★ 機構から


外食産業における食肉の
消費構成について(その1)
〜平成16年度食肉消費構成実態調査
事業報告書から〜

食肉生産流通部


はじめに

 当機構は、食肉に関する情報の収集提供業務の一環として外食産業の食肉需要実態とその変化を把握し、食肉の需給の安定に資することを目的として財団法人外食産業調査研究センターに委託して平成16年度食肉消費構成実態調査事業を実施した。調査結果の概要を今月と来月の2回に分けて紹介する。

調査の目的と方法

 本年度の食肉消費構成調査では、前年度までの飲食店などの外食産業を構成する業種に加え、外食産業などに調理済み食材を供給している調理済み冷凍食品メーカーを対象に、食肉類の需要動向を把握することに努めた。

 外食産業を構成する業種へのアンケート調査票は、これまで協力が得られた外食企業、集団給食企業、ホテル・旅館業、学校給食センター、病院給食施設、料理品小売業に、新たに電話帳からの抽出を加えた4,500店舗(飲食店3,500、学校500、病院500)に配布し、延べ回収数702(回収率15.6%)、有効回答数700(同15.5%)から回答が得られた。

 調理済み冷凍食品メーカーは、社団法人日本冷凍食品協会の会員社500事業所・社を対象とし、延べ62事業所(同12.4%)、有効回答52事業所(同10.4%)を分析の対象とした。なお、アンケートの発送と回収は、平成16年12月〜17年 1月にかけて実施した。また、調査表は、平成15年1月〜12月の動向について記入をお願いした。

外食産業の食肉需給動向

1 .回答店舗の概要

 (1)業種・業態別の内訳

 回答の得られた700サンプルの業種構成をみると、営業給食部門は、日本料理店が85(うちとんかつ店24、すきやき・しゃぶしゃぶ店4)、西洋料理店が94(うちステーキ店13)、中華料理・その他の東洋料理店が129(うち焼肉店21、ラーメン店20)、一般食堂が42、そば・うどん店が59喫茶、お好み焼き店などのその他飲食店が10、ホテル・旅館が40の計459店となり、全体の65.6%を占めている。

 集団給食部門では、社員食堂が4、弁当給食(仕出し弁当を含む)が19、学校給食が91、病院給食が54の計168店(24.0%)であった。

 料飲主体部門では、かっぽう・料亭が7、酒場・ビヤホールが33の計40店(5.7%)、さらに、料理品小売業(持ち帰り弁当・総菜店、以下省略)が33店(4.7%)であった。

 前年との比較では、一般食堂、そば・うどん店を除く飲食店と料理品小売業の比率が高まり、集団給食部門、料飲主体部門の比率が低下する結果となった。(図 1)

図1 回答店舗の業種内訳
(回答数)

(2)従業員

 全体平均でみた1店舗当たりの従業員数は、合計12.6人と前年並みであった。

 業種別には、ホテル・旅館(1店舗当たり従業員47.6人)、社員食堂(同31.5人)、弁当給食(同31.7人)といった従業員数が100人以上の店舗が多く含まれる業種では、平均でも31人を上回っている。

 飲食店部門のそのほかの業種では、酒場・ビヤホール(同14.8人)では従業員数が10人以上となっているが、ほかの業種は10人未満となっている。特に、一般食堂(同4.1人)、その他飲食店(同4.0人)、料理品小売業(同3.9人)は個人生業店が多いことから 5人未満と少ない。給食部門では学校給食(同17.8人)、病院給食(同13.3人)とどちらも10人以上であった。(図2)

図2 業種別平均従業員数
単位:人

(3)売上高

 平成16年度調査(平成15年)の年間販売額は、全体平均では8,470万円と前年より少し値(0.2%増)が高まっている。業種別にみると、本年度調査ではホテル・旅館(店舗当たり年間販売額 5億999万円)の販売額が大きく、次いで社員食堂(同2億8,098万円)、弁当給食(同2億655万円)となっている。それ以外で年間販売額が 1億円を超す業種はみられなかった。(図3) 
 
