トピックス

●●●生鮮・冷蔵牛肉、8月1日から関税率50%に引き上げ●●●

 財務省の貿易統計によると、平成15年4月〜6月の牛肉輸入量累計は、生鮮・
冷蔵で前年同期比33.9%増の7万3千トン、冷凍で前年同期比5.4%増の6万1千
トンとなった。


 冷凍では関税の緊急措置の発動基準数量に達しなかったものの、生鮮・冷蔵
では約7千トン上回った(図1)。


 こうした状況を受けて、生鮮・冷蔵の牛肉について、平成15年8月1日から平
成16年3月31日まで、関税率が現行の38.5%から50.0%に引き上げられること
が平成15年7月31日付けの官報に告示された。


 牛肉の関税の緊急措置は、ウルグアイ・ラウンド農業合意の際に輸出国の要
望と消費者への配慮等から、合意水準以上の自主的な関税引き下げを行い、そ
の代償として導入されたもので、四半期ごとの累計輸入量が前年の117%を超
えた場合、自動的に発動される。冷凍牛肉については、平成7年度および8年度
(いずれも8月1日から翌年の3月31日まで)に過去2回発動されているが、生鮮
・冷蔵牛肉について発動されるのは今回が初めてとなる。


 関税率が引き上げられた生鮮・冷蔵の輸入牛肉は、主としてスーパーマーケ
ットなどの量販店やレストランに仕向けられている。農林水産省では、今回の
発動の影響に関して、小売価格等に占める原価等を勘案すると、直接的な小売
価格の上昇は最大でも2.5%程度にとどまるものと推計している。また、関係
業者への影響の把握、不当な便乗値上げの防止など、適切な対応を行っていく
としている。なお、牛丼、ハンバーガー等の大手外食産業に仕向けられている
冷凍の輸入牛肉については、従来どおりの関税率が摘用される。
図1 第1四半期の牛肉輸入量の推移
資料:財務省「告示」

※ 生鮮・冷蔵牛肉についての関税の緊急措置発動に伴い、卸売価格、小売価格
 の不当な値上げの防止を図る観点から、農畜産業振興事業団では、農林水産
 省と連携して、卸売価格などに関する調査を緊急に実施し、これらの情報に
 加えて、牛肉に関する内外の価格・需給情報をホームページにおいて公表し
 ています。

 農林水産省のホームページ http://www.maff.go.jp/beef/top.htm 
 農畜産業振興事業団のホームページ http://www.alic.go.jp/livestock/yunyubeef.htm
                       

●●●依然回復しない乳去勢の枝肉価格●●●

 農林水産省が7月20日に公表した食肉流通統計によると、6月の東京市場の牛
枝肉の卸売価格は、去勢和牛のA−5で前年同月比17.9%高の2,373円/kg、A−
3で44.1%高の1,695円/kgとなった。これを牛海綿状脳症(BSE)発生前の一昨
年と比較すると、A−5で同水準、A−3では17.6%高と、全般的にBSE発生前の価
格水準に回復しただけでなく、A等級の中下位のものでは、BSE発生前の水準を
大幅に上回っている(図2)。


 一方、乳用種去勢牛の価格は、B−3で前年同月比58.7%高の665円/kg、B−2
で90.4%高の537円/kgと一見順調に回復しているように見える。しかし、一昨
年との比較では、B−3で24.3%安、B−2で23.8%安と、BSE発生後、約2年が経
過した時点でも、いまだにBSE発生前の水準の8割以下の水準にとどまっている。


 乳用種去勢牛と価格的に競合すると見られる冷凍・冷蔵の輸入牛肉に対する
関税が8月1日から引き上げられただけに、乳用種去勢牛の枝肉価格の今後の動
向が注目される。
図2 牛枝肉の卸売価格の推移(前々年同月比)
資料:農林水産省「食肉流通統計」
 注:東京市場における牛枝肉卸売価格

