◎地域便り


長野県 ●親子2代で築く肉用牛経営

長野県/美斉津 広之


 長野県飯田市は県の最南部に位置し、中央アルプスと南アルプスに囲まれ、中央部を天竜川が流れる、風光明媚で自然豊かな伊那谷の中心都市である。

 農業は比較的温暖な気候であることから、梨、リンゴなどの果樹栽培が盛んで、また中山間地域で耕地面積が狭いため、流通飼料依存型の集約的な畜産業が発展し、酪農61戸、肉用牛118戸、養豚21戸などの経営戸数が、県下のおよそ1割を占める一大産地となっている。

 飯田市で肉用牛経営を行っている有限会社「たかどや牧場」(宮崎吉弘 代表取締役社長)は、和牛と交雑種合わせて380頭規模の肥育経営である。

 昭和48年父親が近隣の酪農家からホルスタインの子牛を導入して肥育する肉用牛肥育経営を開始し、昭和53年に酪農経営を中心とする飼料販売を行う株式会社宮崎商事を設立した。平成2年には、牛肉の輸入自由化を契機に黒毛和種へ切り替えを行った。

 吉弘さんは、平成9年に畜産関連企業に就職して、食肉処理の仕事に従事し、食肉に関する技術と知識を習得するとともに、関係者との人脈も同時に築き、平成11年に牧場経営に参画した。当初は父親とは別の独立経営で、飼養規模80頭の肥育経営からスタートし、同年8月、培った食肉処理技術を生かして自家産牛肉を中心とした精肉の加工・販売も始めた。

 平成13年のBSE発生直後には、飼養規模の拡大と経営基盤の安定化を図るため、有限会社「たかどや牧場」(肉用牛の生産・加工・販売部門と飼料販売部門の株式会社宮崎商事で構成)として新たな門出を行い現在に至っている。

 たかどや牧場の経営の特徴は、酪農家へTMR飼料を供給してきたことから安全な原材料による独自の配合設計により、肥育効率の高いTMR飼料を早くから経営に取り入れたこと、また比較的低コストで飼料が購入できるなど、経営向上の大きなメリットとなっている。なお、地域の食品会社からのリンゴジュースかす、豆腐かすなどの食品残さをTMRの飼料原材料として利用し、地域循環型農業の一翼を担っている。

 もと牛の導入については、通常の導入牛に加え、廃業農家があれば経営主の要望に出来る限り沿いながら全頭引き受け対応するなど、地域の信頼も高い。

 精肉販売については、宮崎社長が就農前から取り組んだ要の部門であり、消費者に生産者の顔が見え、自分の生産した牛肉が直接評価される場所でもあり、消費との情報交流の中で得られた内容については、生産部門に活かしている

 肉用牛は、山梨県食肉流通センターへ出荷しているが、5年前に長野県から出荷している県内の生産者8戸で「信州和牛出荷組合」を設立し、飼料の統一や肉質研究を行い高品質牛肉生産に取り組み、格付けA4以上の枝肉には、組合任意で「信州の牛肉」の名前をスタンプ押印し、独自の信州牛ブランド化に取り組んでいる。

 今後の経営方針としては、飼養規模の拡大を図るとともに、黒毛和牛より回転の速い交雑種を増頭しながら、一層の経営の効率化を図っていきたいと考えている。

 また特に、安全・安心を第一に考え、独自の飼料で丹精込めて飼育し、消費者に自信を持って美味しい牛肉を出来るだけ安価に提供し、堪能していただけるようにしたいと考えている。

 たかどや牧場の一層の発展と地域畜産の活性化を図る取り組みに期待をしたい。


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