◎地域便り


愛知県 ●都市の中で開かれた酪農経営を目指す

愛知県/鳥居 雅樹


 瀬戸市の木下牧場は、都市整備公団(以下、「公団」という。)の住開発地域に入り、周囲から経営継続は難しいと思われ廃業を勧められた。しかし、経営主(57才)は、住宅団地の中での牧場経営を模索し、粘り強く公団や市役所と話し合い、尿汚水の公共下水道利用、森林地域に隣接した用地の確保など都市の中での酪農経営存続条件整備を進めてきた。そして平成10年、公団の開発地域の中で全国初の移転牧場が誕生した。移転を期に農場名も「木下牧場」から「牧場みずの坂 west hill」と改め、住宅団地と共存するため、以前のような周囲から遮断する牧場から開かれた牧場創りを目指すようになった。牧場にはシンボルツリーの植栽やモニュメントの展示など、牧場景観の向上に努め、酪農教育ファームに参加して消費者との交流を積極的に行い、都市化の中の畜産経営を実践している。敷地内では搾乳牛50頭はもとより、ダチョウ、ウサギ、モルモット、ヤギ、めん羊、名古屋コーチンなどを飼育している。来場者は牧柵で囲まれた草地でのんびりと草をはむ動物の姿を眺めたり、牧草を与えて動物と触れ合うなど、憩いの場所となっている。

 飼養しているめん羊は、毎年春になると毛刈りを行うが、今年は6月4日に小学生親子を対象とした「めん羊の毛刈り体験」を開催した。

 来場者には、親子でめん羊に関しての話が弾むように経営主が作製しためん羊の毛刈り方法やその必要性、めん羊のミニ知識が記載されたパンフレットと、刈り取った羊毛の脱脂、染色方法や毛を使ったマスコットの作り方を書いた2種類のパンフレットを配布した。当日は、10組30名の親子が参加し、伸び放題に伸びためん羊の毛をバリカンで刈り取った。子供たちからは、「毛がすごく長くて暑そうだね」「触わってみると毛には油がたくさん付いているんだね」など、実際に体験しなければ分からないような感想が聞かれ、楽しみながら毛刈りを行うことができた。また、染色やマスコットを作るために、刈り取った毛を持ち帰っていた。

 経営主は地域に「限りなく開かれた農場」として訪れるとほっとする牧場、緑の土に触れ合える牧場創りを目指しており、今後、喫茶コーナーの設置によって自家製ミルク、ヨーグルトの提供と加工体験なども取り入れた農場にしたいと夢はふくらんでいる。


畜舎全景

毛刈り準備

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