●●●8月1日から3年連続でSG発動●●●

 財務省は、7月31日、豚肉等の関税の緊急措置の発動日を8月1日とすること
を告示した。制度導入後の同措置の発動は、7年11月〜8年3月、8年7月〜9年
3月、9年4月〜6月、13年8月〜14年3月、14年8月〜15年3月に続いてこれで6度
目となる。


 これは平成15年4月から6月までの豚肉等の輸入量が239,803トンとなり、あ
らかじめ財務省が告示した第1四半期の発動基準数量220,706トン(過去3年に
おける当該期間中の平均輸入量の119%)を超えたため、関税暫定措置法に基
づき年度の残りの期間について、基準輸入価格を(WTO譲許水準に)引き上げ
るものである。


 13年9月に国内でBSEが発生、牛肉からの代替需要から豚肉の輸入量が大幅
に増え続けた。更に、15年4月からは緊急措置が解除されたことから、4月〜6
月の輸入量は、前年同月を8〜15%程度上回って推移し、これが第1四半期の
輸入量を押し上げる形となって発動基準を上回った(資料編P31、32参照)。
なお、発動後の基準輸入価格は、以下のとおり(図3)。


 ・枝肉  409.90円/Kg →510.03円/Kg
 ・部分肉 546.53円/Kg →681.08円/Kg


 また、輸入品推定期末在庫量は、15年1月以降積み増しを続け、6月には梅
雨の影響により消費が伸びず6月末では、156,671トン(前年同月比16.2%増)
となった。8月以降はこの緊急措置により輸入量は減少し、在庫の取り崩しが
進むものと考えられる。
図3 平成15年度関税の緊急措置発動の概念図(部分肉)


●●●鶏肉国内産在庫の増と国産もも肉相場の下落●●●

 国産もも肉卸売価格は、15年3月には昨年の価格を下回り始め、もも肉相場
が過去に例のないほどの下落といわれた13年の価格とほぼ同水準に推移したが、
6月からは13年の価格をも下回り始めた。13年は今年と同じように中国からの
輸入が一時停止され、7月は値動きが小さく8月中旬から値上がりに転じた。
また、9月にBSEが発生し代替需要により年末にかけて大幅な値上がりが続い
た。しかし、今年は例年どおりの7月後半から年末に向けての需要増による値
上がりが期待できない状況にある。その主な要因が、国内品在庫の増加である
。中国からの輸入品の一時停止により輸入量が減少し輸入品在庫が大幅に前年
を下回っているのとは対照的である。13年のBSEによる代替需要等の突発的な
要因によるもも肉の急激な値上がりが望めないだけに、鶏肉産業にとってのこ
の値下がりは厳しい状況といえる。しかし、8月に入り需要が引き締まってき
ており、これ以上の値下がりは感じられない(図4・5)。
図4 鶏肉国内物在庫量
資料:農畜産業振興事業団予測

図5 国産鶏肉(もも肉)卸売価格(東京、中値)
資料:農林水産省「食鳥市況情報」

●●●鶏肉購入量、支出額とも堅調な動きを見せる●●●

 総務省「家計調査」からの平成15年6月調査によると、食料の1世帯当たり
の支出額は前年同月を3.4%下回り、生鮮肉主要三品(牛肉、豚肉、鶏肉)の
うち、牛肉はBSEによる影響からの脱却をみせているものの、代替需要が薄れ
た鶏肉、豚肉は前年同月を下回っている。しかし、BSEの影響のなかった平成
13年と比較すると、鶏肉購入量、支出額とも上回っており、鶏肉需要は堅調な
動きをしているといえる。農林水産省総合食料局が公表した「畜産の需給〜そ
の動向と見通し〜」においても、15年度の調製品を含めた鶏肉全体の消費量は
調理食品や中食を中心に前年度をわずかに増加するものとみている。

