一氏(右から2人目)、奈良県畜産農業
協同組合連合会加藤守氏(左端)と筆者
(右端)】
 飼料はブロイラー用の飼料を使用し、20日齢まで前期用、100日齢まで後期用
を給与し、その後出荷までは仕上げ用飼料を給与している。

 大和肉鶏はシャモの交雑種であるため、闘争性が強く、鶏舎はウインドウレス
(窓なし)で、薄暗くして飼育している。

 大和肉鶏農業協同組合の組合長出口清一氏も奈良県吉野郡大淀町で年間約2万
羽の大和肉鶏を生産しているが、鶏舎はやはりウインドウレスで、鶏舎内は薄暗
くしてある。

 鶏舎の飼育密度は1坪当たり25羽前後で、1室(群)の飼育羽数は800羽前後と
している。

 大和肉鶏は飼育期間が長いため、床面の乾燥を保つこと、コクシジウム症を予
防すること、鶏同士のつつき合いなどによる損傷を防ぐことが肝要である。外傷
のある生体はキズものとして正常鶏の半値でしか売れない。

 大和肉鶏はその飼育に細心の注意を要するため、給餌は手作業で行い、鶏舎内
の観察もひんぱんに行う。

 大和肉鶏安定供給体制整備地域検討委員会の「大和肉鶏飼育管理ガイドライン」
(11年2月)によると、大和肉鶏1羽当たりの飼育収支は表3のとおりであると
いう。この資料によると、大和肉鶏1羽当たりの生産者の所得(労働報酬)は3
63円で、従って年間2万羽を出荷する生産者は年間約730万円の所得を得ること
ができる。

表3 大和肉鶏生産収支計算
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 前出、物集女氏によると、生産者自身で処理場まで運搬(1回に約200羽)して、
生体(正常鶏)1キログラム当たりの生産者価格は495円であるという。

 大和肉鶏の初生ひなは、奈良県畜産試験場で作出されている。育成した名古屋
種雄×ニューハンプシャー種雌の1代雑種(F1)雌とシャモ種雄を奈良市矢田原
町の株式会社竹内孵卵場(代表取締役鈴木捷氏)の種鶏場で飼育し、生産された
種卵をふ化して大和肉鶏生産者に販売する(種鶏は年間2回導入する)。

 鈴木氏によると、F1雌の採種期間は30週齢から55週齢まで、175日間で、その
間の平均産卵率は60%、種卵のふ化率(対入卵)は73%であるという。

 F1雌は就巣性が強いため種卵の生産コストが高い。

 現在大和肉鶏用の初生ひな(無鑑別)年間約10万羽を生産しているが、孵卵場
の経営上は年間20万羽の販売が望ましいという。竹内孵卵場では採卵用の初生ひ
な(ハイライン)も生産・販売している。


大和肉鶏の処理加工と販売

 前述のように、大和肉鶏農業協同組合では、現在年間8万5,000羽の大和肉鶏を
生産しているが、その処理・加工は奈良県中部、大淀町の有限会社フード三愛と
奈良市佐紀町の奈良パンタード株式会社の2カ所の処理場で行っており、製品
(と体、解体品、加工品)はこの2社が販売している。

 大和肉鶏の流通形態は、と体および解体品(正肉など)で、と体の卸売価格は
1キログラム当たり720円、また正肉の卸売価格は1キログラム当たり2,000円であ
る。

 解体品のうち、むね肉は売り難いので、4年度以降、社団法人日本食鳥協会の
国産鶏肉新規需要開発事業の補助を受けて、約17品目の加工品を開発し販売して
おり、毎年3〜4品目を継続して開発中である。

 大和肉鶏は、10年に県内の畜産物としては初めて、奈良特産品振興協会の奈良
特産品ブランドの認定を受けている。

 大和肉鶏農業協同組合を中心とする大和肉鶏の生産、処理・加工、流通・販売
体制は図7のとおりで、その製品は奈良県内の畜産物直売所「ならショップ」で
販売されているほか、奈良県内の小売店、飲食店などに販売拠点を拡大している。

 奈良県外へは上記販売会社(フード三愛および奈良パンタード)が大阪、京都、
東京の食鳥問屋、卸売会社、小売店、百貨店、料亭、レストランなどへ販売して
いる。

 大和肉鶏農業協同組合の組合長出口清一氏は、自身でも奈良県橿原市で、大和
肉鶏を使用した高級焼き鳥店を経営して、大和肉鶏の消費宣伝に努力している。

◇図7:大和肉鶏の生産・流通・販売体制◇
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阪急百貨店(鳥芳)での地鶏肉販売

