★ 農林水産省から


牛海綿状脳症対策基本計画について

生産局 畜産部 衛生課 荻窪 恭明



趣 旨

 去る7月30日、牛海綿状脳症対策特別措置法に基づく「牛海綿状脳症対策基本計
画」が策定された。

 牛海綿状脳症対策基本計画は、6月14日に公布された牛海綿状脳症対策特別措置
法第4条の規定に基づき、BSEの患畜が確認された場合またはその疑いがあると認
められた場合において国や都道府県が講ずべき措置に関する基本的な計画として、
農林水産大臣および厚生労働大臣が策定したものである。国や都道府県は、この
計画に基づき、すみやかにまん延防止対策等を講ずることとされている。

 以下、その概要を紹介する。なお、この基本計画の全文については農林水産省
のホームページ(http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20020730press_5.htm
)でご覧下さい。


概 要


対応措置に関する基本方針

 OIE(国際獣疫事務局)は、BSE清浄国の条件として、

@ 国内産牛におけるBSEの最終発生から少なくとも7年以上経過していること

A 少なくとも8年間は肉骨粉等の反すう動物への投与が禁止され、この禁止措置
  が効果的に実施されていること
  
等を掲げており、BSE清浄国へ復帰するためには、これらを満たす必要がある。

 わが国としては、昨年10月18日から、と畜場におけるBSE全頭検査や特定部位の
除去・焼却を実施し、安全な牛からのもの以外は一切市場に出回ることのないシ
ステムを確立し、また、肉骨粉を含む家畜用飼料の製造、販売および家畜への給
与を禁止し、BSEの感染経路を遮断した。

 わが国としては、BSE清浄国への復帰を図るため、これらの体制を今後とも維持
し、「リスク分析」の考え方に基づいた的確な対応措置を実施することとしてい
る。


計画の期間

 計画期間は、当面、平成14年度から平成18年度までの5年間とし、情勢の変化等
を踏まえ、必要に応じ見直し・変更することとしている。


BSEのまん延防止のための措置に関する事項

1 BSEの患畜の確認までの措置として、まず、農場段階においては、牛の所有者、
 獣医師等によるBSEを疑う牛や24カ月齢以上の死亡牛の届出、BSE検査の実施、死
 亡牛の検査体制の整備等を行うこととしている。
 
    なお、死亡牛検査については、都道府県は、原則として、平成15年4月1日か
  ら、24カ月齢以上の死亡牛全頭についてBSE検査を行うものとするが、それまで
  の間においても可能な限りBSE検査を実施することとしている。また、特別措置
  法第6条第2項のただし書に該当する場合であっても、平成16年3月31日までに、
  24カ月齢以上の死亡牛全頭についてBSE検査が行える体制を整備するよう努める
  ものとし、それまでの間においても可能な限りBSE検査を実施することとしてい
  る。
  
  また、と畜場段階においては、と殺解体の禁止、BSE検査の実施、BSE検査へ
  の技術的支援を実施することとしている。

  さらに、その他の措置として、死亡牛全頭の検査が行える体制が整備される
  までの間にあっては、検査を受けていない牛の死体について適正に処理するこ
  ととしている。

2 BSEの患畜が確認された場合の措置として、患畜の死体および汚染物品の焼却
 等、発生農場等における同居牛の移動の制限・飼養状況等の把握、疑似患畜の特
 定およびBSE検査・焼却処分の実施、感染源・感染経路の究明を行うこととして
 いる。


正確な情報の伝達に関する事項

1 BSEの患畜が確認された場合には、当該患畜に関する情報について、プレスリ
 リース、ホームページ等を通じて適切に公表することとしている。その際には、
 当該牛に関連する地域において、発生農家のプライバシーに配慮しつつ、過剰な
 取材を行わないよう報道機関等に協力を要請することとしている。

