トピックス

●●●牛肉価格上昇の外食産業への影響●●●

 農林水産省が公表した「外食メニュー価格調査結果」によると、3月の外食産業における牛肉の仕入れ価格は、輸入が前年同月比39.5%高、国産が11.8%高となった。12月の米国でのBSE発生により、国内の牛肉消費量の4分の1以上を占める米国産牛肉の輸入が停止されて以後、輸入牛肉および国産牛肉の卸売価格(仲間相場)は高水準で推移しており、外食産業の仕入価格も大きく影響を受けている。

 一方、他の食肉をみると、国産および輸入豚肉、国産鶏肉では、仕入価格の上昇はわずかなものにとどまっているが、輸入鶏肉では鳥インフルエンザの発生により、タイ、中国、米国産鶏肉の輸入が一時停止されたことにより、大幅に上昇した。(図1)

図1 仕入価格の動向(前年同月比)
資料:農林水産省「外食メニュー価格調査」

 次に、牛肉の仕入価格上昇に対する外食産業の対応についてみると、輸入国の変更や輸入物から国産に変更する割合が徐々に増加している。加えて、2月以降には魚介類や豚肉、鶏肉メニューへの変更も目立ってきている。また、販売価格の変更を行ったとする割合も1月以降、徐々に増加している。

 牛肉の仕入価格が上昇する中で、メニュー内容や価格を変更しない割合は、12月時点では60%を超えていたが、その後、徐々に減少し、3月時点では21.4%にまで下がっている。仕入れ価格の上昇なしとの回答は5%に満たないことから、少なくとも7割以上が、コストの上昇を企業努力で吸収しきれなくなっているとみられ、何らかの対応を余儀なくされる厳しい状況となっている。(図2)

図2 牛肉の仕入価格変動等への対応
資料:農林水産省「外食メニュー価格調査」


 なお、この調査は、(財)外食産業総合調査研究センターがファミリーレストラン、ステーキハウス、焼き肉店、居酒屋チェーン70社を対象に実施したもので、12月および1月については、26社、2月および3月については28社から回答があった。仕入価格変動への対応については、複数回答可として調査したものである。

●●●生鮮食品の小売店舗における表示実施状況●●●

 小売店舗において、生鮮食品については、「名称」、「原産地」の表示が義務付けられている。農林水産省が公表した「生鮮食品における表示実施状況調査等の結果概要」によると、15年度の調査対象となった小売店舗約3万4千店の約500万商品のうち、「名称」が表示されていないものは、6万1千商品(1.2%)、「原産地」が表示されていないものは21万5千商品(4.3%)あった。

 品目別にみると、「名称」の欠落率が高かったのは野菜で、「原産地」では水産物の欠落率が最も高くなっている。畜産物では、「名称」、「原産地」の欠落率は、他の品目に比べて、いずれも最も低い結果となった。(表1)

表1 商品単位で見た表示欠落状況(米穀を除く農畜産物)
資料:農林水産省

表2 牛肉の原産地表示の根拠確認状況
資料:農林水産省

 また、15年12月の米国におけるBSEの発生を受け、生鮮食品の表示実施状況調査の一環として、農林水産省による牛肉の原産地表示の監視が強化されている。16年1月から3月までに約4千店舗に対して実施された原産地表示の根拠確認の結果、不適切な表示が7店舗(0.2%)、14商品(0.02%)で見つかっている。(表2)

 表示の欠落または不適正な表示のあった店舗に対しては、その場で改善指導が行われたほか、不適正表示の程度に応じて、文書による改善指導を行った上で、後日、改善状況の確認が行われている。また、牛肉については、「原産地」表示について不適切な表示が確認された1業者に対しては、関係都道府県から、JAS法に基づく指示が行われている。

