◎地域便り


神奈川県 ●剪定クズ利用による平飼い養鶏

神奈川県/堀 与志美


 最近、高齢者や非農家から小規模の養鶏経営を開始したいという相談が多く
なっている。これらは、未経験のために成鶏300羽位から始めることとなり、
あまり設備投資を必要としない経営規模で、かつ、自然を生かした放し飼い養
鶏の開始を望んでいる。しかし、用地が狭い等から、数年後には野草もなくな
り、土地が硬くなり排水等も悪くなり、ひいてはコクシジウム症の発生原因と
なっているところも散見される。そこで、経過日数は浅いが、放し飼い場の排
水対策と土地の微生物活性を考慮し、砕断の大きさと水分含量を調整した剪定
クズを敷き、順調に行っている経営事例を紹介する。

 厚木市上古沢のS養鶏場である。ここは平成14年の4月頃まで養豚を経営して
いたが、数年後に豚舎敷地を主要幹線道路ができることと、高齢による養豚経
営の大変さから経営転換を試みた。設備資金が少額ですむことと、同じ畜産部
門であることから平飼い養鶏へ移行した。鶏舎は自分で設計し建築し、最初の
雛はワクチンネーションの手間のかからない中雛とし、平成7年に県畜産研究
所からノーリンクロス種250羽を導入した。

 平飼い養鶏のためにケージ養鶏よりエネルギー消費が大きいことから、完全
配合飼料に新たに良質な魚粉を混合し、平常のものより粗タンパクとカロリー
を高めにしてあり、良好な産卵率を経過している。

 剪定クズの発酵により敷料の温度が上がり雑菌防止となっており、通常のオ
ガクズよりも優れている。

 夏季での直射日光を遮断すべきために地上から2メートル位の高さに寒冷紗
を張ったことで、産卵の卵殻色の変質等にも好影響を及ぼした。

 敷料投入開始から5カ月位経過したが、敷料が剪定クズのせいか、投入後6カ
月前後で切り返しを行い、廃鶏時点で敷料の全面入れ替えを行うこととしてい
る。

 概ね現在は産卵率は85%位を保持している。有色種でありながら、平飼い養
鶏であることと産卵開始時期を考慮しても良い成績と思える。また、ケージ養
鶏よりも卵重が重い。これは卵黄の大きさが良いためである。パックにネーミ
ングして、卵1個を70円から100円位で販売している。

 このような好成績から現在は2棟目を建設中であり、将来的には約1,000羽の
規模を考えており、平飼い養鶏の欠点とされるコクシジウム症の対策も並行的
に進めている。
【鶏舎の簡易平面図】
【建設途中での鶏舎全景】

    
【使用した剪定クズ】

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