★ 農林水産省から


有機畜産物に関する検討会について

生産局 畜産部 畜産企画課 松本 隆志




コーデックスガイドラインの採択

 1997年よりコーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会、Codex Alimen
tarius Commission(http://www.codexalimentarius.net/)、事務局ローマ、参
加国165カ国)において、有機畜産物に関するガイドラインの検討作業が開始され
た。この有機畜産物に関するガイドラインは、2001年7月のコーデックス委員会総
会において採択され、有機生産食品の生産・加工・表示および販売に係るガイド
ライン(Guidelines for The Production, Processing, Labelling and Marketi
ng of Organically Produced Foods(以下「コーデックスガイドライン」と略す
))に有機畜産物に関するガイドラインが追加されたところである。 

 コーデックスガイドラインでは、有機畜産を土地と関連した活動と位置付けた
上で、 

@ 草地や野外の飼育場へのアクセスの確保

A 飼料は原則としてすべて有機飼料 

B 動物用医薬品の使用条件の限定(予防のための抗生物質の利用は不可等) 

C 家畜排せつ物の適切な管理(土壌や水質の劣化を最小限にすること等) 

D 家畜の飼養管理記録の保存(個体または群ごとに飼料、治療、移動等に関す
る記録の保存)等を有機畜産の要件として定めている。  コーデックスガイドラ
インが採択されたことにより、これが直ちに国内の畜産に適用されるものではな
が、今後、各国が有機畜産物についての検査認証制度を制定する際に準拠すべき
基準となるものである。 


有機畜産に対する取り組みの現状

 わが国の現状を見ると、土地基盤の制約や濃厚飼料の輸入依存といった畜産の
特性から、商業ベースで広く取り組まれるには至っておらず、特定の需用者との
少量の契約生産等が散見されるに過ぎない状況である。 

 また、海外の現状を見ても、EUにおける有機畜産物の市場規模は、約11億USド
ル(97年)、米国における有機農畜産物の市場規模は、約35億USドル(96年)(
農畜産業振興事業団「畜産の情報(海外編)」97.12、98.3)であり、有機畜産
物の生産量は多くはない。 

 しかしながら、消費者の健康・安全志向や、環境および家畜福祉に配慮した畜
産物生産に対する関心・ニーズが高まる中、これらの関心・ニーズに対応した販
売戦略の選択肢の1つとして有機畜産物が捉えられ、今後、有機畜産物の生産量が
増加することが考えられる状況である。 

わが国における有機畜産物の生産事例

  わが国における有機畜産物の生産状況を見ると、民間認証機関が独自の基準
 を規定し、これに基づく認定が行われている事例が見られる。 


有機畜産に関する検討会

  このような状況を踏まえ、わが国における有機畜産のあり方や表示規制の必要
  性等について、有機畜産物に関して知見・関心を有する生産者、消費者、加工
  流通業者、学識経験者の方々から意見を聴取し、検討を進めるため、2001年8
  月に「有機畜産に関する検討会」(事務局:社団法人中央畜産会)を設置し、
  7回にわたる検討や3カ所の現地調査が行われ、2002年6月に、同検討会におい
  てとりまとめが行われたところである。 
  
 検討会での議論の概要や、「とりまとめ」の詳細についてはhttp://lin1.lin.
go.jp/maff/frame 02.htmlを参照して頂きたいが、「とりまとめ」のポイントは
次のとおりである。 

わが国における有機畜産のあり方

● 有機畜産とは、自然循環機能を活用し、周辺生態系との調和に配慮した持続
的農業の手法の1つとして捉えるべきである。 

● 有機畜産は慣行畜産に比べ多くのハードルがあるため、土地基盤の制約など
があるわが国ではこれに参入しようとする生産者は多くないと考えられる。 

● 慣行畜産物はもともと安全であり、安全性の面で有機畜産物の慣行畜産物に
対する優位性をことさら強調することは避けるべきである。

  等の多様な角度からの意見が示された。 

わが国における有機畜産物の基準・規則、表示のあり方

● 有機畜産に関する国際的な基準(コーデックスガイドライン)が採択された
ことも踏まえ、わが国においても有機畜産物の基準・規則を作るべきである。 

● その際、国際的な基準との整合性、消費者の信頼性の確保、わが国畜産の実
情の反映等に配慮し、しっかりと議論すべきである。 

● 有機農産物についてJAS法に基づく検査認証が行われた経緯および現状を踏ま
えると、有機畜産物に関しても有機農産物と同様にJAS規格を制定すべきである。 

 といった基本的な考え方が示された。 

今後わが国において有機畜産を展開するに当たっての課題 

● わが国の現状を踏まえれば、輸入有機飼料に頼らざるを得ないが、将来的に
は可能な限り有機飼料を生産・確保することが必要。 

● 有機畜産物の生産にコストがかかることは理解できるが、慣行畜産物の数倍
の価格となると、一般の消費者は購入できない。 

 といった有機畜産を展開するに当たっての課題について多様な角度からの意見
が示された。 

 今後、有機畜産に関する施策を具体化するに当たっては、有機畜産に関する検
討会とりまとめを踏まえた上で、農林水産省としても、適切に対処していく必要
があると考えている。 

有機畜産物の生産・加工イメージ 




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