★ 農林水産省から


食品安全委員会における牛海綿状脳症(BSE)問題の調査審議について



1.経緯

 食品安全委員会では、プリオン専門調査会において、本年2月から牛海綿状脳症(BSE)問題全般について科学的な議論を開始し、これまでに種々の情報収集に努めるとともに、海外の専門家からも意見を聴取するなどして調査審議を実施した。その結果、9月6日に同専門調査会において中間とりまとめが取りまとめられ、9月9日に食品安全委員会において了承されたところである。


2.「中間とりまとめ」のポイント

1)今後、わが国では、さらにBSE感染牛が確認される可能性があるが、これらが食物連鎖に入り込み、vCJDが発生するリスクは、現在のBSE検査および特定危険部位(SRM)除去によって、そのほとんどが排除されているものと推測される。

●人へのBSE感染リスクについて




2)検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、SRM除去という措置を変更しなければ、vCJDのリスクが増加することはないと考えられるが、検出限界程度の異常プリオンたん白質を延髄閂部に蓄積するBSE感染牛が、潜伏期間のどの時期から発見することが可能となるのか、また、それが何カ月齢の牛に相当するのか、現在のところ断片的な事実しかない。ただし、わが国における約350万頭に及ぶ検査において発見されたBSE感染牛9頭のうち、21、23カ月齢の2頭のBSE感染牛が確認された事実を勘案すると、21カ月齢以上の牛については、現在の検査法によりBSEプリオンの存在が確認される可能性がある。

 一方、21、23カ月齢の2頭のBSE感染牛における延髄閂部に含まれる異常プリオンたん白質の量が微量であったこと、また、わが国における約350万頭に及ぶ検査により20カ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後のわが国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。

3)検査法については、検出限界の改善や、牛の生体から採取した組織、血液などを用いた生前検査法の開発なども含め、研究が進められるべきであり、その中で20カ月齢以下の牛に由来するリスクの定量的な評価について、今後さらに検討を進める必要がある。

●BSE検査について






4)現在の知見では、SRMにBSE 発症牛の体内の異常プリオンたん白質の99%以上が集中しているとされていることから、SRM除去は人のBSE感染リスクを低減するために非常に有効な手段である。また、と畜場などにおける交差汚染を防止することはvCJDのリスクを低減する上で重要である。このため、引き続き適正なSRM除去、交差汚染防止の指導を行うとともに、その実施状況を定期的に検証するなど、適正な実施が保証される仕組みを構築するべきである。

●SRM除去とBSE発生対策について


5)飼料規制については、その実効性が担保されるよう行政当局によるチェックを引き続き行うことが重要である。また、トレーサビリティの担保および検証を行うとともに、リスク牛検査について引き続き実施する必要がある。


3.中間とりまとめの取扱い、リスクコミュニケーションの実施

 本「中間とりまとめ」については、広く公表するとともに、厚生労働省および農林水産省に対して通知したところであり、それを受けて、今後、両省において、管理措置の改善が検討されることとなると考えられる。

○リスクコミュニケーションの実施

 9月16日に東京で、18日に大阪で意見交換会を開催するなど、引き続き意見交換会などのリスクコミュニケーションを実施する予定である。

注)囲み記事については、食品安全委員会季刊誌「食品安全」(2004年特別号)より抜粋


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