●●●鶏肉輸入量、中国からの輸入一時停止により、タイトとなる●●●

 6月は5月からの中国産鶏肉の輸入一時停止によりタイ産、ブラジル産鶏肉が
異常な値上がりをみせた。しかし、7月に入り鶏肉の不需要期となり、輸入鶏
肉の値上がりは一服した感がある。また、タイ産はサンプリング検査で禁止さ
れているスルファノキサリン(抗生物質)がみつかっており、検査サンプル数
の増加を行っており、通関に遅れが出ている。中国産の減少をタイ産とブラジ
ル産からだけでは十分にカバーできないため、輸入量は当分の間、減少するも
のと考えられる。米国産は昨年を大幅に下回ってきており、中国からの輸入解
禁の時期は、8月17日と決定されたが、今後も供給がタイトとなることが見
込まれる。

●●●飲用牛乳等向け処理量、増加●●●

 農林水産省は7月31日、6月の牛乳乳製品統計を公表した。「生乳生産量」
は15年度累計(4〜6月)で2,168千トン、前年同期を0.1%下回った。「飲用
牛乳等向け処理量」は、15年度累計(4〜6月)では1,299千トンと1.5%上回
り、「乳製品向け処理量」は15年度累計(4〜6月)で847千トンと2.5%下回
った(図6)。
図6 牛乳等の生産量と消費動向(対前年同月増減率、%)
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

 次に、牛乳乳製品の生産量について見ると、「飲用牛乳等生産量」のうち、
生乳100%を原料とする「牛乳」の生産量は、15年度累計(4〜6月)では
1,0 28千klと、3.7%上回った。「加工乳」は、15年度累計(4〜6月)では
1 07 千kl、▲16.4%と大幅に下回った。「乳飲料」は、15年度累計(4〜6
月)では290千kl、▲2.7%と下回っている。「はっ酵乳」は15年度累計(4
〜6 月)では216千kl、0.4%とほぼ前年並みとなった。すなわち平成14年度
の後半以降、「牛乳」の消費および「飲用牛乳等向け処理量」が増加し、
「加工乳」の減少が続いている(図7 )。
図7 飲用牛乳等生産量(対前年同月増減率、%)
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

  「牛乳」の消費量が増え、「飲用牛乳等向け処理量」が増加することは、わ
 が国の酪農乳業界にとって好ましいことと思われる。


 POSデータで消費動向をみると、調査対象687店舗(6月現在)で販売される
1リットルの紙容器入りについては、対前年同月比は、「牛乳」、「部分脱脂乳」
は減少傾向にあり、「濃厚加工乳」がマイナスからプラスに転じ、「低脂肪加工
乳」は減少幅が大幅に大きくなってきている(図8)。 
図8 生乳等の消費動向(POS)(対前年同月増減率、%)
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」、日本経済新聞社POS情報サービス「NEEDS-SCAN」  

注:1「牛乳乳製品統計」では、部分脱脂乳は便宜上加工乳に区分される。
  2 牛乳等の消費動向(POS)は、1リットル紙容器入りの牛乳等を対象
   としたレジ通過客数千人当たり販売数量の対前年同月比率である。
  3 POS情報の「普通牛乳」はジャージー牛乳を、「低脂肪加工乳」は
   無脂肪乳を含む。


●●● 採卵用え付け羽数、2カ月連続の大幅な減少も、卸売価格に影響せず●●●

 農林水産省が7月30日に公表した「鶏ひなふ化羽数」によると、6月の採卵
用めすひなの出荷羽数は907万羽で、前年同月に比べて2.3%増加した。(図9)


 鶏卵生産量の高水準が予想される中、消費の低迷などから、卵価が下がり続
けており、採卵用めすひの出荷羽数は、5月から2カ月連続、対前月1割減、50
0千羽以上の生産調整の動きがでているものの卵価に対する反応は今のところ
見られない。


 上旬に聞き取った向こう3カ月の採卵用めすひなの出荷見通しは、前年同月
に比べ7月が95%、8月が89%、9月が92%となっている。生産者側は、適正
な生産とともに、消費拡大を呼びかけ、卵価回復の兆しに期待をかけている。
図9 採卵用めすひなえ付け羽数と卸売価格の推移
 

元のページに戻る

月報「畜産の情報(国内編)の目次に戻る