輸出ブランド

安全な富山の生食用鶏卵を香港へ



 平成25年までに輸出額を1兆円規模に拡大するという目標の下、官民挙げての総合的な輸出戦略が推進されています。こうした中、各地の畜産物輸出ブランドについて、随時、本稿で紹介していきます。 今月は、富山県西部・小矢部(おやべ)市で生産されているサルモネラフリー鶏卵の輸出について、地元養鶏業者が実施している例を紹介します。

県内随一の採卵鶏地域

 石川県に隣接する富山県西部の小矢部市は農業の盛んな地域で、その農業生産額は富山市、南砺市に次ぐ県内第3位の座にある。中でも採卵鶏羽数は1百万8千羽を超え(平成20年4月1日現在:県西部家畜保健衛生所調べ)、県内でも群を抜いている。

徹底した管理でサルモネラフリーの鶏卵を生産

 小矢部市に養鶏農場を置く有限会社仁光園(にこうえん。以下「仁光園」)は昭和50年創業、同市の北に隣接する高岡市に本社があり、1日当たり約8万個(約5.3トン)の鶏卵を生産している。同社では、鶏卵による細菌性食中毒の原因の一つとなるサルモネラの衛生対策に10年以上前から取り組み、平成20年6月には、国内養鶏業者では初となる農場HACCPを取得した。そして、低密度飼養など鶏に負担をかけない飼育方法と仁光園HACCPシステムなどにより、ひなの導入から鶏卵の出荷に至るまで、徹底した管理でサルモネラフリーの鶏卵を生産している。

安全性をアピール、生食用で香港へはばたく富山の鶏卵

 平成20年2月、日本産農畜産物の海外販売促進視察団の一員として香港を訪れた仁光園の島社長は、現地の富裕層などが高価な日本産野菜を購入する様子を見て、自社鶏卵の輸出を決意した。現地業者との商談会では、仁光園の農場HACCP取得に現地貿易会社が関心を示し、話がまとまった。同社は、サルモネラフリーなど安全性を前面に出し、生食用として21年3月、鶏卵1万3千5百個を博多港から香港へ輸出した。現地の日系量販店での価格は通常品の3倍程度だが、店頭で卵かけご飯の試食を呼び掛け、当初の売り上げ目標はほぼ達成した。

 しかし、結果を分析した島社長は、今後、富裕層のさらなる取り込みに加え、近隣諸国から香港へ輸出される鶏卵の商品間競争が激しいことから、現地日本料理店との提携などの必要性を感じ、対応に動いている。同社では、好評だった3月の販売結果を受け、第2弾として5月に約3千6百個を輸出し、今後の定着を図っていく。島社長は、香港ではまだなじみの薄い鶏卵の生食文化を広め、将来的には大市場である中国本土での販売を目指しているほか、タイやシンガポールなどでの販売も検討しているという。

 協力:宮富山県農林水産部農業技術課
    有限会社仁光園

(写真提供:仁光園)

 


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