 また、ランチタイムとディナータイムの平均客単価(利用者1人当たりの平均消費額)は、ランチタイムが全体平均で1,137円と前年(1,121円)より幾分高く、ディナータイムも、全体平均で2,765円と前年(2,690円)よりも高い結果を示した。

図3 店舗当たり年間販売額の推移
単位:万円

(4)メニュー数と食肉メニュー

 調査対象が提供しているメニュー数(デザートを除き、シーズンメニューを含む)は、学校給食、病院給食を含めた全体平均で118.4種類、学校給食、病院給食を除いた場合には、全体平均で58.2種類と前回調査(55.1種類)より幾分増加した。これに、食肉類を使用したメニューがどの程度含まれているかをみると、全体平均では42.5種類となり、総メニュー数に占める比率は35.9%であった。学校給食、病院給食を除いた平均では21.6種類(同37.2%)と学校給食、病院給食で食肉以外のメニュー数が増加したことを示している。(図 4)
 また、調理済み食材を利用したメニューの品揃え状況をみると、全体平均では17.6種類(メニュー全体に占める比率14.9%)であり、学校給食、病院給食を除いた場合には5.2種類(同9.0%)と、前回調査より依存度が高まった。

図4 店舗当たり食肉メニュー数の推移
単位:メニュー数

2 .食肉類の需要動向
 
(1)食材率


 食材率(年間販売額に占める食材仕入れ額の比率)食材仕入れ額に占める食肉類の比率をみると、食材率は32.4%となり、前年よりも0.6ポイント低い結果となった。また、食材費に占める食肉類仕入額の比率は単価の安い豚肉、鶏肉のウエイトが高まったことが影響し19.0%と幾分低下した。(図 5)

図5 食材率と食材に占める食肉比率の推移
単位:%

(2)食肉類の仕入れ状況

 平成16年度調査(平成15年)における調査対象店舗の牛肉仕入れ店舗は、全体の66.3%と、平成13年の国内BSE発生以来、消費者の一定割合が牛肉消費を手控えるようになっており、その影響から牛肉を仕入れる店舗数が減少したこと、調査対象に含まれていた焼肉店などの牛肉需要部門のうち経営体質の弱い店舗の多くが閉店し、そこの部門の回答数が減少したことも影響している。

 豚肉は全体の79.3%が「仕入れた」と回答しているが、前年度調査に引き続き、傾向的には仕入店舗比率が幾分低下する傾向となっている。鶏肉についてはほぼ前年並み(81.9%)となった。(図 6)

図6 食肉類の仕入れ店舗比率の推移
単位:%

(3)平均仕入れ量と国産・輸入の利用実態

 食肉類の仕入れが認められた店舗の年間仕入れ量は、牛肉1,326キログラム(前年調査1,536キログラム)、豚肉2,131キログラム(同2,044キログラム)、鶏肉1,843キログラム(同1,787キログラム)の合計で5,300キログラム(同5,367キログラム)で、このうち牛肉が仕入れ量全体の25.0%(同28.6%)、豚肉が40.2%(同38.1%)、鶏肉が34.8%(同33.3%)と牛肉のウエイトが下がり、豚肉と鶏肉がそれを穴埋めした結果となっている。

 特に、豚肉では仕入れ店舗比率は下がったが、仕入れた店舗の需要量は大きくなっている。(表1)

 次に、それぞれの原産国別の内訳をみると、牛肉の原産国別内訳では、国産44.0%、アメリカ産8.1%、オーストラリア産38.5%、輸入不明5.4%、原産国不明4.0%、豚肉は国産62.9%、アメリカ産8.0%、カナダ産3.3%、デンマーク産5.2%、メキシコ産1.3%、輸入不明8.0%、原産国不明11.5%であり、鶏肉は国産50.0%、アメリカ産1.4%、タイ産2.3%、ブラジル産18.1%、中国産2.2%、輸入不明5.5%、原産国不明20.5%であった。このように、食肉全般的に国産の占める比率が高まっている。(図 7)

