★ 機構から


平成17年度
消費者代表の方々と生産者の方々との
現地意見交換会報告(三浦半島編)

「メイド・イン・ジャパンの牛肉や野菜はとてもおいしいし、安全。
 そんな日本の農業を日本人はもっと大切にするべき、
 もっと興味を持っていいのではと思いました。」
 ─ 参加した大学生から寄せられたメッセージより ─

総括調整役 菊地 弘美


 平成17年9月22日(木)に、神奈川県下で現地意見交換会を開催いたしました。その概要を、先月号の秦野編に引き続き、今月号では、三浦半島(葉山町、横須賀市)編を報告します。


葉山町では「三浦葉山牛」の肥育牧場を訪問

(1)三浦半島(三浦市、横須賀市、葉山町、逗子市、鎌倉市)の農業産出額は約150億円ですが大部分は野菜の140億円です。野菜生産は、三浦市、横須賀市が中心です。畜産の産出額は約4億円で、葉山町と横須賀市の肉用牛肥育と、横須賀市の採卵鶏が主なものです。

(2)畜産の主役は、「三浦葉山牛」です。肥育農家の方々が、「三浦半島酪農組合連合会」を組織し、相互に肥育技術を磨き、飼料の自家配合を行い、取扱指定店制度をとるなどの取組や活動を行っています。

(3)三浦半島では、葉山町の三留武さんが経営する「三浦葉山牛」の肥育牧場、「三留牧場」を訪問しました。

 三留さんは連合会の会長で、三浦半島の肉牛づくりを推進してこられたリーダーです。三留さんからは、御自身の畜産への取組を含めて「三浦葉山牛」について、説明をしていただきました。


「三浦半島酪農組合連合会」の方々。前列左が会長理事の三留さん。

○最初は、搾乳牛1頭で就農し、次に、乳用種肥育も行う乳肉複合経営を始めたが、その後、肥育専門経営に転換。次第に黒毛和種を増やし、繁殖和牛も飼い、全頭和牛に移行。現在は、140頭程度の肥育のみ。

○丹精こめたおいしい牛肉を地域の消費者に食べて欲しいという考えで、葉山町肥育組合を結成し、更に、三浦半島全体の生産者と共に、「三浦半島酪農組合連合会」を結成し、「三浦葉山牛」ブランドをつくってきた。

○おからと濃厚飼料との自家配合の割合にバラツキがあったので、「牛の給食センター」として、混合飼料調製施設を整備し、飼料の統一化を図ったところ、各生産者の肉質、等級、枝肉重量が安定、向上。

○肥育もと牛は、東北、北海道から導入。肥育前期には良質の粗飼料を給与し、徐々に配合飼料を増やしてスムーズに後期の餌に移行、また、牛のストレス軽減のため、削蹄、換気、牛床の乾燥に十分注意。

○ふん尿と敷料を混合して作ったたい肥は、三浦半島の野菜農家や、地域住民の家庭菜園に供給。



「三浦葉山牛」肥育農家やJA組合長・部長の方々と意見交換

 続いて横須賀市にある「JAよこすか葉山」本所に移動し、意見交換会を開催しました。三留さんのほかに、三浦半島酪農組合連合会の副会長の鈴木浩さん、JAよこすか葉山の椙山榮一組合長さん、新倉幹夫経済部長さん、長克昌経済部次長さん、小知和紀男営農販売課長さんに出席いただきました。

 椙山組合長、新倉部長さんから管内農業の状況を説明していただいた後、意見交換が行われました。概要は以下のとおりです。



三留牧場にて牧場主の三留さんより牧場の概要に
ついてご説明いただく。

牛舎内を見学。間近で見る牛はとても迫力がある。

 椙山組合長、新倉部長さんから管内農業の状況を説明していただいた後、意見交換が行われました。概要は以下のとおりです。

(1)消費者の方々は、牛肉を買うとき、何を意識されて買われるでしょうか
⇒ なるべく安く、脂身の少ない牛肉を買っています。

(2)飼料に使っているおからの安全性のチェックはどのようにしていますか。
⇒ 使用しているおからの業者は一業者のみ。使う日の前の晩に持ってきてもらっています。おからは毎日生産されているので、古いおからはありませんし、配送中、不純物が入らないようにシートを被せています。牛は敏感な動物なので、変なものを食べると下痢をします。今まで30年近くも肥育をやっていますが、病的な症状を出したことはありませんので、大丈夫です。

