★ 機構から


外食産業における食肉の消費構成について
〜平成17年度食肉消費構成実態調査事業報告書から(その2)〜

食肉生産流通部


はじめに

 当機構は、外食産業での食肉の需要実態とその変化を把握するため、財団法人外食産業調査研究センターに委託して平成17年度食肉消費構成実態調査事業を実施した。

 今回は、調査結果全体の概要を紹介する。


1.調査の目的と方法

 本調査は、外食産業部門の平成16年1月〜12月期の食肉類の需要動向を把握するもので、外食業者、集団給食、ホテル・旅館業、学校給食センター、病院給食施設、料理品小売業などを対象にアンケート調査を実施した。アンケートの発送と回収は平成17年5月〜8月にかけて行い、総配布数は5,000(飲食店4,000、学校500、病院500)、有効回答数は720(有効回答率14.4%)であった。


2.外食産業の食肉需要動向

1)回答店舗の概要
(1)業種・業態別の内訳


図1 回答店舗の業種別構成比(前年比較)

 回答の得られた720サンプルの業種構成をみると、営業給食部門は全体の67.5%(486店)を占め、その中では中華料理・その他の東洋料理店が最も多く(140店 19.4%)、続いて西洋料理店となっている(95店 13.2%)。集団給食部門は全体の22.7%(164店)を占め、その中では学校給食が最も多く(72店 10.0%)、続いて病院給食が(57店 7.9%)となっている。

 料飲主体部門は35店(4.9%)で、そのうちほとんどが酒場・ビアホール(29店 4.0%)となっている。さらに、料理品小売業(持帰り弁当・総菜店)が35店(4.9%)であった。

 前年と比較すると、業種別の構成比はおおむね同じ傾向であったが、一般食堂や中華料理店などの比率が高まったため、前年に引き続き集団給食部門、料飲主体部門の比率が低下する状況となった。

(2)売上高 〜平均売上高は減少


注:回収店舗などが年によって異なるので、必ずしも外食産業全体の動向を示すものではない。
図2 店舗当たり年間販売額

 平成17年度調査(平成16年)の年間販売額は、全体平均では7,338万円と前年より大幅に減少している(前年比13.4%減)。業種別にみると、本年度調査で最も売上高が大きいのはホテル・旅館(店舗当り年間販売額45,654万円)、次いで社員食堂(同27,314万円)、弁当給食(同16,815万円)となっている。本年度調査の平均売上高が減少した要因の一つには、一般食堂など規模の小さな店舗のウエイトが大きかったことなどがあり、このことは調査結果をみていく上でも留意する必要がある。

2)食肉類の需要動向
(1)食肉類の仕入状況
〜仕入構成比 牛肉、鶏肉減少、豚肉増加


図3 食肉類の1店舗当たり年間仕入量と構成比の推移

 平成16年における外食産業の食肉需要動向は、年初から米国産牛肉の輸入停止措置、国内外での鳥インフルエンザの拡大などが続き、大きな影響を受けることになった。

 このため16年の牛肉の年間仕入量は1店舗当たり1,038キログラムと15年(1,326キログラム)を下回った。

 豚肉については、牛肉、鶏肉の代替需要の受け皿となり、需要は大きく伸びたため、1店舗当たりの食肉需要量に占める構成比は、前年の40.2%から47.1%へと上昇している。

 鶏肉については、16年前半には国内外で発生した鳥インフルエンザの影響もあり、1店舗当たりの年間仕入量は1,363キログラムと15年(1,843キログラム)を大きく下回る結果となった。

 このように平均仕入量からみた16年の食肉類の仕入動向は、牛肉・鶏肉が減少し、豚肉への食肉需要のシフトが顕著であった。

(2)食肉類仕入の国産・輸入の状況
〜牛肉 高いオーストラリア産比率、豚肉・鶏肉は国産中心


 牛肉の原産国別の仕入れ比率をみると、オーストラリア産が49.5%と仕入の半数を占める勢いで最も高く、次いで国産が38.2%となっている。一方、輸入停止前は外食業者仕入の約1/4を占めていたアメリカ産が2.7%と大幅に低下している。業種別の状況をみると、国産は割烹・料亭(87.4%)、すきやき・しゃぶしゃぶ店(70.6%)、焼肉店(69.7%)などで比率が高く、オーストラリア産は、おおむねどの業種も比率が高いが、社員食堂(89.5%)、弁当給食(66.9%)、料理品小売業(65.7%)、ホテル・旅館(60.8%)などの業種で特に高い。一方、アメリカ産は、16年夏頃まで出回っていた冷凍肉の在庫を仕入れていたと思われる料理品小売業(7.6%)、ステーキ店(6.8%)で比較的比率が高い。


図4-1 牛肉の原産国別仕入比率

 続いて豚肉の原産国別の仕入比率をみると、国産が49.9%で最も高く、次いでアメリカ産(6.8%)、デンマーク産(5.1%)、カナダ産(4.9%)と続いている。近年、輸入量が増加しているメキシコ産は1.6%の比率であった。