●●●4月の豚肉輸入量、SG解除により急増し、過去最高に●●●

 15年8月1日から発動されていた豚肉などに係る関税の緊急措置が16年3月31日で解除され、4月1日から通常の関税水準に戻った。この影響で、解除後の最初の月となる4月の豚肉輸入量は、前月を8万5千トン上回る132,939トンと急激に増加した。同様に緊急措置の解除後で輸入量が多かった前年同月との比較でも29.7%、前々年同月との比較でも41%増と大幅に上回っている。

 財務省が告示した平成16年度第1四半期(4〜6月)の緊急措置の発動基準数量は、257,004トンであり、4月の輸入量だけで発動基準数量の52%に達している。

 今後の需給見込みとしては、お中元などの贈答用ハム・ソーセージ仕向けの豚肉需要が高まると見込まれるが、一時の牛肉、鶏肉の代替需要にも陰りがみえてきたことから、在庫の積増しも懸念される。

 4月の輸入量の内訳をみると、国産品と競合するとみられる冷蔵品は、前年同月比9.2%増の20,036トンとなり、国別でも米国、カナダともにかなり大きく増えている。また、主に加工用に仕向けられる冷凍品は、前年同月と比較して34.2%と大幅増の112,855トンとなった。国別では、デンマークが58.9%増、米国、カナダも、10%程度の高い伸びを示している。(図3)

図3 豚肉輸入量及び輸入価格の推移
資料:財務省「貿易統計」

●●●豚の飼養戸数は減少、飼養頭数前年並み●●●

表3 県別飼養戸数(上位10県)
資料:農林水産省「畜産統計(16年2月1日現在)」

 5月31日に農林水産省が公表した「畜産統計調査」によると、16年2月1日現在の飼養戸数は8,880戸と前年に比べかなり減少し、前年比6.8%(550戸)減となった。県別にみると、引き続き鹿児島県が982戸で1位、2位は宮崎県の730戸、以下茨城県の712戸と続いているが、4位以下はかなり戸数に差があり491戸の千葉県、490戸の群馬県となっており、上位10位全ての県で前年比マイナスとなった。

 中でも、戸数の減少が多かった県は、茨城県、宮城県、群馬県で、50戸前後の飼養農家が離農しており、特に宮城県では、1戸当たりの飼養頭数が大幅に増えたことからみると、小規模経営が大規模経営への吸収される現象が進んでいるものと思われる。(表3)

 豚の飼養頭数は、9,724千頭とほぼ前年並みとなった。内訳をみてみると、子取りめす豚頭数は、前年に比べ1.2%減少したが、肥育豚頭数は、ほぼ前年並みとなり、1戸当たりの飼養頭数は、1,095頭(6.2%)と引き続き規模拡大は進展している(図4)。

図4 豚の飼養頭数および戸数の推移
資料:農林水産省「畜産統計調査」

●●●地鶏、銘柄鶏の生産に活気●●●

 農林水産省が公表した平成15年食鳥流通統計概要によると「その他の肉用鶏」(一般的に「地鶏」、「銘柄鶏」といわれる鶏)の処理羽数は前年に比べ2%増加した。

 また、平成15年の食鳥処理場は、全体で前年比2%減となっているが、「その他の肉用鶏」の処理場の数は、前年に比べ14%増とかなり大きく増加して、168処理場となった。

 鶏肉の需給状況は、1月に国内で発生した鳥インフルエンザ禍に対する各地での販促活動により消費の回復途上にある。このような中で、わずかな量であっても、高付加価値をつけた特産品生産へ活発な動きをみせている地鶏、銘柄鶏の生産・流通体制の強化は明るい話題ではないだろうか。

 比内地鶏、阿波尾鳥、さつま地鶏など、いろいろな名称を付した鶏肉が流通している中で、平成15年に発行された「国産銘柄鶏ハンドブック2003」((株)日本食鳥新聞社)によると、国内銘柄鶏の種類は150種にのぼり、北海道から沖縄までの41都道府県で生産されているという。

