★ 農林水産省から


牛海綿状脳症対策特別措置法について

生産局 畜産部 畜産企画課 葛谷 好弘(現 生産局 総務課)


 平成13年9月、わが国で初めて牛海綿状脳症(以下「BSE」という。)の発生が
確認され、牛肉消費の冷え込み、牛肉価格の低迷といった状況が生じた。この間、
農林水産省としては、BSEのまん延の防止、安全な牛肉しか出回らないシステムの
確立、生産者・食肉関係事業者の経営安定等の諸般の対策を講じてきた。一方、
「BSE問題に関する調査検討委員会」の報告を踏まえ、食の安全・安心を確立す
るため、「食」と「農」の再生を目指した政策の抜本的な改革に取り組むことが
喫緊の課題となっている。 

 このような状況の下、BSEの発生を予防し、およびまん延を防止するための特
別の措置を定めること等により、安全な牛肉を安定的に供給する体制を確立し、
もって国民の健康の保護並びに肉用牛生産および酪農等の健全な発展を図ること
が必要であると立法府で判断された。このため、与野党協調の下、平成14年5月3
0日に農林水産委員長提案(議員立法)として「牛海綿状脳症対策特別措置法案」
が衆議院に提出され、国会内での手続きを経て6月7日に同法案が成立し、「牛海
綿状脳症対策特別措置法(平成14年法律第70号。以下「法」という。)」が、平
成14年6月14日に公布、平成14年7月4日に施行された。  

目的

  この法律は、牛海綿状脳症(BSE)の発生を予防し、およびまん延を防止する
 ための特別の措置を定めること等により、安全な牛肉を安定的に供給する体制
 を確立し、もって国民の健康の保護並びに肉用牛生産および酪農、牛肉に係る
 製造、加工、流通および販売の事業、飲食店営業等の健全な発展を図ることを
 目的とする。  

国および都道府県の責務

 国および都道府県(保健所設置市を含む。以下同じ。)は、BSEの発生が確認
された場合またはその疑いがあると認められた場合には、次の基本計画に基づき、
速やかにBSEのまん延を防止する等のために必要な措置を講ずる責務を有する。  

基本計画

1 農林水産大臣および厚生労働大臣は、BSEの発生が確認された場合またはその
疑いがあると認められた場合において国および都道府県が講ずべき措置(対応措
置)に関する基本計画を定めなければならない。  

2 基本計画においては、@対応措置に関する基本方針、A計画の期間、BBSEの
まん延の防止のための措置に関する事項、C正確な情報の伝達に関する事項、D
関係行政機関および地方公共団体の協力に関する事項、Eその他対応措置に関す
る重要事項を定めるものとする。  

牛の肉骨粉を原料等とする飼料の使用の禁止等

1 牛の肉骨粉を原料または材料とする飼料は、別に法律またはこれに基づく命令
で定めるところにより、牛に使用してはならない。  

2 牛の肉骨粉を原料または材料とする牛を対象とする飼料および牛に使用される
おそれがある飼料は、別に法律またはこれに基づく命令で定めるところにより、
販売し、または販売の用に供するために製造し、若しくは輸入してはならない。  

3 1および2による規制の在り方については、BSEに関する科学的知見に基づき検
討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるものとす
る。  

死亡した牛の届出および検査

1 農林水産省令で定める月齢(24カ月齢)以上の牛が死亡したときは、当該牛の
死体を検案した獣医師(獣医師による検案を受けていない牛の死体については、
その所有者)は、遅滞なく都道府県知事にその旨を届け出なければならない。  

2 1による届出を受けた都道府県知事は、当該届出に係る牛の死体の所有者に対
し、当該牛の死体について、家畜伝染病予防法第5条第1項の規定により家畜防疫
員の検査を受けるべき旨を命ずるものとする。ただし、地理的条件等により当該
検査を行うことが困難である場合として農林水産省令で定める場合は、この限り
でないこととされるとともに、その施行については、平成15年4月1日からとされ
た。  

と畜場におけるBSEに係る検査等

1 と畜場内で解体された厚生労働省令で定める月齢(零月齢)以上の牛の肉等
は、別に法律またはこれに基づく命令で定めるところにより、都道府県知事また
は保健所設置市の長の行うBSEに係る検査を経た後でなければ、と畜場外に持ち
出してはならない。  

2 と畜場の設置者等は、別に法律またはこれに基づく命令で定めるところによ
り、牛の特定部位(牛の脳、せき髄等)については、焼却により処理しなければ
ならない。  

3 と畜業者等は、別に法律またはこれに基づく命令で定めるところにより、牛
のと殺または解体を行う場合には、牛の特定部位による牛の枝肉等の汚染を防ぐ
ように処理しなければならない。  

牛に関する情報の記録等

1 国は、牛1頭ごとに、生年月日、移動履歴その他の情報を記録し、および管理
するための体制の整備に関し必要な措置を講ずるものとする。  

2 牛の所有者(所有者以外の者が管理する牛については、その者)は、牛1頭ご
とに、個体を識別するための耳標を着けるとともに、1の情報を提供しなければ
ならない。  

牛の生産者等の経営の安定のための措置

 国は、基本計画に定められた計画の期間において、BSEの発生により経営が不安
定になっている牛の生産者、牛肉に係る製造、加工、流通または販売の事業を行
う者、飲食店営業者等に対し、その経営の安定を図るために必要な措置を講ずる
ものとする。  

協力依頼

 農林水産大臣および厚生労働大臣並びに都道府県知事および保健所設置市の長
は、国、独立行政法人、地方公共団体、獣医師団体、牛の生産者団体、試験研究
機関、検査機関等に対し必要な協力を求めることができる。

正しい知識の普及等・調査研究体制の整備等

1 国および地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じたBSEに関する正しい
知識の普及により、BSEに関する国民の理解を深めるよう努めるとともに、この法
律に基づく措置を実施するに当たっては、広く国民の意見が反映されるよう十分
配慮しなければならない。  

2 国および都道府県は、BSEの検査体制の整備、BSEおよびこれに関連する人の疾
病の予防に関する調査研究体制の整備、研究開発の推進およびその成果の普及並
びに研究者の養成その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。  

附則

1 BSEの特徴を踏まえ、その防疫に万全を期すため、飼料の安全性の確保および
品質の改善に関する法律(以下、「飼料安全法」という。)、家畜伝染病予防法
および獣医師法の一部が改正された。  

@ BSEについてのサーベイランスの徹底  (家畜伝染病予防法の一部改正)  


A 飼料の適正使用の徹底および製造業者等の規制の見直し 
 (飼料安全法の一部改正)  


B 感染経路の解明に必要な措置  (飼料安全法および獣医師法の一部改正)  

注*)反すう動物以外は従来どおり3年。  

C 厚生労働省との連携の強化  (飼料安全法および家畜伝染病予防法の一部改正)  


D BSEの法律上の名称の変更  (家畜伝染病予防法の一部改正)  


2 食品の安全に関する行政の見直し   政府は、BSEの発生を予防できなかっ
たことにかんがみ、関係府省の連携を強化する観点から、生産から消費に至る食
品の安全に関する行政の抜本的な見直しにつき検討するものとする。


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