★ 機構から


POS情報からみた牛乳乳製品の消費実態について

酪農乳業部



 当機構では、牛乳・乳製品などの消費実態を把握するため、社団法人食品需給研究センターに委託して、スーパーなどのPOS情報を活用し、販売動向、小売価格について分析を行っている。15年度の分析結果のうち、バターと牛乳類(牛乳、低脂肪加工乳、白もの乳飲料、低脂肪牛乳)について、調査結果の概要を紹介する。なお、牛乳乳製品のPOS情報の詳細については、巻末の統計をご参照願いたい。

バター

商品の概要

 平成15年度のバター(バターハーフを含む)のアイテム数は73である。バターの荷姿は、200gを中心としたカートン入りが最も多い。簡便性を追求した10g程度に切れているものや小容量・個別包装(8g×8、6g×4)のものもみられる。

 容量クラス別に販売金額構成比をみると、200g前後タイプが78.4%と最も多い。ただし平成12年度の82.7%と比較すると減少しており、より小容量の100g前後タイプがやや増加している。

 売れ筋商品についてみると、第1位(大手乳業メーカーA、200g)がシェア28.3%である。第2位(切れてるタイプ)と第3位(無塩タイプ)も大手乳業メーカーAの製品であり、第1位の商品が長期的にやや減少傾向にあるのに対し、切れてるタイプである第2位の商品は12年度の9.7%から15年度12.0%とシェアが拡大している。

販売数量は低迷

 千人当たり販売数量(POSレジ通過客数千人当たり、以下同じ)についてみると、12年度は1,451gだったのに対し、13年度に1,288gと大きく減少し、さらに14年度1,235g、15年度1,165gと減少が続いている(図1)。

 バターの販売数量は、おおむね冬期に多く夏期に少ないという明瞭な季節性がみられる。季節指数(平成11年1月から15年12月、月別平均法、12月=100、「季節指数」という。以下同じ)は8月が最も低く61.6となっており、秋口から上昇し、12月にピークとなり、1月は79.8と大幅に落ち込んでいるものの、2月は111.3と最大になっている。

図 1  バターの販売数量と価格の推移

小売価格は上昇

 100g当たりの小売価格についてみると、12年度までは下落傾向が続き12年度に133円に至ったのに対し、13年度は135円とやや上向き、14年度137円、15年度139円と上昇した。

 バターの小売価格について、12月を100とした季節指数でみると、12月が最も低く、8月が106.9と最も高い。

牛乳類

 牛乳類のうち、牛乳、低脂肪加工乳、白もの乳飲料、低脂肪牛乳(旧名:部分脂肪乳)の販売動向についてみることにする。なお、対象は紙容器1L 入りである。

牛乳類の種類別消費量の変化

 牛乳類全体の販売数量について、POSレジ通過客数千人当たりの販売数量でみると、11年度は137.1本、12年度は127.1本、13年度は115.8本と年々減少していたものが14年度は122.6本と回復したが、15年度は再び113.8本と減少している。

 種類別の構成比をみると、牛乳が72.7%、次いで、白もの乳飲料(低脂肪でカルシウムやビタミンなどを添加したもので「機能性牛乳」と呼ばれている)が13.9%、低脂肪加工乳が6.1%、部分脱脂乳が4.5%、濃厚加工乳が2.6%、LL牛乳が0.2%の順となっている。過去の推移をみると、平成12年に起きた食中毒事故を契機に年々、牛乳のシェアが拡大している。この結果、白もの乳飲料に低脂肪加工乳、部分脱脂乳を加えた低脂肪タイプは24.5%(前年度27.6%)に低下した。健康志向などにより拡大していた低脂肪タイプだが、12年以降は大幅に低下し、牛乳への回帰が著しくなっている。

 種類別の千人当たり販売数量についてみると、平成15年度は牛乳が82.6本で最も多く、次いで白もの乳飲料が15.8本、低脂肪加工乳が6.9本、濃厚加工乳が3.0本、LL牛乳が0.2本であった(図2)。過去4年間の推移をみると、牛乳の増加に対し、低脂肪加工乳および白もの乳飲料が一貫して減少している。

図 2  牛乳類の売上の変化(1L紙容器、客数千人当たり)

小売価格は種類別で格差が大きい

 次に種類別に1本当たり小売価格の推移を示したのが図3である。平成15年度についてみると、牛乳が179円、白もの乳飲料が164円、低脂肪加工乳が133円、濃厚加工乳が220円、LL牛乳が224円であった。種類による価格差が大きくなっている。過去4年間の動きをみると、濃厚加工乳、白もの乳飲料は低下傾向にあるが、部分脱脂乳は上昇傾向にあり種類により異なっている。

 以下、種類別にみることにする。

図 3  牛乳類の小売価格の変化(1L紙容器)