(3)三浦葉山牛のお肉の値段どのくらいですか。
⇒ 最近はニーズが強く、100グラム当たり800円から1,000円です。
⇒ 消費者はなかなか手が出せない値段ですね。
⇒ お料理に応じて手ごろな部位を選んでお買い求めいただければと思います。


JAよこすか葉山本所にて意見交換

(4)地元の学校の食育で三浦葉山牛を採り上げることはありますか。
⇒ 小学校3年生が社会科の野外学習で来ます。学校から子供たちに牛を見学 させたいという要望があったときには、積極的に協力し、対応するよう呼び掛けています。
⇒ 子供たちが、牧場に牛を見によく来ます。中には、牛はお肉にされてしまうのでかわいそう、と言う子がいます。牛は、みんなのために、お肉になって、みんなの力になる、皮はランドセルになるなど、みんなのために姿を変えるのだよ、と説明します。食育の大切さを実感しています。

(5)牛肉の価格は高値ですが、生産農家はすぐに増頭することができるでしょうか。
⇒ すぐには無理です。肥育用の子牛を買い求めに岩手や北海道にたびたび行きます。最近、子牛価格が高いので、繁殖農家が若干増えてきているように思えます。牛が増えるとともに、牛を飼う人が増えてくれればと思います。牛を飼うと年中無休です。しかし、このような仕事がいい、やってみたいという人が増えてくれれば、牛肉も手ごろな価格になるものと思っています。

 意見交換会の後、「JAよこすか葉山」の管内の野菜団地を訪問しました。

 三浦半島は、野菜の大産地です。主要作物は、冬春のダイコン、早春・春のキャベツのほかに、夏のスイカ、メロン、カボチャです。畑にはキャベツがちょうど播種されたばかりでした。このキャベツががすくすくと育ち、12月から市場に出荷されることを期待して、現地意見交換会は終了しました。


苗を風から守るためシートをかけるなど野菜づくりの
大変さを実感

 

現地意見交換会に参加・出席した大学生から寄せられたメッセージ

現地意見交換会の後、参加した大学生の方々から感じたこと、思ったことなどのメッセージが寄せられました。


東京経済大学3年

菅 あさぎさん

 はじめに訪れた原牧場(秦野市、前月号参照)では乳牛を育てており、生後間もない仔牛がいたのが印象的でした。こちらでは給餌がオートメーション化されており、子牛のほ乳も機械で制御されていました。一見、無機質で愛情が注がれていないように思われましたが、子牛の場合、ミルクを飲み過ぎてしまうとお腹を壊す原因になるそうなので、機械で管理することで子牛の体調を崩すことなくほ乳できると知り、感心しました。また、原さんは数名の仲間で組合を作って、たい肥舎やジェラート店を運営しているとのことでした。意見交換会の中でジェラート店を開く目的の一つが、より多くの生乳を消費するためであることを知りました。そのお店で試食させていただきましたが、素材の味が感じられるアイスでした。酪農の活性化や街の盛り上がりのためにも、さらにこのお店が流行って欲しいと思いました。

 そして"じばさんず"という地域で採れた野菜などを販売する直営店を見ました。こちらは、午前中から新鮮な野菜を求めるお客さんでいっぱいでした。

 次に訪れた牧場は「三浦葉山牛」というブランド牛を育てる牧場で、そこには最初の原牧場で見たホルスタインとは全く違う黒毛和種という種類の牛がいました。体型がころんと大きく成長した牛たちは、歩くのも大変そうでした。ここではおからとビールかすを混ぜた餌を与えて牛を肥育させているとのことで、BSE問題で家畜の餌も問題視されていますが、この餌は人間が口にしても大丈夫とのことでした。私はBSEがどれほど怖いかまだピンときません。口にするものは当たり前のように「大丈夫だろう」と思いがちですが、そうではない現状があるようです。しかしながら、三浦葉山牛を育てている三浦半島酪農組合連合会の方々のように「安全なものを家畜に与えている」と胸を張れる生産者の方々がおられることをとても心強く思いました。

