◎地域便り


北海道 ●牛の雌雄産み分け実現へ向けて

北海道/早川 宏之


 ジェネティクス北海道(以下GH)は、平成12年度に精子の雌雄分離装置を導入した。体外受精等の試験を経て、昨年から人工授精試験に着手し、平成14年12月に、北海道で初めて、性分離された精液を使って希望の性の子牛を産ませることに成功した(写真)。

 平成14年2月から7月まで、十勝管内清水町で、ホルスタイン種未経産牛を対象に、「メスが期待される」凍結精液を使って人工授精を実施した。種雄牛はGH繋養のホルスタイン種一頭を使用した。結果は表に示すとおり、試験区(分離精液)と対照区(分離していない普通の精液)の間で、受胎率には全く差が無かった。受胎牛のうち63頭が分娩し、うち試験区で86.7%がメスであった。本技術で生まれたメス産子の、発育や繁殖の状況、産乳能力などについて、引き続き調査を行う予定である。

 技術導入から二年を経て、ようやく産子が産まれ、性分離された精液が問題なく受胎することと、産子が希望の性に偏ることを実証することができた。現在は、複数の種雄牛の比較や受精卵移植への応用試験を実施しており、本技術の有効活用を検討中である。

 すでに受精卵段階での性判別は実用化されているが、授精の段階で産子の性を選択できるようになれば、間違いなく生産農家の利益につながる。現状では、産み分けの精度が90%前後であり、時間当たりの生産能力が限られている、などの課題が残されているが、技術の実用化を目指して試験を重ねていきたい。

 なお本技術は、コロラド州立大学のベンチャービジネスとして設立されたXY社(米国)が特許を保有しており、数か国が本装置を導入して実用化試験に取り組んでいる。先行した英国では、すでに「ホルスタイン・メス精液」の販売を開始している(日本農業新聞、平成15年8月7日)。家畜精液の国際流通は、各国の衛生条件等の規制を受け、必ずしも自由にできない状況にあるが、今後は性分離された牛精液の流通が始まる可能性もある。

 最後に、今回の試験にご協力いただいた、清水町町営育成牧場、JA十勝清水町、十勝NOSAI清水診療所、そして7戸の酪農家の皆さまに、この場を借りてお礼申し上げます。

性分離された精液を使って初めて誕生した雌子牛
表:性分離された精液の受胎率及び産子のメス率


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