★ 機構から


畜産業務について意見を聞く会を開催

総括調整役 山崎 隆信


1 はじめに

 農畜産業振興機構は、平成15年10月1日に、独立行政法人として発足以来、1年半近く経過したが、その業務の運営、執行に当たっては、従前にも増して、適正・効率化、透明性の確保が求められている。

 そこで、今回は、2月24日に、当機構の会議室において、畜産業務について意見を聞く会を開催し、それぞれの地域畜産の特性を熟知し、指導的立場にある方々の参集を得て、畜産をめぐる情勢への問題意識の共有化や当機構の畜産関係業務を含めて幅広く、今後の方向などについて、意見・要望などを伺った。

2 議事

 意見を聞く会では、山本農畜産業振興機構理事長から、参集のお礼とともに、機構が独立行政法人として厳正かつ効果的な業務執行が求められている状況や、最近の食肉・乳業をめぐる現状・課題、業種・地域の実情に沿った業務展開について、あいさつを行った。

 また、農林水産省生産局畜産部畜産企画課 清家課長から、日ごろの支援に対するお礼とともに、食料・農業・農村基本計画、酪農と肉用牛の近代化の基本方針および家畜改良増殖目標の3月中のとりまとめ、17年度予算の交付金などの特徴、畜産物価格関連対策の重点化・効率化の必要性など畜産行政をめぐる情勢について、あいさつを行った。

 次に、和田理事から、機構の業務に係る目標・計画と評価委員会による評価など機構が効率的な業務の実施に努力している状況の説明、山口理事から、機構の畜産関係各種業務の概要と16年度における業務の実績紹介を行った。

 その後、菱沼副理事長の進行で、次の7名の各地方ブロックの畜産関係団体の代表者から、(1)から(7)までの現状認識、課題、意見、要望などを伺った。機構としては、これらの現状認識、課題を共有しながら、意見、要望などを踏まえつつ、農林水産省と連携しながら、畜産関係の業務を進めていくこととしている。

 金川 幹司 
  (社)北海道酪農協会会長

 金濱 孝造 
  (株)岩手畜産流通センター社長

 志澤 勝  
  (社)神奈川県養豚協会会長

 河合 正秋  
  東海酪農業協同組合連合会会長 

 鎌谷 一也  
  鳥取県畜産農業協同組合代表理事専務

 藤木 優   
  オンダン農業協同組合代表理事組合長

 白濱 貫理  
  鹿児島県経済農業協同組合連合会常務理事

(1)北海道酪農の課題と今後の酪農振興

 (1) 酪農での排せつ物処理は、土壌還元しながら進めてきたが、とりあえずの簡易対応、今後の増頭、降雪など他所への輸送の困難性に起因する流通面での課題があり、環境対策など地域実態にあった対策が必要

 (2) 北海道は、乳牛の供給基地だが、最近、後継牛など資源不足。対応策として、雌雄産み分け技術を発展させ、ホルスタインの後継牛は、必ず雌を生み、余剰の雌の子宮は、受精卵移植で和牛の供給という方法が考えられる。

(2)産地における食肉流通センターの役割と課題

 (1) 産地の食肉センターは、と畜から、解体処理、ハム・ソーセージを含む製造・販売までを担っているが、創業以来、部分肉化を推進し、現在、牛は80%、豚は95%を超え、肉の合理的流通に貢献

 (2) これまで、総合的な食肉供給基地として、6期、65億円の投資を国・機構の支援を得て実施。今後、総合食肉卸としての食肉センターの施設・機能の拡充について、検討を要望

 (3) と畜は、公的な業務で、経費がかかる(SRM、せき柱の処理は、コスト増加要因)が、実入りは少ないので、国・機構の支援が不可欠

(3)都市近郊養豚の現状と今後の課題

 (1) 神奈川県では、早くから環境問題に取り組んできたが、現在、たい肥が余ってきて、その流通に苦慮。食品リサイクルのたい肥と畜産のたい肥のバッティングが出始めている。

 (2) 銘柄化は、「かながわ夢ポーク」として、えさ、肥育期間など7要件を設け、(社)神奈川県養豚協会の委員会認定により、ほかの豚より、プレミアのつく販売。好調で、生産追いつかず

