★ 機構から


最近の食肉消費動向と消費者の意識変化

食肉生産流通部食肉課



はじめに

 昨年12月24日、カナダに続き米国でBSEの発生が確認され、さらに、鳥インフルエンザが韓国、ベトナム、タイ、中国等に広がり、また、日本でも本年1月12日に山口県下で79年ぶりに確認され、その後、大分県、京都府でも確認された。

 ここでは、これら家畜伝染病の発生により、食肉消費がどのような影響を受けてきたかをまずPOSデータで検証し、さらに本年2月上旬に実施した「食肉に関するインターネット調査」の結果から消費者の意識変化を追跡してみたい。


最近の食肉の消費動向(POS情報から)

食肉の購入数量全体の推移


 平成15年12月に14〜15kg台で推移した牛肉は、米国でBSEの発生が確認された第4週には13.0kg(前年同期比76.0%、以下同じ。)まで落ち込んだ。平成16年1月第1週(12/29〜1/4)は、年末年始の需要から19.1kg(73.3%)と伸びたが、2月第1週には11.9kg(67.0%)まで漸減。その後は回復基調にあり、3月第1週は13.7kg(77.8%)となった。

 年末から年始にかけて30kg台で推移した鶏肉についても、山口県下で鳥インフルエンザの発生が確認された16年1月第3週以降は20kg台に減少。2月第3週の19.7kg(66.7%)を底に回復に向かったものの、2月第5週に京都府下での感染が確認されると3月第1週は16.8kg(58.7%)と再び急激に減少した。

 こうした牛肉、鶏肉の減少を補うように豚肉は、15年12月38.3kg(93.5%)、16年1月43.7kg(91.0%)、2月45.2kg(100.2%)と増加し、3月第1週は43.6kg(100.7%)となった(図1)。

図 1  畜種別購入数量の推移(千人当たり)

牛肉の産地別購入数量の推移

 牛肉について産地別に見ると、米国産は15年12月第1週に2.5kg(76.8%)であったが、米国でBSEの発生が確認され、輸入が停止された12月第4週には1.4kg(42.2%)と激減。その後も引き続き減少し、16年3月第1週には0.3kg(7.4%)となっている。

 その結果、米国産と肉質および価格面で競合するホルスタイン種、交雑種等の和牛以外の国産は、1月5.4kg(100.0%)、2月5.3kg(112.3%)、3月第1週は5.3kg(128.5%)と前年同期を上回って推移している。

 また、豪州産についても1月は5.7kg(75.7%)、2月は7.0kg(88.9%)と増加し、3月第1週は7.6kg(98.8%)となっている。

 和牛については、15年12月1.9kg(85.0%)、16年1月1.6kg(69.8%)であったが、2月は0.7kg(63.4%)と低調で、3月第1週は0.6kg(38.4%)となっている(図2)。

図 2  牛肉の産地別購入数量の推移(千人当たり)

畜種別購入数量の構成比

 15年12月には17.9%あった牛肉のシェアは、16年1月第3週に14.4%まで下落した。その後徐々に回復し、3月第1週は18.5%となっている。

 鶏肉のシェアは、15年12月37.1%、16年1月31.8%、2月20.7%と減少傾向にあり、3月第1週は22.7%となっている。

 豚肉のシェアは、牛肉、鶏肉のシェアが減少する中、1月第2週以降増加。2月第1、2週の57.3%をピークにその後は牛肉のシェア回復につれ漸減傾向となった。3月第1週は鶏肉のシェアが再び減少に転じたことから、58.8%と本調査でデータが保存されている平成5年4月以降最大となっている(図3)。

図 3  畜種別購入数量の構成比


消費者の意識の変化(緊急調査から)

緊急調査の実施

 米国におけるBSE発生、日本を含む世界各国での相次ぐ鳥インフルエンザ発生と食肉をとりまく環境が大きく変化する中で、消費者がこれらの問題をどのように受け止め、食生活でどのような対応をしているかなど消費者の意識を把握するため、当機構は2月上旬に全国の10代から60代までの3千人を対象にインターネットを利用した緊急調査を実施した。

消費者の認識度

 「米国でのBSE問題をご存知ですか」との質問に対し、「内容まで詳しく知っている」が59%、「内容までは知らないが知っている」が40%で99%の人が認知していた。鳥インフルエンザ問題についての同様の質問では、63%と37%で認知度は100%に達した(図4)。