 大阪市内最大のターミナルである梅田の中心に位置する阪急百貨店(本店)の
地下食料品売場に大きなスペースを取って出店している株式会社鳥芳(本社:大
阪市福島区野田、会長井元弘氏)は日本最大の食鳥専門小売店として知られ、常
時、多種類の地鶏肉、銘柄鶏肉を販売している(図8参照)。
◇図8◇
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【大阪・梅田・阪急百貨店の地下食料品
売場に広いスペースを持つ樺ケ芳の鶏肉
(生鮮品)販売】
◇図9◇
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【樺ケ芳会長井元弘氏(右)と筆者(左)】
 この株式会社鳥芳(以下鳥芳と略)と奈良県の肉用鶏の取引の歴史は古く昭和
初期にまでさかのぼり、当時、奈良県大和郡山周辺で生産されていた肉用鶏(生
鳥)を小型トラック4台を使って1日50貫(187キログラム)〜100貫(375キログ
ラム)を大阪市南部の難波新地にあった鳥芳本店へ集荷し、店員(作業員)60人
を使って処理・解体していたという。ここで処理解体した食鶏は梅田の阪急百貨
店へ搬送し、食品売場で生鮮鶏肉を販売すると同時に、阪急百貨店食堂での食材
として大量に使用された。

 阪急電鉄の創業者小林一三氏は阪急百貨店大食堂で使用し、かつ、加工品とし
て販売する食材を各地に求めたが、食鶏については、大阪に近い奈良の肉用鶏に
着目し、阪急の名物料理となったチキンカレーを創作し、また奈良県(吉野)に
多い桜の木を使ったくん製チキンを製造販売した。

 阪急百貨店向けの肉用鶏の生産・供給は第2次大戦後も継続し、昭和20年代、
鳥芳では奈良県産の肉用鶏を週2回、1回約700羽集荷していたという。

 当時阪急百貨店では26種類の鶏肉加工品を販売していた。

 さて、鳥芳での地鶏肉販売の現況だが、鳥芳会長井元弘氏から提供された資料
によると、主要地鶏肉の取扱量は表4のとおりで、地鶏肉の中では大和肉鶏の取
扱量が群を抜いて多い。阪急百貨店・梅田本店を含む小売店舗全店舗での鳥芳の
大和肉鶏取扱量は約31トン(11年、と体重量)で、これは奈良県の大和肉鶏総生
産量の約15%に相当する。

表4 阪急百貨店本店(大阪市・梅田)での地鶏肉取扱数量
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 資料:株式会社鳥芳会長井元弘氏提供
  注:11年1月〜12月の取扱実績

 鳥芳では地鶏は全部生鮮と体で仕入れ、これを店内で解体して販売している。
と殺処理後の経過時間は産地によって異なるが、いずれも前日処理されて低温輸
送されたと体であるため、よく熟成していて鶏肉は鮮度が良く、しかも硬くない。

 阪急百貨店(鳥芳)での地鶏肉の小売価格(店頭表示、100グラム当たり、12
年12月6日現在)は次のとおりであった。

  比内地鶏(正肉)      580円
  大和肉鶏(もも肉)     380円
  名古屋コーチン(正肉)   380円
  さつま若しゃも(正肉)   280円
  はかた地鶏(もも肉)    400円
  阿波尾鶏(もも肉)     380円
  阿波尾鶏(むね肉)     280円

 なお、鳥芳では大阪市内の自社直営工場で多種多様な鶏肉の加工、調理品を製
造し、阪急百貨店地下食料品売場で販売している(図10、図11参照)。
◇図10◇
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【大阪・梅田・阪急百貨店・地下食料品
売場の樺ケ芳の鶏肉調整品販売】
◇図11◇
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【大阪・梅田・阪急百貨店・地下食料品
売場の樺ケ芳の焼き鳥販売】

おわりに

 阪急百貨店(大阪・梅田)食料品売場での鳥芳の生鮮鶏肉販売実績を見ても分
かるように、地鶏肉の価格は一般鶏肉(ブロイラー)の約4倍であるが、それに
もかかわらず、地鶏肉の販売シェアは全鶏肉取扱数量の27%をも占める。しかし、
これは日本中で最も繁華で、高所得購買層および高品質鶏肉選好層が厚いと思わ
れる特定の小売店(地鶏肉販売に特に注力している専門小売店)での販売実績で
あって、これを全国に一般化して期待できるものではない。

 実際、総務庁の家計調査年報(平成11年1月〜12月)で見ても、1世帯当たり年
間鶏肉購入金額と年間鶏肉購入数量から割り出した、鶏肉の平均小売価格を比較
してみても、鶏肉100グラム当たりの小売価格は全国平均の95円に比べて、東京
都区部は104円、京都市114円、大阪市117円、神戸市111円と、京・阪・神が飛び
抜けて高い。つまり京・阪・神は全国的に見て、高品質鶏肉の需要が最も多い消
費地であって、ここを販売基盤とする大和肉鶏は極めて有利な立場にあると言え
る。

 しかし、他の産地で生産された地鶏肉も高速道路および低温輸送手段の発達に
助けられて大消費地に集中してくるから、類似商品間の競争はますます激化する。

 高品質鶏肉は内食需要が主体とは言うものの、今後は、外食や中食のシェアが
ますます高まる傾向が明白であるから、高価格の地鶏肉をいかに広く、継続的に
外食・中食業界にも売り込むかが、各地鶏銘柄の消長を決定することになろう。
こうしたキメ細かな営業努力は、生産者組織だけの力ではとても及ぶところでは
なく、結局、鶏肉の荷受会社、卸売業者、業務用納入業者、問屋、小売業者など
の協力を獲得するための努力と広報活動が地鶏肉販売拡大の決め手になるのでは
ないか。

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