 (3) 食品リサイクルは、食品残さを養豚農家が受け入れることにより、養豚が一種の企業の社会的責任を果たす産業として位置づけられることを期待。また、現在、量販店と提携して、弁当など食品残さを飼料に活用し、養豚のたい肥を使用して生産した野菜・米を量販店で売るサイクルを構想中

 (4) メキシコとのFTA交渉での養豚団体としての交渉団の派遣に当たり、機構の情報誌を活用、有用性を実感

(4)指定生乳生産者団体のブロック化と近郊酪農の課題

 (1) 東海酪農連合会では、愛知、長野、岐阜、三重の4県の共通庭先プール乳価を、今年4月から実施。生乳検査の一本化では、支援を要望

 (2) 指定団体のブロック化のメリットは、域内の需給調整機能の強化により、有利販売につながる体制ができた点。今後は、広域の調整機能の強化が重要で、指定団体相互の連携・協調が必要

 (3) ふん尿処理の豊酪方式として、集中型のふん尿処理場でなく、分散型にしたが、それぞれの場での耕畜連携がうまく機能し、販売・流通問題はない。なお、今回の規制強化で急きょ設置した簡易施設の場合は、労力多投が問題

 (4) 愛知の酪農は、農家数減、多頭化で、分業化(子牛の育成を北海道に預託する形)が進むとみている。また、近郊酪農など都府県では、狭い土地を耕畜連携で有効利用しながら、輸入した濃厚飼料・粗飼料を使用し、北海道では、粗飼料は土地利用型で、濃厚飼料は、輸入の2方向。都府県型酪農にも、一層の支援を

(5)鳥取県の肉用牛の現状と中山間放牧

 (1) 鳥取県畜産農業協同組合は、京都生協との間で、生乳と牛肉の産直を20年以上行っており、販売先は、地場と京都。えさ、飼料稲、食品副産物に焦点を当て、100年継続できるような畜産を目指す。

 (2) 鳥取県の肉用牛については、ホルスタインはWCS(稲発酵粗飼料)への取り組みを強め、たい肥還元に取り組む。和牛はより低コストでの生産の取り組みが必要

 (3) 中山間の放牧は、輸入飼料だけでは難しく、重要となってくる。山間地は、水田放牧、里山放牧をやらないと、生活環境自体を守っていくことが不可能

 (4) 鳥取県の酪農は、家族農業中心の体系で、40〜50頭単位に、乳肉複合、耕畜連携、自給飼料の生産などの取り組みが大切であり、酪農の労力軽減がポイント。地域の生産基盤を確立する上で、搾乳ロボットの複数導入の検討を要望

(6)地域特産鶏の発展要因と課題

 (1) 阿波尾鶏は、平成13年に特定地鶏JASの認定第1号(80日以上飼育、平飼いなどを要件とする規格)として指定。年間200万羽を生産。そのような発展の要因は、名古屋コーチン、比内の鶏が、雄、雌ともに在来種なのに比べ、阿波尾鶏は、雄は軍鶏、雌はブロイラーで、軍鶏のうま味とブロイラーの増体率の相性があったことと、価格がブロイラーより高いが、ほかの地鶏より安いということ

 (2) 年間約3,000トンのたい肥を生産し、一袋15キロ、100円台で販売しているが、原価は、200円以上かかり、苦労。また、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合には、食鳥処理場へも、支援を要望

(7)鹿児島県の肉用牛の動向

 (1) 今後の鹿児島県の肉用牛振興は、戸数減少、頭数は維持・拡大の中で、地域に密着した小規模層、力を持ってきた大規模層に応じて、国・機構の支援を得て、地域肉用牛振興対策事業などを活用したい。

 (2) 離島の畜産振興は、草資源が豊富であること、生産コストが本土より安いことから、地域によっては、島一番の事業。しかし、離島のため、物流コストがかかるので微妙

 (3) 肉用牛経営は、多額の初期投資が必要なので、新規参入者の確保・育成が難しく、国の支援を要望


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