◎地域便り


宮崎県 ●山間地域肉用牛振興シンポジウムが開催される

宮崎県/森高 秀満


 宮崎県北部の東・西臼杵地区は延岡、日向両市を除く13町村が山間農業地域に区分されている。3月10、11日、市町村・JA、生産者代表160名が参加して、東・西臼杵の県事務所、県畜産会共催による山間地域肉用牛振興シンポジウムが開催された。

 この地域は山林面積の割合が高く、林業が地域産業の中核をなしていたが、近年の林業不振から畜産、とくに肉用牛への依存が強まっている。

 しかしながら、地域の肉用牛経営は小規模繁殖経営が主流であるとともに、他の地域に比べて経営者の高齢化の進度が早く、飼養戸数は急激に減少しつつある。

 今回のシンポジウムは、このような地域産業の柱となっている肉用牛生産の現状を明らかにし、多様な担い手づくりなど一層の肉用牛振興を進め、地域産業の建て直しを図りたいという関係者の熱い気持ちが開催の原動力となった。

シンポジウムでの総合討議の様子

 シンポジウムでは、地域内の3普及センターが地域産業における肉用牛の位置付けや規模拡大や高齢化の状況など詳細な現状を報告した。また、JA高千穂、西郷村、椎葉村からそれぞれの地区の取り組みについて事例発表があり、その後、「山間農業地域の特性を活かした肉用牛生産システムの構築をめざして」というテーマで総合討議を行った。事例発表で、JA高千穂からは年率8.6%という高い子牛上場頭数の伸びをもたらした増頭運動や畜産会データベースを活用した経営分析・指導の取り組み。西郷村からは、飼養管理や飼料作物作業受託などヘルパー組合の活動で飼養戸数の減少が抑えられ、総飼養頭数が大きく伸びている状況。椎葉村からは粗飼料基盤の不足を補うために、隣接する熊本県高森町、蘇陽町の公共牧場への夏季放牧の実施状況などが報告され、いずれも厳しい生産条件の中で工夫を重ねながら肉用牛振興に成果を上げており、参加者に強い感銘を与えるものだった。これらの報告や発表内容をふまえて、総合討議では山間農業地域が抱える多くの不利な条件を克服した新たな肉用牛生産システムについて、活発な議論が展開された。

 討議の結びでは、飼養戸数の約8割を占める5頭以下の小規模層や平均60才と高齢化が進む中で高齢飼養者に対して、生産行程の分担やサポートシステムの充実によって、できるだけ永く肉用牛飼養が続けられる条件を整備すること、転作田での飼料イネ栽培や林間・谷間放牧、稲わら確保等粗飼料対策を伴った規模の大きい中核的な肉用牛経営の育成。また、これらの対策を進めるために地域内の全市町村が対象となり、両地域で年間5.6億円が交付される中山間地域等直接支払制度交付金の活用を進めることなどが集約された。

 シンポジウムでは、意外に知らなかった他町村における取り組みから、大きなヒントが得られたという声も多く、後に続いた「夜なべ討論会」でも、果てしない牛飼い同士の話が続き、今後の地域の肉用牛生産が大きく飛躍する契機となることが期待される。

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