1 牛乳

 千人当たり販売数量についてみると、11年度81本、12年度81本、13年度は75本と減少していたが、14年度は85本と増加し、15年度は83本(対前年度比96.7%)と減少に転じている(図4)。牛乳は平成7年度以降一貫して減少してきたが、14年度は低脂肪加工乳や白もの乳飲料から牛乳への回帰、また、大手メーカーの新規商品の市場投入が寄与し、大幅に増加した。15年度は前年度の伸びが大きかったこともあり、前年度を3.3%下回った。

 1本当たりの小売価格についてみると、11年度は183円、12年度は180.2円、13年度は177.9円と年々低下していたが、14年度は179.2円とわずかに上昇した。15年度は178.7円でわずかに低下した。平成12年度対比でみると、15年度の小売価格の低下率は 0.9%でおおむね横ばいとなっている。

 牛乳の低価格志向や品質志向の変化をみるために、価格帯別の販売数量構成比を年度別に示したのが図5である。小売価格は12年度が180.2円、13年度が177.9円、14年度が179.2円、15年度が178.7円でわずか1.5円の範囲であり、おおむね横ばいで推移している。また、15年度において構成比が10%を超えているのは、150円台、160円台、170円台、180円台、210円台となっている。価格帯別の販売数量構成比についてみると、ウェイトが上昇しているのは140円台、150円台、160円台、210円台であり、反対にウェイトが低下しているのは170円台、180円台、190円台、200円台となっている。このように、平均小売価格はおおむね横ばいであるのに対し、低価格志向と品質志向(210円台)の二極分化が鮮明になっていることがわかる。最近における牛乳の商品群の多様化、とりわけ品質志向は、プライベートブランド(商品名に乳業メーカー以外の小売業者、流通業者、生協などの名称が入っているもの。以下PBという)に対してナショナルブランド(大手、中小、農協系の乳業メーカーのブランド。以下NBという)の復権からもうかがえる。

 平成15年度におけるメーカー類型別販売数量は、大手乳業、中小乳業、農協系乳業ともに前年度より増加し、PBが大幅な減少となっている。販売数量構成比をみると、大きい順に農協系乳業、大手乳業、PB、中小乳業となっている。過去5年間の推移をみると、乳業の再編が進展したこともあり変化が大きくなっているが、総じてPBの大幅な減少、NBの大幅な増加という構図が鮮明になっている(図6)。このように、PBの減少に対してNBの復権が顕著にうかがえる。これは最近における牛乳の商品群の多様化、また、既にみたように牛乳の低価格志向と品質志向の二極分化からもうかがえる。

図 4  牛乳の販売数量と価格の推移

図 5  牛乳の価格帯別販売数量構成比の推移

図 6  牛乳のメーカー類型別販売数量構成比の推移

2 低脂肪加工乳

 低脂肪乳は、「加工乳」のうち乳脂肪率が1.5%前後以下のものおよび無脂肪乳を含むものとした。

 千人当たり販売数量についてみると、11年度が 20.4本、12年度は食中毒事故の影響により17.2本と大幅に減少。さらに、13年度は 13.0本、14年度は10.9本、15年度は6.9%(対前年度比71.9%)と減少幅が年々拡大している(図7)。平成12年度との対比でみると、販売数量の減少率は51.9%と大きい。

 1本当たりの小売価格についてみると、11年度140円、12年度は135円、13年度は 132円と低下傾向に推移して、14年度は133円、15年度は132円となっている。平成12年度対比でみると、小売価格の低下率は0.9%となっている。

図 7  低脂肪加工乳の販売数量と価格の推移

3 白もの乳飲料

 白もの乳飲料は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に定める「乳飲料」のうち、生乳や乳成分にカルシウムやビタミン類などを添加したものである。乳脂肪率は1.5%程度の商品が多く、無脂肪タイプもみられる。

 千人当たりの販売数量についてみると、11年度は26.8本、12年度は食中毒事故の発生により19.7本と激減し、13年度は 19.2本、14年度は17.6、15年度は15.8本と減少に歯止めがかからない(図8)。

 1本当たりの小売価格についてみると、11年度は175円、12年度は169円、13年度は167円、14年度は164円、15年度は164円と低下傾向にある。小売価格と販売数量との関係をみると、小売価格は低下傾向にあるものの、販売数量は減少している。

図 8  白もの乳飲料の販売数量と価格の推移

4 低脂肪牛乳

 低脂肪牛乳は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に定める「低脂肪牛乳」で、乳脂肪率1.5%程度の商品が多い。「無脂肪牛乳」を含む。

 千人当たりの販売数量についてみると、11年度は5.0本、12年度は5.9本と増加したが、13年度は4.9本と減少し、14年度は5.4本、15年度は5.2本と増減を繰り返している(図9)。

 1本当たりの小売価格についてみると、11年度は153円、12年度は151円と低下していたが、13年度は154円、14年度は156円、15年度は159円と上昇傾向にある。

図 9 低脂肪牛乳の販売数量と価格の推移


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