★ 農林水産省から


米国でのBSE発生に伴う海外調査について

消費・安全局衛生管理課


 米国でのBSE発生に伴い、農林水産省、厚生労働省、内閣府食品安全委員会は合同で専門家を米国等に派遣(平成16年1月8日〜18日)し、米国で発生したBSEに係る事実関係および米国等のBSE対策についての調査を実施した。その調査結果の概要は、以下のとおりである。

1 BSE感染牛およびそれに由来する牛肉等について

(1)BSE感染牛

 (1)当該感染牛は、耳標、発生農場(ワシントン州マブトン)の記録、DNA鑑定等から、カナダ・アルバータ州で1997年4月9日に生産されたホルスタイン種雌牛(と畜時年齢6歳8カ月)であることが確認された。

 (2)2001年8月に、カナダ・アルバータ州カルマーの生産農場で飼養されていた112頭が売却され、うち81頭が2001年9月米国に輸入されたが、当該感染牛はこのうちの1頭である。

(2)BSE感染牛由来の食肉等の回収状況

 (1)当該感染牛の牛肉が混入した可能性のある牛肉約4.7トンは、米国内の6州(ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州、ネバダ州、アイダホ州、モンタナ州)に流通しており、現在自主回収が行われている。

 (2)当該感染牛の特定危険部位(SRM)は自主的に除去されレンダリング処理された。当該レンダリング製品は特定され、現在流通は停止されており、今後処分する予定である。

2 同居牛および産子について

(1)同居牛

 (1)当該感染牛の出生農場でその出生の1年前から1年後の2年間(1996年4月から1998年4月)に生まれた牛を同居牛(いわゆる「コホート牛」)と見なして追跡調査中。

   同居牛については、個体が特定された場合には当該個体を、特定できない場合にはそれが含まれる可能性がある牛群全体をそれぞれ殺処分し、BSE検査を実施する予定。

 (2)同居牛は57頭であり、うち27頭は既にと畜又は死亡、25頭は出生農場から米国へ輸出された81頭に含まれていることを確認、4頭はアルバータ州の農場に生存、1頭については調査中(アルバータ州内に生存している可能性)。

 (3)米国に輸出された81頭は、発生農場に9頭(当該感染牛1頭を除く)、他の2農場に4頭(その後1月16日米政府公表では3農場9頭であることが判明)生存することを確認、その他67頭(その後1月16日米政府公表では62頭)については現在調査中(相当数が発生農場に生存する可能性)。

 (4)発生農場の飼育牛のうち由来の分からないもの(当該感染牛の同居牛である可能性を否定できないもの)129頭を1月10日から順次殺処分しBSE検査を実施しているところ。

(2)産子

 (1)当該感染牛は、カナダ国内で2頭を出産した後、米国内で3頭を出産。

 (2)カナダ国内での第1子は既に死亡。第2子については調査中(カナダ国内または米国内で生存の可能性)。

 (3)米国内で出産した第1子は2001年10月に死産、第2子は発生農場で監視下におかれており、第3子はワシントン州内の発生農場とは別の農場で同居牛449頭とともにすでに殺処分済み(BSE検査は実施せず)。

3 感染原因・感染経路について

(1)カナダにおける調査

 (1)当該感染牛が出生した1997年当時、当該農場では肉骨粉を含む配合飼料が使用されていた。

 (2)この肉骨粉を製造したアルバータ州のレンダリング施設を特定したが、その原料として使用された牛の追跡は困難。

 (3)当該レンダリング施設で製造された肉骨粉の販売先について調査中であるが、米国への輸出も含めかなり広範に流通していた模様。

(2)米国における調査

 (1)当該感染牛は4歳4カ月で米国に輸出され、ワシントン州マタワの農場(約1.5カ月)を経由し、2001年10月から発生農場で2年余飼養。

 (2)発生農場では、少なくとも1997年8月の肉骨粉給与禁止前には肉骨粉を給与していたことが、また2002年4月までは血粉を蛋白飼料として給与していたことが確認されている。

4 米国のBSE対策について

(1)BSEサーベイランス体制

 (1)米国では1990年から24カ月齢以上の歩行困難な牛、死亡牛、中枢神経症状牛等のいわゆる高リスク牛を中心にサーベイランスを実施している。

 (2)検査頭数は段階的に拡大してきており、2003年は2万頭強であるが、今回の発生を受けて4万頭程度(と畜頭数の約0.1%)に増やすことを検討中。

 (3)検査手法としては、免疫組織化学的検査により実施。今後の問題として、スクリーニングとして迅速検査の実施について検討中。

(2)飼料給与禁止措置(フィード・バン)

 (1)1997年8月以降、反すう動物由来蛋白等を反すう動物用飼料に用いることを禁止。

 (2)その遵守状況は、検査結果によれば、禁止措置導入直後は75%程度と低く、最近では99%以上とされているものの、以下のような問題点がある。

  ア 飼料の自家配合を行っている数多くの小規模農家は検査対象から漏れており、その遵守状況は不明であること。

  イ 反すう動物以外の動物への給与は禁止されていないため、レンダリング工場、飼料工場等の各段階で交差汚染のおそれがあること。

 (3)このため、今後の問題として、給与禁止措置の拡大、交差汚染防止措置の強化について検討中。

(3)追加的なBSE措置

   昨年12月30日(現地時間)に米国農務省が発表したBSEに関する追加措置について、1月12日付けで暫定規則が公表された。これらの措置は、いずれも同日から施行されているが、(2)を除いて3カ月間のパブリックコメントを求めており、その結果により改正されることがある。

 (1)歩行困難な牛の食用禁止

   全ての月齢の歩行困難な牛のと畜場への搬入を禁止する。

 (2)BSE検査中の牛肉についてBSE陰性が確認されるまで流通停止

 (3)空気注入気絶法の禁止

 (4)特定危険部位(SRM)の除去の義務付け

   30カ月齢以上の牛の頭蓋、脳、眼、三叉神経節、脊髄、脊柱および背根神経節並びに全ての月齢の回腸遠位部および扁桃をSRMとするが、回腸遠位部の除去を確実に行う観点から、小腸全体を除去の対象とする。

 (5)AMR(高圧で骨を破壊することなく肉を採取する方法)肉の規制強化

   30カ月齢以上の牛の脊柱および頭蓋をAMRの対象とすることを禁止する。

5 まとめ

(1)今回のBSE感染牛のカナダでの同居牛が米国に輸出されており、また、当該牛にカナダで給与された肉骨粉が米国へも輸出されていた可能性がある。

(2)米国とカナダでは、肉骨粉を含む飼料・飼料原料、家畜・畜産物等が相互に流通してきており、牛肉関連産業が強く統合されている。また、BSE対策についても従来から同様の措置が講じられてきている。

(3)米国の肉骨粉等の牛への給与禁止措置の実効性については、交差汚染等の可能性を否定できない。

(4)以上から、米国とカナダでBSEに関する汚染状況に大きな相違があるとみなすことは困難であり、今後、米国においてBSEが発生しないという保証はない。

(5)なお、今回の調査で明確にならなかった点については、米国・カナダに更なる情報提供を求めているところである。

※ 編集部注)米国農務省(USDA)は2月9日、BSE感染牛に関する調査を打ち切ると公表している。


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