2 また、BSE検査の実績、BSEに関する基礎的知識、牛肉等の安全確保対策等のB
 SEに関する正しい知識を普及することとしている。


関係行政機関および地方公共団体の協力に関する事項

 人員の確保、専門家の派遣、防疫資材の確保等、関係府省間の協力、地方公共
団体への協力等を行うこととしている。


その他対応措置に関する重要事項


1 BSEの発生防止のための措置   

  的確な輸入検疫を実施するとともに、肉骨粉を含む家畜用飼料の製造、販売
  および家畜への給与禁止に係る措置が有効に実施されていることを監視するこ
  ととしている。
  
  また、牛の肉骨粉を含む肥料については、その使用、製造または販売に関し、
  必要な規制措置を講ずるものとし、その措置が有効に実施されていることを監
  視することとしている。


2 肉骨粉の処理等に関する措置

  牛の肉骨粉の適正な保管および焼却等を推進するとともに、死亡牛の焼却施
  設または死亡牛由来の肉骨粉の製造・焼却施設が整備され、かつ、適切な処理
  が行われるよう努めることとしている。


3 畜産副産物の区分処理等に関する措置

  畜産副産物の有効利用を図るため、畜産副産物を原料段階で畜種別等に区分
  して化製処理を行う体制の整備に努めることとしている。


4 畜産農家、関係業者等の経営安定に関する措置   

  BSEの発生に伴う牛肉価格の低下等により経営が不安定になっている牛の生産
  者、牛肉に係る製造、加工、流通または販売の事業を行う者、飲食店営業者等
  に対し、その経営の安定を図るために必要な措置を実施することとしている。


○ 牛海綿状脳症対策特別措置法について


1 目的

    BSEの発生予防、まん延防止のための特別措置を定めること等により、安全な
  牛肉の安定的な供給体制を確立し、もって国民の健康保護および生産者、関連
  事業者等の健全な発展を図ることを目的とする。


2 法律に基づく主な措置


(1)基本計画

    農林水産省と厚生労働省は、BSEの患畜が確認された場合において講ずべき措
  置等を定めた基本計画(計画期間5年)を策定。


(2)死亡牛の検査

    農林水産省令で定める月齢(24カ月齢)以上の死亡牛の届出を義務付けると
  ともに、これらのBSE検査を原則として平成15年度から実施。
  
  地理的条件等により検査を行うことが困難であるとして農林水産省令で定め
  る場合は適用の例外とするが、基本計画により平成16年3月末までに体制整備に
  努めることとした。


3 死亡牛検査体制のための平成15年度予算要求の内容


    24カ月齢以上の死亡牛全頭のBSE検査に必要な検査材料採取施設、冷蔵保管施
  設、検査後の死亡牛の焼却施設等の整備等を実施。
  
  また、家畜伝染病予防法に基づき負担する経費のうち、死亡牛のBSE検査に必
  要な検査キットの購入費等を支援。


 法律のポイント

(参考附表)
                                            平成14年度BSE関連対策の主要な施策

                                                                                                                                 平成14年 7月
                                                                                                                                    農林水産省
                                                                             

1.わが国におけるBSEの清浄化                                      2億円
(その他 35億円)
 牛海綿状脳症の検査体制の整備                                      2億円
  死亡牛の検査頭数の増加等、生産段階におけるサーベイランスを強化するための検査体制の整備。
  食肉衛生検査所におけるスクリーニング検査キット備品およびプリオン検査備品への助成、BSE確認検査およびと畜検査員に対する技術研修の実施。

2.食肉に対する安全・安心の確保                                  48億円
(その他 5億円)
(1)BSEに関する知識の普及、安全性のPR                                 30億円
国産牛肉等の安全性のPR、BSEの正しい知識の普及活動、消費拡大キャンペーンの実施および地域イベントに対する助成。

(2)牛肉のトレーサビリティ・システムの確立                              10億円
家畜個体識別システムの円滑な運用、飼養管理情報の管理システム等の構築、牛の給与飼料履歴情報等の提供の推進およびと畜場から消費者まで生産履歴情報の伝達・提供。

