★ 事業団から


-「指定助成対象事業」の優良事例- 
家畜市場機能高度化 緊急対策事業について

食肉生産流通部・宮城県産業経済部畜産課


 
 

はじめに

 家畜市場は、公正な家畜取引及び適正な価格形成を確保する場として、わが国
畜産の振興に大きな役割を果たしているが、近年、家畜流通のより一層の効率化
および近代化を図るため、再編整備による機能強化を進めており、その大型化が
進んでいる。

 しかしながら、家畜市場の大型化の進展により、そこから大量に排出される家
畜ふん尿の処理問題、複数畜種を取り扱うことによる家畜疾病等の衛生問題、さ
らには周辺住民に対する景観への配慮等の問題が生じている。

 一方、山間地や離島等の条件不利地域にある家畜市場は、地理的な条件から再
編整備や移転等が困難であるため、その機能強化が図れない状況にある。

 このため、農畜産業振興事業団は、農水省の指導の下で、平成10年度から指定
助成対象事業として、一定規模(年間の取引頭数が牛換算でおおむね3,000頭以
上(条件不利地域等にあってはおおむね1,500頭以上)になることが見込まれる)
の家畜市場が行う施設整備に対し助成を行っている。助成は、@家畜市場の環境
対策(たい肥化施設、浄化処理施設等の整備)、A衛生対策(車輌等消毒施設等
の整備)、B周辺住民への景観対策(景観美化施設等の整備)、C周辺地域の畜
産振興対策(地域の畜産振興に必要な畜産物展示施設等の整備)、およびD家畜
市場の機能強化対策(セリ・システム等家畜市場の機能強化のための施設の整備)
を図るための事業を対象としている。

 事業を実施した家畜市場は、10〜12年度までで延べ31カ所、13年度に事業を予
定している家畜市場は15カ所と、年々この助成事業を通じて整備する家畜市場が
増えており、家畜市場の機能強化が着実に図られている。

 ついては、優良な事例として当事業団が10年度に助成を行った「みやぎ総合家
畜市場」を紹介する。

(食肉生産流通部)


みやぎ総合家畜市場の整備

はじめに

 宮城県には13カ所に産地家畜市場があったが、いずれも老朽化が著しく、駐車
場も狭く、広域・高速・大量流通化の現代では十分な対応が困難になり、和牛子
牛を中心とした長期滞在購買型市場の施設整備が求められていた。

 そのため、近代的機能を有する施設に再編整備し、取引規模拡大・多数の購買
者の確保・適正な価格形成を図るため、全国農業協同組合連合会宮城県本部が事
業主体となり、国の事業および農畜産業振興事業団指定助成対象事業等を活用し、
11年4月、宮城県遠田郡子牛田町に統合家畜市場である「みやぎ総合家畜市場」
が開設された。


機能整備の効果

 みやぎ総合家畜市場は、大別するとセリ場・事務室のある売場棟は国の「家畜
市場近代化総合整備事業」(9〜10年度)、売場棟以外の市場設備・機械は農畜
産業振興事業団指定助成対象事業の「家畜市場機能高度化緊急対策事業」(10年
度)を活用し整備した。

 「家畜市場機能高度化緊急対策事業」により機能強化した点を中心に、みやぎ
総合家畜市場の機能整備の主な効果を紹介する。

1 スムーズな牛の移動

 つなぎ場棟、購入後の一時けい養舎棟を分け、その中間にセリ場を設置したこ
とで、牛の移動を一定方向だけのスムーズなものにした。

2 家畜誘導レールにより事故防止

 つなぎ場からセリ場へは、上部に家畜誘導レールを設け、牛の移動作業(特に
力のない高齢者・女性)を助けて、生産者の事故防止にもつながっている。

3 生産者の拘束時間の大幅短縮

 牛衡器をつなぎ場からセリ場に入る直前に設置し、体重測定をセリ直前に行い、
購入後のけい養舎を購入者毎に割り振ったことにより、これまで早朝に搬入し、
午後のセリ終了まで拘束されていた生産者が、購買者の下見の時間までに搬入し、
セリ終了後はけい養舎に移動すれば帰宅可能になり、大幅に拘束時間が短縮され
た。

4 購買者の利便性の向上

 4日間連続で開かれる子牛市場に合わせて、購買者はけい養舎を最長3泊まで
利用でき、一カ所の市場で移動することなく、宮城県内全域の子牛を購入できる。

5 広い駐車場で混雑緩和

 従来の市場では駐車場が狭く、生産者や購買者のトラック等の往来で家畜の搬
出入が滞ることもあったが、駐車場を広くし(35,169平方メートル、大型・中型
・小型の合計802台駐車可能)、スムーズに搬入・搬出ができるようになった。

6 電光掲示板設置による混雑緩和

 セリ場の混雑緩和のために電光掲示板をつなぎ場およびけい養舎に、モニター
テレビを生産者控室に備え、セリ場外からでもセリの様子がわかるようになった。


おわりに

 13カ所の市場を再編整備した当初、生産者は輸送距離が増えるなどの問題を抱
えていたが、農協の輸送面の協力や近代的な市場機能による拘束時間短縮など、
市場主催者の生産者に配慮した運営により、従来より生産者の負担は減少してい
ると思われる。

 また、開設当初は、購買者に戸惑いも見られたが、時間が経つにつれて、県内
外の購買者も定着し、年間に黒毛和牛子牛で約2万頭(うち県外購買者42%)の
取引があった。価格も統合前の10年度は子牛平均価格で39万円であったのが、開
設初年度の11年度で39万5,000円、2年目の12年度には41万1,000円と順調に推
移している。

 開設後2年が経過し、近代的かつ衛生的な施設を完備したみやぎ総合家畜市場
は、県内の生産農家および県内外の購買者からも親しまれる市場になったと思わ
れる。

 今後も施設の有効活用が図られ、県内畜産の基幹施設としての益々の発展が望
まれる。


〈参考〉

◆事業の概要


◆主要施設の概要(総敷地面積101,116u)


◆みやぎ総合家畜市場取引実績(12年度)

【事務所正面】

    

    
【せり場内(購買者席側より)】

    

    
【牛つなぎ場】

    

    
【誘導レール】

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