 業種別の状況をみると、国産はおおむねねどの業種も比率が高いが、ホテル・旅館(74.2%)、学校給食(71.9%)、割烹・料亭(71.4%)で特に高くなっている。輸入豚肉の比率をみると、アメリカ産はその他飲食店(70.6%)、とんかつ屋(33.7%)、料理品小売業(19.4%)などの業種で相対的に高くなっている。同様にカナダ産は病院給食(19.4%)、社員食堂(15.6%)、酒場・ビアホール(15.1%)、弁当給食(15.0%)で、デンマーク産は社員食堂(20.8%)、酒場・ビアホール(19.4%)、弁当給食(14.0%)で、また、メキシコ産は社員食堂(6.5%)といった業種で相対的に比率が高くなっている。


図4-2 豚肉の原産国別仕入比率

 続いて鶏肉の原産国別の仕入比率をみると、国産が65.7%で最も高く、次いでブラジル(19.9%)、タイ(3.3%)、中国(1.5%)アメリカ(1.1%)と続いている。

 業種別にみると、国産鶏肉については、概ねどの業種でも比率が高い。輸入鶏肉では、ブラジル産はその他飲食店(55.2%)、料理品小売業(38.8%)、弁当給食(37.7%)、社員食堂(35.2%)などで、タイ産はその他料理店(13.8%)、社員食堂(10.0%)などで、中国産は酒場・ビアホール(6.8%)で、アメリカ産はその他飲食店(23.0%)で、それぞれ相対的に比率が高くなっている。


図4-3 鶏肉の原産国別仕入比率

(3)牛肉トレーサビリティ法への対応

 平成16年12月から、国内産牛肉に関するトレーサビリティへの取組=牛肉トレーサビリティ法が完全施行となり、焼肉、しゃぶしゃぶ、すきやき、ステーキを主に提供する店舗(特定肉料理提供店)では、国産牛肉の個体識別番号やロット番号を店内に表示することが求められるようになった。

 そこで、牛肉トレーサビリティ法への対応状況について尋ねたところ(図5)、全体ではやはり「特定肉料理提供店ではないので取り組みを行っていない」が70.3%で最も多く、大半を占めた。

 特定肉料理提供店以外でも、ホテル・旅館、病院給食、学校給食などの業種では、情報提供など何らかの対応をしている業者の割合が比較的高くなっている。


図5 牛肉トレーサビリティ法への対応

 

3.外食産業の推計食肉需要量

 牛肉は、平成15年12月の米国でのBSE確認に伴い、国内需要量の1/3を担っていた米国産牛肉の輸入停止措置がとられたことから、牛肉需要にマイナスの影響を与えることとなった。これ受けて、本調査においても仕入れ店舗比率などが減少した。

 そのため、西洋料理店、病院給食、ホテル・旅館以外の全ての業種(日本料理店、中華料理店、一般食堂、その他飲食店、割烹・料亭、酒場・ビアホール、社員食堂、学校給食、料理品小売業)で需要量が減少した。

 以上の結果、平成16年における、外食産業全体の牛肉推計需要量は、2.7%減の338,025トンと推計される。ただし、家計消費を含めた推定出回量が725,611トン、13.9%減と大きく減少したため、全体に対する比率は、41.2%から46.6%に上昇した。

表1-1 牛肉の年間推計需要量と構成比の推移

注:推定出回り量は、独立行政法人 農畜産業振興機構「畜産の情報」による。
部分肉ベースの牛肉、豚肉、鶏肉を精肉換算(牛肉90%、豚肉90%、鶏肉77%)した。以下、同じ。

 豚肉は、その他の飲食店、酒場・ビアホール、社員食堂、料理品小売業を除くすべての業種で仕入店舗比率の上昇などにより需要量が増加した。その結果、平成16年における豚肉需要量は、429,561トン(2.5%増)となり、推定出回り量1,569,931トン(7.7%増)に対する比率は27.4%となった。

表1-2 豚肉の年間推計需要量と構成比の推移

 鶏肉は、16年初の国内外での鳥インフルエンザの拡大の影響から、鶏肉需要がマイナスの影響を受けた。本調査においても、仕入れ店舗比率などが減少し、西洋料理店、病院給食、ホテル・旅館以外の全ての業種(日本料理店、西洋料理店、中華料理店、一般食堂、その他飲食店、割烹・料亭、病院給食、学校給食、ホテル・旅館)で需要量は減少した。その結果、平成16年における鶏肉需要量は、641,240トン(5.5%減)と推計され、推定出回り量1,231,114トン(7.5%減)に対する比率は、52.1%となった。

表1-3 鶏肉の年間推計需要量と構成比の推移

<食肉需要量の推計方法>

 平成16年の食肉類の総需要量は、平成15年のアンケート調査で得られた食肉類別1店舗当たり仕入量(加重平均値)を原単位とし、第1に、外食産業を構成する業種別店舗数がどのように変化したか、第2に、これらの店舗のうち食肉類を仕入れた店舗がどのように変化したか、第3に、食肉類の種類別に仕入れた店舗のうち、「増加した」あるいは「減少した」店舗がどの程度みられたか、第4に、「増加した」あるいは「減少した」店舗では、仕入量が前年と比較しどの程度増減したかにより推計した。


元のページに戻る