 私の家の近くには畑や田んぼはありませんが、今回参加してちょっと車を走らせれば野菜を作ったり、酪農を営んでいる場所があることを実感しました。そして、私たちが口にする牛乳や野菜が案外私たちの近くでも生産されていることを認識することは、重要なことであると思いました。日本の自給率の低さは世界でまれにみる低さで、日本に対する輸出がストップすれば日本人は危機にひんしてしまうでしょう。輸入に頼りがちの日本ですが、メイド・イン・ジャパンの牛肉や野菜はとてもおいしいし、安全だと思います。そんな日本での生産、すなわち日本の農業を日本人はもっと大切にするべきであって、もっとこの分野に興味を持っていいのではないかと思いました。

 私もこういった機会がなければ、このような気持ちにはならなかったでしょう。このような体験をさせていただいたおかげで、私にとっていろいろなことを考えるよいきっかけとなったと思います。


女子栄養大学4年

佐藤 明菜さん

 私は、将来、専門である栄養学と農業を結び付けた何かが食育としてできたらという思いを持っており、今回、初めてこのような現地意見交換会に参加させていただきました。私自身、小さいころから地元である新潟でわが家で採れた野菜を食べ、農業が身近な存在でした。しかし、畜産の現場はあまり見る機会がなく、初めてあんなに大きな牛を見て、非常に驚きました。牛の生産現場ではコスト削減にさまざまな努力をしていること、環境に配慮した飼育が行われていること、地産地消に取り組んでいることがわかりました。また、乳牛と肉牛の大きさの違い、色、種類などに違いがあることもわかりました。そして、牛乳がアイスクリームにも使われる一連の流れについても詳しく知ることができました。近くの子どもたちには小学校の授業の一環として見学する機会があるそうですが、ほかの多くの子どもたちにも実体験させてあげたいと思いました。簡単に食べ物を捨ててしまう今、このように食を生産現場から見ることで、理解が深まり、食べ物の大切さがわかるのではないかと思いました。

 JAはだのの地産地消の取り組みは、農業を営んでいる方にとってさらによいものを作ろうという生産意欲を高め、消費者にとっても新鮮なものが安く購入できるということはとてもうれしいことです。食の安全が叫ばれている中、このように生産者の顔が見られるということは、消費者に安心感を与えます。このような取り組みが全国的に広がっていくとよいと思いました。

 近年、農業を専業でやっていきたいという熱意のある人は減少傾向にあると思いますが、地産地消の取り組みなどで、農業に興味を持つ若者が増えていくことを期待したいです。そして、私自身、管理栄養士として、食を生産から食卓、そして健康にまで繋がった活動に取り組んでいきたいと思います。


法政大学4年

兵頭 宗亮さん

 その土地で生産活動が行われ、かつ、その土地で消費活動が行われて初めて、その土地の真の繁栄がある、ということを以前耳にしたことがあります。今回訪れた秦野市では、正にその姿がありました。ここではそれを「地産地消」と言い、町に直売店を設けて野菜からパン、草花、鉢物まで、主に農作物で多くの品そろえをされていました。そこには多数の地元市民が集い、活気がみなぎり、何かかつて経験したことのない新しい息吹を感じたのは、僕だけのことではないと思います。

 なぜだろう、そう考えてみますと、そこには生産者と消費者のダイレクトな経済活動がありました。地元生産者の名前が付された、大きさも価格も自由で多様な地元生まれの商品(というか作品)を、消費者は自分の目で確かめ自分の責任において購入するダイレクトな消費、そのダイレクトな反応を確認して商品の改良に取り組む生産者という相乗的効果の構図があります。商品に名前を付すことで、生産者は自らの「顔」をさらすこととなり、そこには当然重大な責任も生まれます。そこに消費者の安心も生まれるのでしょう。またそれと同様に見えるものは「命」であるとも思いました。地元の土地で育てられた農作物たちの「命」が見えます。つまり、商品という結果だけの売買ではなく、命が育まれ商品が生まれるまでの過程をも見守って(感じて)、それを含めた売買が出来るというのも「地産地消」の大変魅力的な面だとも思いました。この経済活動の質を高めること自体が、自分の町への誇りを育てることにも直結し、真の繁栄への土台となるのだろうと思われます。あらゆる有機的要素が集約されて、あの活気と躍動感を生んでいるのでしょう。そして、「地産地消」こそ、本来あるべき経済活動でもあるのだろうと思えてきます。

 


元のページに戻る