(3)BSE新検査体制に対応した食肉処理体制の整備                            8億円
 (その他 5億円)
食肉センター等における可食内臓等の区分管理、特定危険部位(SRM)の焼却処理のための施設整備への助成。
と畜場における特定危険部位の処理等に必要な設備整備への助成。

3.農家・関係事業者の経営安定                                    1,787億円

(1)農家経営対策                                         1,607億円

 @ 牛枝肉価格の安定                                        38億円
   枝肉価格が安定基準価格(省令価格: 780円/kg)を下回った場合、生産者団体等が行う調整保管を支援。

 A 肉用牛肥育経営への緊急支援                                    976億円

  ア 肉用牛肥育経営の所得低下時において、都道府県毎に積み立てた基金から家族労働費を1月毎に補てん。(マル緊事業)

  イ 肥育牛1頭当たりの粗収益が、家族労働費を除いた生産費(物財 費相当)を下回った場合に、その差額(赤字)を1月毎に補てん。(BSEマル緊事業)

 B 肉用子牛生産者の経営の安定                                    411億円
肉用子牛の平均売買価格が保証基準価格(黒毛和種で30.4万円、褐毛和種28万円、その他肉専用種20万円、乳用種13.1万
円、交雑種17.5万円)を下回った場合に、肉用子牛の生産者に対して補給金を1月毎(従来は3カ月毎)に交付。

 C 肉専用種繁殖経営の安定                                      178億円
   肉専用種子牛の平均売買価格が発動基準(黒毛和種で35万円、褐毛和種32万円、その他肉専用種23万円)を下回った場合に、肉専用種繁殖経営に対して奨励金を1月毎(従来は3カ月毎)に交付。
  (飼養規模の増減に関係なく拡大者と同額の助成金を交付する特例措置を継続)

 D BSE発生農家等への支援                                       4億円
   生乳生産者団体が行う酪農互助システムの推進、BSE発生農家に対する代替牛導入や経営継続に要する経費についての助成。
   当該地域への影響、態様等に応じた必要な支援。

(2)農家、食肉販売業者等に対する緊急融資

 @ 運転資金(BSE対応資金)の融通                            融資枠    1,194億円
 生産者、卸売業者、小売業者、食肉加工業者、レンダリング業者等に対する運転資金を融通。(貸付利率1.50%以内(7月5日現在)、償還期限2年以内)

 A BSE対応資金の債務保証
   BSE対応資金の生産者への円滑な融通のため、農業信用基金協会が無担保・無保証人で行う債務保証を支援。

 B 中堅外食事業者に対する債務保証(既措置)                         保証枠    90億円
   焼肉店等中堅外食事業者が、運転資金の借入に対し無担保保証を受けることができるよう、債務保証制度を措置。

  食肉販売業者等向けに対しては、信用保証協会(中小企業庁)が行う中小企業者向けの信用保証制度、政府系中小企業金融関係3機関から運転資金を別枠で貸付ける制度が利用可能。

(3)廃用牛の計画的な出荷および適正な処理の推進(既措置)                        167億円
農協等が行う廃用牛の買い上げ、一時的な集約管理、計画的な出荷、食肉の調整保管、需要量を超過する食肉の適正な処分の
推進に対する助成。


4.畜産副産物等の適切処理の推進                                  230億円

(1)肉骨粉の適正な処分の推進                                    169億円
取引が困難となった肉骨粉等の焼却処理の推進。

(2)安全な肉骨粉の供給体制の整備                                    41億円
豚・鶏由来原料や死亡牛を分別処理できるレンダリング施設や、国産基準に適合した高度滅菌処理施設の整備等の推進。

(3)死亡牛の適切な検査・処理の推進                                   20億円
死亡牛のBSE検査費用の助成、適切な処理の推進のための取組への支援、一時保管のための施設整備への助成。

元のページに戻る