★ 機構から


米国産牛肉に関する意向調査について

食肉生産流通部食肉課 課長 安井 護


はじめに

 平成17年12月8日、食品安全委員会は農林水産省および厚生労働省に対し、「米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉・内臓を摂取する場合と、我が国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性」に係る食品健康影響評価について通知した。これを受けて、12日に日・米、日・カナダ間の輸出入条件が正式に合意され、輸入が再開されることとなった。

 当機構は、消費者、量販店、外食・中食業者を対象に米国産牛肉についての意向調査を実施したので、その概要について紹介する。

 調査は10月31日に食品安全委員会プリオン専門調査会が評価に関する報告書案を取りまとめ、マスコミでの報道量が増加した11月上旬に行った。この時点では、輸入再開時期や肝心の米国産牛肉の価格、品質が不明なことから、各調査ともに「しばらく様子を見る」との回答が多くなっている。

〈調査方法〉

1 消費者の意向

(1)輸入再開について、3割は「どちらとも言えない」

 全国の消費者1,200人を対象に米国産牛肉の輸入再開についての印象を尋ねたところ、「どちらとも言えない」が33%と一番多かった。「非常にうれしい」と「ややうれしい」を合わせると20%、「やや不安」と「とても不安」を合わせると47%となっている。

図1 米国産牛肉輸入再開についての印象

(2)焼肉用としては「国産牛肉を選ぶ」が最大

 「スーパーで、焼き肉用ばら肉を買うとしたら、4種類の牛肉のうち、どれを選ぶか」については、「和牛以外の国産牛肉」が65%と一番多かった。様々な報道があるが、「米国産牛肉」を選ぶ消費者は14%おり、米国産=ばら肉=焼肉というファンがいることをうかがわせる。(複数回答)

図2 スーパーで焼肉用ばら肉を買う場合に選ぶ牛肉

(3)外食で食べたいのは牛丼

 外食で米国産牛肉を使ったメニューで食べたいもの」を尋ねたところ、「牛丼」が41%と一番多かった。

 一方、「米国産牛肉を使用したメニューは食べない」が36%いる。しかし、このことは(1)で見た輸入再開について否定的な印象を持つ47%の消費者のうち9ポイントの人は、具体的なメニューを提示すると「食べたい」と答え、抵抗感が薄れていることを示しており、興味深い結果となっている。(複数回答)。

図3 米国産牛肉を使った外食メニューで食べたいもの

2 量販店は消費者の反応を見てから対応が8割

 全国の量販店を対象に輸入再開後の米国産牛肉の取り扱い意向を尋ねたところ(回答25社)、「なるべく早く扱いたい」は1社、最も多いのは「しばらく様子を見たい」の76%であった。

図4 輸入再開後の取扱について

(注)「扱う予定はない」は、もともと取り扱いのない社である

 その理由は、「お客様が受け入れるかどうか不明なので」が60%、次いで「価格、品質が不明なので」が36%である。

図5 しばらく様子を見る理由

 米国産牛肉の輸入停止前と停止後の種類別取り扱い割合を見ると、豪州産が倍増して、米国産の穴を埋めた形となっている(量的に見れば豚肉などによる代替がある)。そのため、現在使っている豪州産をすぐに米国産に切り替えるのではなく、2年間の空白のある米国産の価格、品質を見て、それを消費者が受け入れるかどうかを判断したいとの考えと思われる。

量販店の牛肉の種類別取扱割合

 

3 外食・中食はなるべく早く扱いたいが3割

(1)なるべく早く扱いたいが3割

 全国の外食・中食業者を対象に米国産牛肉の輸入再開後の取り扱い意向を尋ねたところ(牛肉を扱う者、回答数47社)、「なるべく早く扱いたい」が28%、「しばらく様子を見たい」が49%であった。

 業態別には「焼肉店」、「ステーキ店」の4割が「なるべく早く扱いたい」としている。

図6 輸入再開後の意向

(注)「当面使用しない」のうち9%は、もともと取り扱いのない社である

(2)扱いたい理由は「米国産の品質が必要」

 「なるべく早く扱いたい」の理由については、「米国産の品質が必要」が62%と最も多く、次いで「お客様のニーズに応えるため」が23%である。

図7 なるべく早く扱いたい理由

(3)様子を見るのは「品質と価格を見極めたい」ため

 「しばらく様子を見たい」の理由については、「品質と価格を見極めたい」が61%と一番多く、「既に豪州産などを手当てしている」も17%あった。なお、「次のメニュー変更時期に検討したい」への回答はなかった。

図8 しばらくは様子を見る理由

 平成15年12月の米国でのBSE発生による米国産牛肉輸入停止以降、豪州産牛肉を工夫して商品化している企業が多く、豪州産の取扱割合は16%から66%に増加した。その中で、米国産が輸入再開されたとしても、原料調達から、加工・調理までの手順を変更する必要があるので、豪州産から米国産に簡単に切り替わる訳ではないようだ。

外食・中食の牛肉の種類別取扱割合

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