図 4  消費者の認識度

平均的食生活像

 「牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類のうち好きな順序」で1番好きなものは「魚介類」34%、「牛肉」31%、「豚肉」22%、「鶏肉」13%の順。1位の魚介類では、男女とも34%で性別による差はないが、2位の牛肉では男性39%、女性24%と男性の方が牛肉に対する嗜好性が高い。特に男性10代では「牛肉」を1位に挙げる人が58%と他の年代に比較して多く、女性10代では「鶏肉」が37%と多くなっている。また、「魚介類」に対する好意度は男女とのも高年齢層ほど高く、60代では6割に達する(図5)。

図 5  平均的食生活像
(牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類の中で一番すきなもの)

米国でのBSE発生による牛肉消費の変化

 米国でのBSE発生後の牛肉に対する意識の変化に関する調査では「認識はしているが、気にせずたべている」31%が最も多く、「牛肉の産地を気にするようになった」20%、「変わらない」16%、「輸入牛肉より国産牛肉を食べるようになった」13%と続く。一方、「牛肉を多少控えるようになった」10%および「牛肉を控えるようになった」10%を合わせると約2割の人が牛肉を控えている(図6)。

図 6  米国でのBSE発生による牛肉消費の変化(意識の変化)


 牛肉が減った代わりに増えたものは、「魚介類」53%、「豚肉」52%とともに過半数に達し、「特に増えたものはない」も16%あった(複数回答、図7)。

図 7  米国でのBSE発生による牛肉消費の変化
(牛肉の代替食品(複数回答))


 牛肉の安全性に関する信頼度については、国産では「やや信頼できる」43%が最も多く、「非常に信頼できる」8%と合わせた「信頼できる派」は51%と輸入牛肉に比較し高くなっている。米国産では「あまり信頼できない」44%が最も多く、「信頼できない派」が58%に達する。豪州産は「どちらともいえない」47%が一番多いものの「信頼できる派」は47%と国産に次ぐ(図8)。

図 8  米国でのBSE発生による牛肉消費の変化
(牛肉に対する信頼度(%))


 また、「輸入に頼らず国産牛肉の生産を増やした方がよい」という意見に対しては、「ややそう思う」が36%で最も多く、「そう思う」22%と合わせて国産支持派が6割近くに達している(図9)。

図 9  米国でのBSE発生による牛肉消費の変化(国産牛肉に対する支持)


鳥インフルエンザ発生による鶏肉消費の変化

 鳥インフルエンザ発生後の鶏肉に対する意識の変化に関する調査では、牛肉同様「認識はしているが、気にせず食べている」33%が最も多いものの「鶏肉を多少控えるようになった」14%および「鶏肉を控えるようになった」8%を合わせると2割強の人が鳥肉を控えている(図10)。

図10  鳥インフルエンザ発生による鶏肉消費の変化(意識の変化)


 鶏肉が減った代わりに増えたものは、「魚介類」62%、「豚肉」52%と牛肉の場合より「魚介類」の割合が高くなっている。「特に増えたものはない」も15%あった(複数回答、図11)。

図11  鳥インフルエンザ発生による鶏肉消費の変化
(鶏肉の代替食品(複数回答))

 「輸入に頼らず国産の鶏肉・鶏卵の生産を増やした方がよい」という意見に対しては、「ややそう思う」が37%で最も多く、「そう思う」27%と合わせて国産支持派が6割以上となっている(図12)。

図12  鳥インフルエンザ発生による鶏肉消費の変化(国産鶏肉に対する支持)





おわりに

 POSデータでは、食肉3品の購入量は豚肉が量とシェアを高めつつも全体的には前年同月を下回り、本年2月には国内でBSEが発生する前の13年2月のレベルをも下回った。その理由として、緊急調査の回答者の約2割が牛肉・鶏肉を控えるようになり、その代替として魚介類、豚肉を増やした人がいる一方で、「特に増えたものはない」人が15%いる。これが牛肉および鶏肉の消費減少、ひいては食肉全体の消費減少に結びついていると推測される。

 緊急調査の結果では、米国でのBSE問題および鳥インフルエンザ問題について回答者のほぼ全員が認知しており、また、「製造年月日を見るようにしている」人が8割以上を占め、「原産地を気にしている」「添加物を気にしている」人が5割前後に達するなど食の安心・安全への意識の高さが表れている(図13)。

図13  食の安心・安全のための意識(複数回答)

 また、牛肉、鶏肉とも「輸入に頼らず国産を増やした方がよい」とする国産支持派が6割程度あり、輸入再開後の消費動向が注目される。





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