◎地域便り


科学性と安全性を追求する採卵経営

富山県/企画情報部


 1日5,300キログラムの鶏卵を生産する有限会社仁光園ではその4分の1をオ
リジナル・ブランドで出荷しており、それだけに営業販売促進には力が入る。こ
の日は地元ラジオ局の生放送に代表取締役の島哲雄さん(59歳)が自ら出演。ス
ーパーに集まった消費者にゆで卵を振る舞ってPR活動を展開した。

 同社の発祥、そして現在も本拠を置くのは高岡市だが、生産の主体は小矢部市
に移されている。その合計の規模は成鶏だけで12万羽。ジュリア鶏が90%を占め、
ポリスブラウン鶏も飼養している。

 育雛期間は90日間で年8回え付けするのは「平均的な生産量とサイズを維持す
るため」の工夫だ。

 父の代までは孵化を専門にしていたが、昭和39年採卵養鶏一本に転じた。この
年には島さん自身が米国カリフォルニア州に研修留学。仁光園の新たな飛躍はこ
の年に始まったのである。

 1カ所で100万羽を飼養する経営規模には度肝を抜かれたが、それよりも今日
にまで島さんの中に生き続けているのはその合理性。科学的裏付けのある養鶏、
カンだけに頼らない農業経営をユダヤ系の経営者からたたき込まれた。1ドル=
360円の時代で、ちょうど東京オリンピックが開催された頃である。米国に行け
ること自体に感激したし、その体験は人生に少なからぬ影響を及ぼしてきた。

 これが反映されているのだろうか、小矢部の農場内には独自の衛生管理、検査
設備も所有している。また、「少々コストが上がっても仕方がない」とサルモネ
ラ・フリーのために、孵化業者に個別検査も要請しているほどだ。

 そうしたコストが価格に転嫁されれば問題ないが、そうはいかない。食品企業
等の納入に当たっては安全性についての付加価値への評価をアピールしても、相
手の買付量は膨大。仁光園だけが基準を上回っても、全体の一部でしかないとし
て認めてもらえないのは残念なことだ。

 欧州ではケージ飼いを禁止する動きも出ている。安全性を確保するとなるとど
うしても避けて通れないのが飼育密度の問題であり、これを下げないことにはも
う1つの国際競争は克服できないだろう。

 農場全体の清浄度を最大限高めようとする島さんの信念は「意識の高い一部の
スーパー関係者から評価されており、これが厳しい状況の中にあって勇気づけて
くれる」。

 環境対策強化への対応も怠りなく、火力とビニールハウスの活用で乾燥させた
鶏ふん肥料は県内の数多くの水稲農家に納入されている。
【小矢部農場の鶏舎内】

    
【小矢部農場の衛生管理・検査施設で】

元のページに戻る