 特に「地鶏肉」については、平成11年に日本農林規格の「特定JAS」が制定され、その認定機関も全国に9カ所あり、登録が行われているところである。

 「地鶏と銘柄鶏」((社)日本食鳥協会およびJAS規格)の概略は以下のとおりとなっている。

 消費者の食品に対する原産地、生産方法、表示への関心は、日々深まってきており、生産・出荷者、流通業者は、高品質、おいしさを期待する消費者のニーズに合わせた高付加価値の製品作りに取り組んでいるところである。


●●●米国からの鶏肉輸入再開される●●●

図5 米国ブロイラー主要生産地域およびインフルエンザの発生地域
資料:USDA

 米国からの鶏肉などの輸入は、今年2月にテキサス州で強毒タイプの鳥インフルエンザの発生が確認されたことにより、全土にわたって輸入停止措置が講じられていた。

 このほど、テキサス州での強毒タイプのウイルスの清浄性が確認され、全米を対象とした鶏肉などの輸入停止措置は、弱毒タイプの清浄性が確認されていないコネチカット州、ロードアイランド州、デラウエア州、ニュージャージー州、メリーランド州およびテキサス州の東部を中心とする6州を除き、6月9日付けで解除された。

 米国からの輸入実績は、15年度の累計で4万1千トンで、総輸入量の10%程度、出回り量の3%程度であった。

 鶏肉の輸入量は、13年度の55万6千トンをピークに徐々に下降してきており、15年度は鳥インフルエンザの発生がみられなかったブラジル、チリなどの南米の国からの輸入量シェアの増加に押され、米国のシェアは縮小されつつある。

 米国からの輸入品は、そのほとんどが骨付き冷凍品であり、主に外食産業向けに出回っている。

図6 ブロイラーの輸入量及び米国産のシェア
財務省「貿易統計」

●●●一般輸入による指定乳製品等の輸入量、15年度は前年並み●●●

 15年度の指定乳製品等の一般輸入(TE輸入)による輸入は、375件、673.5トンと前年度に比べ件数で69件増加したものの、数量は2.1トンの微増(対前年比0.3%増)にとどまり、ほぼ前年並みとなった。

 品目別内訳をみると、粉乳類が454.3トン(3.2%減)と前年度をやや下回ったのものの、依然として全体の約7割を占めている。次いでバター類101.0トン(21.1%増)、ホエイ類87.2トン(41.8%増)、れん乳類30.1トン(47.3%減)と、バター類およびホエイ類の伸びが顕著であった。(図7)

図7 TE輸入による指定乳製品輸入量
資料:(独)農畜産業振興機構 酪農乳業部

●●●16年度の卵価基金補てん基準価格、142円/kgに決定●●●

 15年度の卵価(東京・M)は、年度を通して前年を下回り、特に鳥インフルエンザが国内で発生した1月には95円と前年の7割程度まで落ち込んだ。15年度の補てん基準価格である168円を大きく下回り続けて、年度末には、基金の補てん金が底をつく状況にまでなった。

 卵価低迷の背景には、飼養羽数の増加、産卵率の向上、消費の停滞などがあげられるが、農林水産省が公表した16年2月1日現在の畜産統計調査によると、採卵鶏の飼養羽数は、ほぼ前年並みとなったもののひな(6カ月未満)の羽数は前年を3.6%下回っており、今後、このひなが産卵を開始する夏以降の生産量に何らかの影響を与えるものと思われる。(図8)

図8 採卵鶏の飼養羽数の推移
農林水産省「畜産統計調査」(各年とも2月1日調査)

 このように低迷が続いた卵価だけに、決定までに多少時間を要した新年度の卵価安定事業に係る価格差補てん基準価格は、生産者側からの「経営の下支えとなる補てん金であるだけに実情に見合うものを」という要求と15年度の卵価実績や基金制度の運営状況などが勘案の上、協議され142円/kgと決定された。これは、15年度に比べ26円/kgの引き下げとなった。


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