表1店舗当たり年間食肉仕入れ量と構成比の推移
図7-1牛肉の原産国
単位:kg、%

図7-2豚肉の原産国
図7-3鶏肉の原産国

(4)最近の仕入れ動向と要因

 平成16年度(平成15年)の食肉類の仕入れについて「増加した」と「減少した」を比較すると、豚肉を除くと「減少した」が「増加した」を上回っていること、また、「増加した」との回答比率を国産輸入別にみると、牛肉と豚肉では輸入より国産の方が高く、鶏肉だけは輸入の方が高かった。(図 8)

 つまり、牛肉と豚肉は国産への依存度が高まり、鶏肉は輸入への依存度が高まったといえる。

 そこで、仕入れ量が「減少した」要因をみると、全般的に「売上高の低迷」、「牛肉メニュー数の減少」、牛肉に関しては「牛肉メニューの減少」、1 年で最も食肉需要が高まる12月に発見された平成15年の「米国でのBSE牛の発見」の影響という回答が目立っていた。

 また、今後2〜3年後の見通しについては、牛肉、豚肉、鶏肉ともに「増加する」が「減少する」を上回っている。(図9)しかし、平成16年の実態をみると、米国でのBSE牛発見に伴う輸入停止措置、国内外での「鳥インフルエンザ」の発生など、食肉あるいは食肉を使用したメニュー、調理品の消費を低迷させる要因がはっきりしている。その意味では、ここでみられる需要拡大は、需要に影響する各種の問題が鎮静化し、米国産牛肉の輸入再開後には、このようになって欲しいとの期待とみることができる。

図8 平成16年度(平成15年)仕入れ動向

図9 今後2〜3 年後の見通し

(5)米国産牛肉輸入禁止への対応

 平成15年12月に米国でBSE牛が発見され、直ちに輸入禁止措置が取られた。それまで国内に供給されていた牛肉の3分の1相当が米国産であったことから、その影響が心配された。そこで、外食産業の対応を整理すると、平成15年段階では流通段階に国内在庫が残っていたこともあり、「特別な対応なし」が35.0%と多く、次いで消費者の反応を考慮し「牛肉メニュー減」が26.0%、オーストラリアなどに「輸入国を変更」が25.6%であった。(図 10)

図10 米国産牛肉輸入禁止への対応
(複数回答)

(6)鳥インフルエンザへの対応

 平成15年末から年初にかけて、国内外で「鳥インフルエンザ」が発生し、一時期、中国などのアジア諸国から鶏肉輸入が停止した。この時期に外食産業ではどのような対応がなされたかをみると、全体では「特別な対応なし」との回答が50.1%を占めた。何らかの対応を行った場合の内容としては、「輸入国の変更」が18.9%、「国産に切り替え」が16.0%、「鶏肉メニュー減」が14.7%であった。(図 11)

図11 鳥インフルエンザへの対応

(複数回答)

 (7)国産牛肉のトレーサビリティ対応

 平成16年12月より、国内産牛肉のトレーサビリティに関する「牛の個体識別のための情報管理及び伝達に関する特別措置法」が完全施行となり、国産牛肉を使用したメニューが売上高の過半数を占める店舗「特定肉料理提供店」では、店内に個体識別番号やロット番号を開示することが求められることになった。
 
 そこで、外食産業での国産牛肉のトレーサビリティの取り組み状況をみると、全体では「すでに実施」との回答は14.2%、「準備中」が3.1%を合わせても17.3%にとどまり、「取り組みの予定なし」(64.8%)が過半数を占めている。なお、「すでに実施」は、安全・安心に関心が高い学校給食、ステーキレストランが含まれる西洋料理店、焼肉店が含まれる中華料理・そのほかの東洋料理店で回答比率が高かった。(図12)

図12 国産牛肉のトレーサビリティ対応

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